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ノー・ムーブ

最近は小説も書かずに歌詞の和訳ばかりしています。

マック・デマルコ『Heart to Heart』の歌詞がとてもよく訳せたので、これはぜひこのテの音楽好きに読んでもらいたいと思い、私は音楽関連の情報発信をしているとあるレコード屋さんに売り込んだのです。そのレコード屋さんは自薦・他薦のインディーズバンドを募集していました。

ある知人にその話をすると、いきなりアピールしても何だこの人となって相手にされないから、おすすめのバンドを紹介しつつ、自分のことをさりげなく売り込んだらいい、その方が自然だから、とアドバイスをくれました。

だので、私は頃合いのバンドを引っ提げてメッセージを送ってみたのです。

直後、再びその知人に話しかけました。
「バンドの紹介募集って書いてあるのに、自分の文章紹介しろって言うの変だよねえ。おかしい人と思われて引かれちゃったかなあ」
「大丈夫だよ、音楽やってる人なんて頭のおかしい人が多いから、レコ屋も変な人から来る変な連絡に慣れてるよ」
という言葉に少しほっとするのでした。

私の書いたメールの文面は次のとおりです。

はじめまして、志井と申します。

ご紹介したい音楽と、ご相談したいことがございまして、ご連絡差し上げました。

【ご紹介したい音楽】

Aさんという方の、バンドセットバージョンです。
レコーディングには
Bさん(ex.Cというバンド名)
Dさん(ex.Eというバンド名)
Fさん(ex.Gというバンド名)
が参加しております。

Aさんはもともと一人で活動されている方なのですが、
Bさんの声がけとともにバンドでレコーディングを行いました。
そうすると新しいAさんの音楽の世界が立ち現れました。

爽やかな仕上がりの中にある不穏さを味わっていただけると嬉しいです。

タイトル:『H』

音源:
https://www.youtube.com/watch?v=音源のリンク1
https://open.spotify.com/intl-ja/artist/音源のリンク2

記事:
https://news.yahoo.co.jp/articles/記事の内容

今月にはJ(地名)のK(ライブハウスの名前)で、バンドセットの初ライブも予定しております。

【ご相談ごと】

私はただの一般人で、趣味で洋楽の歌詞の和訳や文章を公開しております。

和訳に関しては、我ながら見惚れるほど素敵に訳していると思うのですが、
まったくもって反響がありません。

これは私の文章のセンス、能力云々というより、
地中に埋もれていることが問題なのだと考えています。
とても良い訳なので世の中の、愛のある音楽好きの方の目に触れてほしいのです。

そこで願わくば、御社のSNSで私の文章や訳を
ご紹介いただけませんでしょうか。
御社のコンテンツを拝読させていただき、もしかすると
私の訳がいくらかの人に刺さるかもしれない……と感じました。
私の訳が御社の情報を頼りにする皆様にとって、
良質な音楽のひとつの側面を知るきっかけになればと思います。

自分の作ったものを推すなど、増して音楽以外のものを推すなど、
筋違い甚だしく正直とても恥ずかしいのですが、ご検討いただけると幸いにございます。

いくらか文章のリンクを記載しておきますので、
お手すきの時にお目通しいただけると大変嬉しいです。

・歌詞和訳
https://note.com/shiinohoo/m/ma46e45fa290e

・音楽関連の文章
「春の風」
https://note.com/shiinohoo/n/n3ae26fe840ac

「ベルデン8428」
https://note.com/shiinohoo/n/nd8f57ea93cf5

「無風」
https://note.com/shiinohoo/n/n91f85533f0b7

最後に、NoteのトップページとXのリンク先だけお伝えさせてください。
https://note.com/shiinohoo
https://twitter.com/shiinohoo

長文をお読みいただき本当にありがとうございました。
どうぞよろしくお願いいたします。

*おすすめしたバンドはプライバシー保護のため情報をすべてアルファベットにしています


送ってみての結果はどうかと言われれば、もちろん無風です。何の頼りもありません。

これで大笑いしたのは先ほどの知人だけでした。
「バンドの紹介はそこそこに、とてもまとまった丁寧な文面なのに、常識人ぽいのに、読み進めると自分のことを褒め上げて、紹介してくれと言っている。しかも音楽でもないし。自己紹介のリンク先も変だし。こんなのまともに読んだら一発で変な人だって分かるよ。しいふう味(み)がすごいねえ。いやあ、本当に笑える。どうして君はこんなことしちゃうんだろうねえ。これからも君はこんなことをしでかすんだろうね。そう考えると楽しくてわくわくしてきたよ」
「何の反応もない片隅でね。このメール、すごくおもしろいのに。一見マトモそうで、よく読むととてもおかしいことが分かるようになってる。今回も無視されるんだよね。もう慣れてるけどさあ。どこに行ってもこんな扱い」
「この訳の素晴らしさを分かってほしいんだけどなあ」
「私もそう思う」
「歌詞和訳を本気でしてる人ってあんまりいないよね。自分も今まで誰かの曲の歌詞の訳を見る時って、情報として見るってのはあるけど。訳してる人はたまにいるよね。でもシーンがないんだよね。同じようなことをして競い合うとか、それを発信して応援してくれる人とか、そういうのがないと馴染みのないものって、なかなか盛り上がって行かないよね」
「シーンかあ。シーン作るの面倒くさいなあ」
「でもパンクだって最初はそうだったんだよ。一人の人から始まって、何人もの人が集まって大きな動きになったんだ」

私の地中生活はまだまだ長そう、這い上がれる感じがしない。


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