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夏が、はじまる

うすら寒い夜だが頭が覚めるというものだ。7月も5日目、日々夏に没頭し夏バカの名に恥じぬ生き方を貫いている。ただ夏バカもここまでくると、オリジナリティが際立って、初心者の夏バカには少しわかりづらいものがあるかもしれない。が、それは勘弁してほしい。年月を経て培ってきたものだ、またそれは人それぞれでもあるから、力まず己の夏を追求せよと、助言をしたい。

鹿田です、よろしくね!

今日も今日とて夏に埋もれる程の意識で生きた。朝から晩まで夏を求めても、少しも飽きはしない。特にここ最近の夏はまして不自由であるから、瞼を閉じれば次から次へと不満が過る。かといってその不平不満で夏を埋めることほど勿体のないことはないからね、そこは切り替えてでは今何ができるかと考えようと以前の記事でも考察した次第だ。今なにができるか?

夏に浮かれる理由はありがたいことに数多ある。それだけ選択肢が広い中でなにかしら今できることはあるはずだ、初心者には「路地裏探検隊」をお勧めしたい。狭い路地裏を見つけたら、その入り口に立ち尽くしてはじっと奥を覗く。そこに待ち伏せるものを期待したら、五感をとがらせ一歩一歩踏み込んでいこう。日陰の路地裏は泥濘も多い、足を取られないように気を付けて(転んだら、どこまで転げていくのかわからないよ)ゆっくりゆっくり奥に進んでいく。時折奇妙に冷たい風が吹く。その行方を探せばきっと、なくしたかけらが見つかるよ。

路地裏を抜けると再び暑い日差しが待っている。立ち眩みもするが踏ん張り、近くの駄菓子屋に駆けていく。氷水に浸かったラムネを買って、煽るように飲めばいい。ごくんごくんと飲めばいいさ。(カラン)最後に残るビー玉を空に透かせば、またさっきの風が吹いて別れを伝える。青く染まった世界は少しかすんで、2度とは戻らないことを示す。閊えたつばをしっかり飲み込まなくちゃ。ごくん、乾いた喉をうるおさなくちゃ、けれどもう、ラムネは空っぽ。延々蝉しぐれの先が、遠くて、もう、見えない。

今日の夕焼けは真っ赤だったな。鮮やかなほどの夕日が僕を照らして、明日の好天を期待させたけれど、週間予報を見ればまた曇り時々雨。そこに僕は世界線を差し込む。もしかしたら、晴天の明日もあるんじゃないかな。ということはもっと素敵な世界線もあるのかもしれないね。けれど別れたらそれぞれ、再び出会うことはない。

だから、そのどれの僕よりもこの僕は、やっぱり夏を楽しみたいのだ。たとえ雨でも、どこかに夏が隠してくれた優しい右手があるはず。朝から降り出した雨にそういえば、僕はいくつもの詩をつくったけ。本当にいくつも、いくつも、夏の雨を題にした詩を作った。僕は何かすでに、夏のくれた大事なものに、気づいているのかもしれないね。

大きく息を吐く、肺が真っ平になるまで吐く。

そして吸う。体全体に、頭のてっぺんから、手先、足先、その枝葉末節にまで及ぶように。そして僕は、今から夏に変わるのだ。変わるよ。

遠い空気は吐き出して、また新しい夏の空気を満たす。目を閉じる。…悪い感じはしない。

夏が始まる。

夏が、始まる。



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