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【小説】あと7日で新型コロナウイルスは終わります。

~ほんとうの休診理由なんて言えない⁉~

ピンポーン♪

看護師と看護助手が院内に泊まっていると、インターフォンが鳴った。

「あっ!院長!」

モニター画面に映った男性を見て、看護師が小さく叫んだ。

「お金……」

「えっ⁉」

看護師が聞き返すと、院長は、

「お金、タクシー運転手に払っておいて。」

と力なく言ったので、看護師はすぐに察し、自分のお財布を持ちながら外に出た。

「今の人、“先生”なんだね?」

中年の男性のタクシー運転手が狐につままれたような表情をしていた。

「ええ、そうなんですよ。名医なんですからね!」

看護師が笑いながらそう言うと、タクシー運転手は

「それは失礼しました!」

となぜか謝ってきた。看護師は領収書を受けとると、

「ありがとうございました。」

と言って、タクシー運転手に頭を下げた。運転手は何だかバツが悪そうな顔をした。

「遠回りしようとしたんだよ。こっちが年寄りだと思って!」

院長が院内に入ってくると、先程のタクシー運転手の愚痴をこぼした。

(ああ、なるほど。)

看護師はそこで理解した。

⚫⚫さんの件で一通り申し送りが終わると、

「ところで、看護助手の⬜⬜さんは念のため、院内の控え室に隔離しています。どうしますか。それと、明日、開院するかどうかも。」

と聞いた。

「⚫⚫さんのPCR検査結果は明日の午前中には連絡がくるから、結果が陰性なら⬜⬜さんの隔離はそのときまでとしよう。明日の午前中は、臨時の休診として、患者さんが来たら、正面玄関の入口で私と看護師1名が軽く問診をして、緊急性がないなら午後以降に来てもらおう。他のスタッフは、今一度院内の消毒と換気をしてもらう。」

「わかりました。他のスタッフには私からLINEをしておきますね。ところで、明日の午前中の休診の理由は何にしましょう。」

院長は眉間に皺を寄せた。

「正直に言っても、何も言わなくても、『あすこのクリニックでコロナが出た』って噂になって、患者さんが来なくなってしまう。下手すると、風評被害で潰れてしまうよ。」

看護師はへの地に口を曲げた。

「それは、困りますね。『インフルエンザにかかったスタッフが複数いるため、人手不足により臨時休診にします』なんてどうでしょうか。」

「そうしようか。コロナが流行る前は、毎年、全国のいろんなクリニックでインフルエンザによる臨時休診はあったから、特に不自然には思われないだろう。それじゃあ、私はそろそろ帰ることにするよ。」

「お疲れ様でした。」

「今日はありがとう。お疲れ様。」

看護師がタクシーを呼ぶと、院長はそれに乗り込んだ。今度のタクシーの運転手には、わざと聞こえるように、

「院長、お疲れ様でした!」

と大きな声で看護師は言って、院長を見送った。院長は窓越しに指でGoodのサインを送ってきた。

新型コロナウイルスが終わるまで、
あと7日。

これは、フィクションです。

 ◆自殺を防止するために厚生労働省のホームページで紹介している主な悩み相談窓口

 ▼いのちの電話 0570・783・556(午前10時~午後10時)、0120・783・556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)

 ▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570・064・556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)

 ▼よりそいホットライン 0120・279・338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120・279・226(24時間対応)

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