ブラが透けるのを隠すために、タンクトップを10枚着ていた話。#ワコールがnoteでコンテスト開催中
これは、ワコール下着価値向上委員会『#下着でプチハッピー』の応募ストーリーです。
「もう!洗濯が大変なんだから、そんなに着ないでよ!」
中学生の次女は、反抗期まっしぐらだった。体育の授業がある日は決まって、ブラジャーとTシャツの間にタンクトップを着ていた。
でも、そのタンクトップの枚数が尋常ではないのだ。
その数、10枚!
何と10枚も着ているのである。
「もう!何でそんなに着てるのよ⁉」
いくら言っても、次女は黙ったままで、たくさん着込むのをやめなかった。
梅雨が開けた頃、中学校から突然連絡があった。娘が体育の授業中に倒れたのだ。
急いで学校に駆けつけると、担任の男性教諭が保健室に案内してくれた。
「恐らく熱中症ですね。本人の意識ははっきりしていますが、念のため病院に連れて行った方がよろしいかと思います。それと……。」
若い女性養護教諭は声をひそめた。
「タンクトップの着すぎですね。ご存知でしたか。」
「はい、知っています。何度も注意したんですけど、やめなくて。」
「着ている理由もご存知ですか。」
「それが、何にも言わなくて。」
娘が横になっているベッドの方をチラッと見た。
「ブラジャーが透けて見えないようにたくさん着ているんです。」
「えっ⁉」
思わず絶句してしまった。
「他の女子生徒のブラジャーがTシャツから透けているのを、男子生徒がからかっているのを見てしまったらしくて。」
「そうだったんですか。わかりました。ご面倒をお掛けして申し訳ありませんでした。これから、病院に連れていきます。」
念のため病院に連れて行ったら、特に問題がないということで、すぐに帰宅した。
わたしは娘を家に残して外出した。
30分後、急いで帰ると、ベッドの中で横になっている娘に紙袋を差し出しながら言った。
「気づかなくて、ごめんね。」
娘はわたしを見ると、袋の中を開けた。
「えっ⁉ 何これ⁉ ババくさくない?」
「いいからちょっと付けてみて。」
いぶかる娘の上体を起こした。娘は少し恥ずかしがって布団の中で着替えた。
「次はこれを着てみて。」
わたしは白いTシャツを渡した。
「ねえ、どう?」
わたしは大きな鏡を持ってきて、Tシャツ姿を見せた。
「見え……ない?」
娘はまだ半信半疑だったようだ。
「そう、ブラジャーが見えないのよ。濃いベージュのブラジャーを着けたら、見えなくなるのよ。」
それからと言うもの、娘のタンクトップの枚数は激減した。まだちょっと不安なようで2枚着ていたが、わたしとの会話は少し増えた。
それから程なくしてタンクトップブラが発売されると、娘は今度はそればかり着るようになった。
そんな娘も来月出産だ。どうやら女の子が生まれるらしい。
今まで応募したストーリーをマガジンにまとめました。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
スキ💟をクリックしてくださると、嬉しいです。