【読書感想文】そして二人だけになった Until Death Do Us Part/森博嗣 ※ネタバレ注意
本日の読書感想文はこちら。
超有名ミステリーをオマージュしながら理系ミステリィを融合させたノンシリーズ長編。
巨大な密室で起きる連続殺人、生き残ったのは…
一組の兄弟と一組の姉妹、彼らが向かうのは途方もなく巨大なコンクリート
語り手の僕の兄は勅使河原潤と言い、盲目ながら超有名な研究者であった。両親の事情もあり長い間会うことはなかったが、数年前に初めて顔を合わせることになる。そこで僕に与えられた仕事は、勅使河原の影武者となって動くこと。テレビに出たり、インタビューを受けたり、ボロが出ないようにしながら潤として振る舞うのが仕事だった。
もう一人の語り手である私の姉は森島有佳と言い、潤のアシスタントをしている。私は姉に呼び出され、とある仕事を持ち掛けられる。僕が引き受けた仕事内容から、なんとなく想像できますね。
ある日、ヘリコプターに乗って向かったのは、全長約4000mにもなる世界最大の吊り橋を支える超巨大なコンクリートの塊であった。『バルブ』と呼ばれる国家機密のシェルターの中で、数日間生活する実験をすることになったのだ。最初は勅使河原が行くはずだったが「子どもが生まれるから」という理由で僕が行くことになり、有佳の方も「外国に行くことになった」という理由で私が依頼を受けることに。つまり、入れ替わった同士が行くことになったのです。その時点でもうハラハラです、特に盲目のふりをするって絶対簡単じゃないですし。
二人の他に、医者や物理学者など男女計六名がバルブの中に入ることとなった。電子カード等セキュリティに囲まれた中で、一体何が起こるのか…
次から次へと起こるハプニング、偶然ではないそれは最悪の事態を呼び寄せる
一人一部屋を与えられた彼らは、会議や報告を行いながらも各々好きに過ごすことに。私は勅使河原(に入れ替わった僕)のサポートをしながらも、やっていきている女医の言葉に掻き乱される。冷たい建物の中で交わされる言葉は難しいものが多いですが、やはり男女混じっていることもありちょっと痴情のもつれみたいなこともあるようです。
だが、地震が起きたことにより、事態は悪い方向へ転がり始める。地震で建物が壊れることはなかったが、通信手段が何者かによって破壊され、更にはセキュリティが作動したことにより外部から遮断されてしまう。混乱の中、一人が自室で殺害されているのが発見されて―――
出入りは出来ないので、犯人は確実に六名の中にいるということです。遮断した人物と殺害した人物は同一なのか、はたまた別の人物か、少ない人数なのでかなり怖いですよね。
連続する殺人事件、互いが互いを疑う状況…そんな中で起こる男女の恋慕
警察も来れないのでまともに調査も出来ないまま、残された人物たちは生き延びることを考える。だがそんな中、女医の浜野は勅使河原を誘惑しようと迫ってくる。結局結ばれることはなかったが、ますます浜野は有佳を敵視するようになる。それを横目に見るように、第二の殺人が発生する。監視カメラにも犯人らしき人物は映っておらず、また停電が起きるなど不可解な出来事は続く。そんな状況下でも、勅使河原と有佳は次第に心を通わせるようになるが、嘲笑うように次の殺人も起こってしまう。そして二人だけになった時、一か八かで脱出を試みることになるのだが―――
あっさりと人が減っていき、ひりつくような緊張感の中でも男女の揉め事が起こるというのは人間の性なのか…それが同時進行なので読んでいる方はハラハラして仕方ありません。
そして二人だけになった時、一体何が起こるのか。その壮大な事態に思わず呆気に取られてしまいます。あの巨大な建物が…
残された二人が送る未来とは?そして最後に明らかになる驚愕の事実
なんとか生き延びた二人だったが、殺人の容疑もかけられているため自由に動くことはできなかった。ただ事件が発生した場所が国家機密の建物だったこともあり、ある条件を飲むことで解放を許されることになった。ある条件とは一体何なのか。
その後二人は穏やかに過ごすこととなったのが、勅使河原があるものを見つけたことにより事件の真相が判明することに。だがそこから更に明らかとなる事件の全容に、更に驚愕することになる。
勅使河原が語る真相にもびっくりですが、そこから後に語られることがもう衝撃的です。「それはありなのか?」と思わずにはいられないでしょう。賛否両論激しいと言われるこの作品ですが、終盤のこの展開ならそう言われるのも納得です。こんなの、しっかり読んでも絶対に見抜けません。
貴方は有り?無し?壮大な仕掛けとスケールに圧倒される理系ミステリィ
先ほども書いたように賛否両論ある作品なので、受け入れられない方もいると思います。当方は一応「なるほど…」とは思いましたが、読み返したとてやっぱり見抜くのは不可能です。
ただ、作品として間違いなく面白いのもまた事実です。スケールが大きすぎて若干怖くもなるものの、あんな建物の中に一度は入ってみたいものです。事件に巻き込まれるのは御免ですが。
森さんの作品は理系ミステリィな部分も最高に面白いですが、男女のもつれも書くのが本当にお上手ですね。余計にドキドキさせられる要因の一つです。
ではでは、また次の投稿まで。
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