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専門学校から企業へのアンケート

専門学校から企業へのアンケート

(前号からのつづき)
数年前、専門学校サイドから企業に対し、専門学校のあり方についてのアンケートを実施しました。
資料としては少し古いものですが、ここに示されている内容は今でも通用するものです。

専門学校に対する要望では、「高い専門性の習得」、「人間性の育成と教養の習得」 、「基礎の充実」の3つが、特に多かった項目です。

高い専門性の習得」がトップなのは当然のことでしょう。
専門学校=専門教育であり、即戦力に近い専門性の高さや深さが、専門学校の存在意義であり、存在価値を認めるところとなっています。

日本の企業は、基本的に終身雇用システムです。
そこでは、すべての社員をかかえて前進しなければなりません。
この低経済社会を迎えて、経営の合理化、スリム化を名目に、管理職の退職勧奨、希望退職者の募集、社内失業の増加、工場閉鎖による別会社への出向等、リストラを名目にした雇用問題を抱えていますが、原則的には、終身雇用制度です。

そこでは、落ちこぼれ社員をつぐらない社員教育が必要となります。
しかし、企業は生産活動が本来の目的であり、社員教育には時間的制約と経費的制約があります。
質の悪い社員を抱えないためには、さらに、社員のレベルを維持するためには、採用時から基準に合った人を選ぶことが必要になります。

おりしも、超氷河期と云われるほどリクル—ト環境は悪化しています。
昨年のように、採用内定の取り消しが社会問題化することはなくなりましたが、それは採用の絶対数が減少しているからであり、専門学校修了者の就職も完全に「買手市場」となっています。
買い求められる人間の必要条件、それは高いレベルの専門知識を持つことです。

アンケートの二番目に多いのが、「人間性の育成と教養の修得」です。
企業は社会的に信頼されていることによって生きています。
その企業活動を支えるのは社員です。
したがって社員一人一人が、社会的信用を担っていることを自覚することが求められています 。

そんなことから 「企業は人なり」という言葉が生まれています。
企業としての社会的使命を果たし、企業イメージを高めるために、人間的に質の良い社員が求められるのは当然のことです。

企業内でも社員教育が行なわれていますが、人間性や教養は一朝一タの教育で身に付くものではありません。
ましてや企業は日々活動し、そこには社員の生活がかかっています。
悠長に人間教育している時間は在りません。
そのため、専門学校にいる間から、社会人としての基本動作を身に付けさせるように求めているのです。

アンケートの三番目が「基礎の充実」です。
企業における現実レベルは、専門学校で習ったことよりも先へ進んでおり、常にギャップがあります。

専門学校は、一般化した知識を教えるものであり、これは当然のことです。
したがって、専門学校できちんと勉強しなかった者は、さらに一歩遅れていることになります。
基礎は決してばかにしてはなりません。

以上の三点からわかるのは、「専門学校は、単に技術や技能を養成していれば良い」という時代ではないということです。

特定の知識や技能だけを教え込むだけでなく、日常の教育をとおして全人格的に指導するといった、産業人の総合養成機関となり得るか否かが専門学校の評価になっています。
そして、そのことが、就学人口の減少期を迎えるこれからの時代を生き残るための、ターニング・ポイントとなっています。
(次号につづきます)

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