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更年期症状のほてり、のぼせと発汗によく効く漢方薬(2):桂枝茯苓丸の解説


更年期がやってくる

更年期とは「閉経」を挟んだ前後合わせて約10年ほどの期間を指します。

具体的には閉経年齢の平均が50歳前後といわれているので、個人差はありますが45歳から55歳くらいまでが「更年期」にあたります。

この更年期がやっかいで、毎月1回の生理に伴う諸症状とは「別の症状」が現れることもあるそうです。

更年期に該当する女性の年齢が45歳前後と考えれば、仕事をしている女性も多いはずです。そのようなときに次の症状が「突然」現れたら仕事に集中できるでしょうか。

・気力、体力、集中力の低下
・だるい、疲れやすい
・物忘れ、記憶力の低下、など

いずれも仕事の活動量が落ちるものばかりです。このような症状を受けて更年期世代を対象に行われたアンケートでは、

2人に1人が昇進を辞退した

という結果があるそうです。

会社は「男社会だ」云々を議論する前に、せっかく恵まれた能力があるのに女性特有の「更年期症状」があるために仕事が思うように進められずに昇進を断念することはなんと悲しいことなのか。それも2人に1人が、です。

仕事だけではありません。更年期症状は時と場所を選ばないので日常生活の中でも起こります。

料理や洗濯など家事の最中に「めまい」「立ちくらみ」「倦怠感」などを抱えながらも、「やらなくちゃ」とがんばっている女性の姿を想像するだけで胸が痛みます。

この更年期についてはもっと深く掘り下げる必要がある、と私は考えました。

更年期症状はなぜ起こるのか

生理痛を含む生理の諸症状は2つの女性ホルモン、

・エストロゲン
・プロゲステロン

この2つの女性ホルモンが上がったり下がったりと変動することが原因で起こります。しかしこれが閉経間近の「更年期」になると卵巣の機能が低下して、

エストロゲンの分泌が急激に下がります

正確には分泌されたりされなかったり、分泌されても少なかったりとグラフの変動は全体的には下がりながらも不規則になります。

このエストロゲンの分泌までの過程を解説すると、

1.脳の視床下部から「GnRH」ホルモンが分泌されて下垂体を刺激する

2.刺激を受けた脳の下垂体は「FSH、LH」ホルモンを分泌して卵巣に「エストロゲン」を分泌するよう指令する

3.指令を受けた卵巣はエストロゲンを分泌して、分泌したらその旨を脳に伝える(フィードバック)


このように視床下部は女性ホルモンの調節を何十年と続けてきましたが、更年期に入ると卵巣の機能低下によってエストロゲンが脳の指令どおりに分泌されなくなってしまいます。

脳は卵巣の機能が低下していることなど分かりませんから、エストロゲンを分泌するように何度も指令を出します。

脳からの指令に対して卵巣の応答が悪い

この繰り返しが脳を混乱させます。視床下部はホルモンの調節だけでなく他にも身体にとって重要な調節機能をいくつも担っていますが、

その一つが「自律神経」です

更年期の代表的な症状である「のぼせ」「ほてり」「発汗」のいわゆるホットフラッシュはこの自律神経の乱れが原因といわれています。


自律神経を整える「3+2」

更年期症状の原因である「卵巣の機能低下」は加齢によるものであり、病気ではありません。

加齢である以上はそれを受け入れ、発想を切り替える必要があります。

自律神経が乱れているなら整えればいい

乱れた自律神経は整えることができます。

自律神経が整うことで完全に更年期症状が消えてくれればいいですが、少なくとも症状の軽減には貢献します。

できることはやってみる、それでもダメなら、

・市販薬を使ってみる
・婦人科を受診する

更年期症状が現れたとしても症状を軽減する方法はいくらでもある、ということです。

まずは自分でできる「自律神経の整え方」を解説します。自律神経を整えるのに効果的なものは、

規則正しい生活習慣です

規則正しい生活習慣とは、

・毎日同じ時間に起きる
・毎日同じ時間に食べる
・毎日同じ時間に寝る

自律神経には2つの神経があります。

・日中の活動を促す交感神経
・夜間の就寝を促す副交感神経

簡単に説明すれば身体の「オンとオフ」です。

自律神経が乱れる、というのは日中に働く交感神経が夜になっても切り替わらないために生じる心身の不調です。この乱れを整えるために、

朝は朝日を浴びて身体に「朝が来た」と伝えること

朝日を浴びることで身体は朝が来たと認識して交感神経に切り替わります。

食事の時間も一定にすることで自律神経が整います。

特に夜の食事の時間は一定でないと睡眠の質に影響が出ます

食べ物を口に入れると食道を通って胃で消化されますが、その時間は大体3時間程度だといわれています。

胃で消化活動が続いている間は脳は動いているので、そのときに寝ても脳は休めず睡眠が浅くなります。

また、毎朝同じ時間に起きることで夜になると眠気も同じ時間に起こるので、眠気があるときに寝ないと次の日、特に朝に起きるのがつらくなります。

このように毎日の生活のリズムを整えることが自律神経を整えることにつながります。

その他に、

・適度な運動
・お風呂に入る

この2つをする目的は、

血管を拡張して身体中に血液を行き渡らせるためです

交感神経は血管を「収縮」させる働きが強いので、手足などの末端まで血液が届きにくい場合があります。

自律神経が整っているときは夜間に副交感神経が血管を拡げることでうまく調整できますが、これが乱れると血液が届きにくいということですから、心身の不調が出やすくなります。

お風呂は短時間で身体を温めてくれるだけでなく、身体の深部まで温めてくれるので身体全体の血行が良くなります。

お風呂から出て温められた身体の深部はやがて冷えていくので、これが「眠気」を促すともいわれています。

お風呂に毎日入るのは好ましいですが、お湯を出せばすぐに浴びられるシャワーと違ってお風呂は「浴槽を洗う」という作業が加わるので時間帯や疲労感によっては難しい場合があります。

適度な運動も同様ですが、

難しい場合は時間があるとき、余裕があるときで大丈夫です

「やらなくちゃ!」というがんばりがストレスになり、自律神経が乱れる原因になります。

毎日の生活で必ず行う「起きる」「食べる」「寝る」は同じ時間に行って、時間があって心に余裕が出てきたら「適度な運動」「お風呂」を行う。

この自律神経を整える「3+2」を最初は意識して行っていけばそれが習慣となり気がついたら、

・自律神経が整っていた
・更年期症状がかなり楽になった

ということにつながっていきます。


更年期症状に効く漢方薬


桂枝茯苓丸料エキス錠 90錠3850円(参考価格)
成分
15歳以上1日服用量6錠(1錠310mg)中、次の成分を含んでいます。

・桂枝茯苓丸エキス(1/2量)1150mg
「血」グループ
・芍薬2g:補血、筋弛緩作用
・桃仁2g:活血作用
・牡丹皮2g:活血、清熱作用

・桂皮2g:発汗、降気作用
・茯苓2g:利水、健胃作用

用法用量
次の量を1日3回、食前または食間に水または白湯で服用してください。
・15歳以上1回2錠
・7歳以上15歳未満1回1錠

効能効果
比較的体力があり下腹部痛やめまい、のぼせて足冷えなどがあり次の諸症状がある人
月経痛、月経不順、月経異常、更年期障害、血の道症など

相談すること
身体の虚弱な人(体力が衰えている人、身体が弱い人)

その他ご不明な点は薬剤師や登録販売者にご相談ください。


桂枝茯苓丸はなぜ更年期症状を改善するのか

桂枝茯苓丸は「瘀血」(おけつ)を改善する代表的な漢方薬です。

瘀血とは流れにくくなって滞った「血」をいいます。漢方薬の効能効果に「月経痛」がある場合、瘀血が原因と考えて瘀血を改善する生薬が含まれていることが多いです。

ではなぜ血は滞ってしまうのか。

女性の身体は排卵日を迎えると受精卵が「子宮内膜」に着床しやすいように水分や栄養が子宮に集まります。

いつもより多く子宮に集まることで、特に栄養を含んだ血は粘性がありいつもより血流が流れにくくなる傾向があります。

流れにくくなるとやがて滞ってしまいますが、血が滞る原因はそれだけではありません。

・骨盤周辺の冷え
・ストレスによる血行不良
・睡眠不足、など

血は一定程度滞ると、それを動かそうとする「気の滞り」(以下気滞)も発生して、滞った気は温められて上昇します。

この温められた気が原因で「のぼせ」「ほてり」「発汗」が発症すると漢方は考えます。

温められた熱は上昇しますが、冷たい気は下へ落ちていきます。これが「冷え」の原因のひとつです。

桂枝茯苓丸はこの「冷えのぼせ」を含めた多くの更年期症状を改善します。


桂枝茯苓丸の各生薬の働き

1.桂皮の発汗作用は身体の深部を温めて血管を拡げて血水の流れを改善します。また桂皮の降気作用で頭や上半身に滞っていた気を下へ降ろします。

2.芍薬の筋弛緩作用は子宮の筋肉のこりや血水の滞りを改善します。

3.茯苓の利水作用は滞っていた水を改善して水を身体全体に巡らします。また余分な水を排出します。

4.牡丹皮の活血作用で瘀血を身体全体に巡らします。また牡丹皮の清熱作用で頭や上半身の滞っていた熱を冷まします。

5.桃仁の活血作用で血をさらに身体全体に巡らします。

自律神経を整える方法として「3+2」を解説しましたが、これはほんの一部で他にもまだあります。

その一つがサウナです

サウナで自律神経が整うのは、

サウナで急速に血管を拡げて、水風呂で急速に血管を収縮させるから

桂枝茯苓丸はもちろんサウナほどではありませんが、桂皮で血管を拡げて牡丹皮で収縮させる「血管運動」に関与する働きがあります。

ただし、誰にでも適用があるかといえばそうではなくて、

比較的体力がある人が対象です

比較的体力がある人とは、

・食欲が普通にある人
・食べても下痢しない人
・顔の血色が普通の人(青白くない人)、など

サウナに行く人を考えればわかりやすいですが、

・体調がよくない人
・病気がちの人

などはサウナに行くことで体調が悪化することがありますが、桂枝茯苓丸も血管運動に関与するので、ある程度の体力は必要です。

生理による瘀血、瘀血は桂枝茯苓丸が最も適応がある漢方薬です。桂枝茯苓丸があなたの更年期症状の助けとなってくれますように。




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