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【小説】あと5日で新型コロナウイルスは終わります。

~振り返りと学びと気づき、失敗から見えてきたもの~

⚫⚫さんは、B総合病院で搬送されて緊急帝王切開をした日から、つまり、入院したときから、生保(生活保護)受給が決定した。

「B総合病院に電話して、生保担当者の名前を聞きます。」

医療事務スタッフがそう言った。

「それから、その担当者から医療券番号を聞いて、レセプト請求します。」

使用したコロナ感染症セットや消毒液の金額、半日休診した診療分を考えると、今回の件は大幅な赤字だったが、せめて⚫⚫さんに掛かった医療費だけでも回収したかった。

一段落つくと、今回の⚫⚫さんの件で、各自問題点を持ち寄って話し合った。

【⚫⚫さんの福祉に関すること】

✔問診票に書かれた自己申告の信憑性
✔DVに気づくには?
✔上の子の虐待(今回の場合はネグレクト)に気づくには?
✔DVや虐待が疑われた場合の対処法や他機関への連携
✔経済的困窮者に対する分娩紹介先の選択の問題とは?
✔物理的に精神的に孤立した妊婦の対処法

【新型コロナウイルスの感染が疑われる患者さんに対して】

✅感染症対策ができている病院へ早めに案内
✅診療中、たくさんの患者がいる中で、疑い患者を受けざるを得なかったときの、患者の誘導、清潔・不潔ルートの確保、スタッフの配置
✅清潔・不潔ルートの見直し
✅疑い患者を対応中に、別に緊急を要する患者(出血、腹痛、破水等)が出たらどうするのか
✅複数の疑い患者を院内に入れてしまった場合はどうするべきか
✅陽性が確定した患者と濃厚接触してしまったスタッフの隔離方法
✅疑い患者の救急搬送時の同乗するスタッフについて
✅赤字にならないためにはどうするべきか

今回は、結果的に疑い患者が陰性だったから、他の人は感染していなかったが、陽性だった場合、感染が広がっていた可能性があった。

また、幸運にも、診療終了間際だったため、他の患者に迷惑がかからなかった。

他に緊急を要する患者がいなかったり、救急者に同乗した看護師が、分娩介助の豊富な経験者だったことも幸いした。

けれど、「ああ、それで良かった。」と終わりにしてはならない。新型コロナウイルスの戦いはまだまだこれからも続くし、終息しても、また新たなウイルスが人類の生命を脅かす日が来るに違いないのだから。

話し合いが進めば進むほど、アキナは肩身が狭くなってくるのを感じた。

(⚫⚫さんのDVやネグレクトの件で、新型コロナウイルス感染疑いの患者の対応の件で、私は一体なにをしたんだろうか。なに一つやっていないんじゃないだろうか。)

⚫⚫さんと院内や電話で対話や傾聴を繰り返し、あえてタメ口を使い、フレンドリー作戦で心を開かせ、⚫⚫さんと胎児の保護に貢献した看護師は、休日返上で勉強会によく参加していた。さらに、今回の件をきっかけにして、社会福祉士の資格を取ることに決めたそうだ。

また、院長とともに救急車に同乗した看護師は、初期の中絶手術のみでお産施設のない当クリニック勤務にかかわらず、いつでも正常分娩の介助や帝王切開のオペ看として勤務できるように、勉強を続けていたそうだ。

「私はほんとうに何してるんだろう。」

アチャホテルのベッドに仰向けになり、アキナはつぶやいた。

新型コロナウイルスが終わるまで、
あと5日。

これは、フィクションです。

 ◆自殺を防止するために厚生労働省のホームページで紹介している主な悩み相談窓口

 ▼いのちの電話 0570・783・556(午前10時~午後10時)、0120・783・556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)

 ▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570・064・556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)

 ▼よりそいホットライン 0120・279・338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120・279・226(24時間対応)

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