【サーカスの夜に】 作:小川 糸
久しぶりの読書記録。
今回は、小川 糸さんの【サーカスの夜に】を紹介します。
〜あらすじ〜(本書裏面参照)
両親の離婚で一人ぼっちになった少年は、13歳の誕生日を迎え、憧れのサーカス団・『レインボー・サーカス』に飛び込んだ。
ハイヒールで綱の上を歩く元男性の美人綱渡り師。
残り物をとびきり美味しい料理に変える名コック。
空中ブランコで空を飛ぶ古参ペンギンなど。
個性豊かな団員たちに囲まれて、体の小さな少年は自分の居場所を見つけていく。
不自由な世界で自由に生きるための、道標となる物語。
■この本を読んだ理由
この【サーカスの夜に】が、
私の『小川 糸さん作品』の記念すべき一冊目となりました。
この本を選んだ理由は、
あらすじに書いてあった『少年』が『私』のことのように思えたからです。
正社員として働いていた会社で上手くいかず、
元の出向先に戻り、正社員を辞めて派遣社員として新たなスタートを切った今年。
『ちゃんと自分の"やりたい”と思ったことを実現する』と心に誓い、
新たなコミュニティに入ることを決意したときに、この本に出会いました。
『ひとりぼっちになって、憧れのサーカス団に飛び込んだ少年』と
『自分の夢を実現するために、新しいコミュニティに入った私』
きっとこの本には、
”これから私がやるべきことのヒントが隠されているはず!”と思い、読み始めました。
■この作品から、私が受け取ったもの
読み始めて最初に思ったことは、
『この本を買ってよかったぁー!!』でした(笑)
少年がサーカス団に飛び込んでから、サーカスの舞台に出るまでの物語。
少年の成長の物語から、たくさんのことを学ぶことができました。
その中でも、印象に残った3つのことを述べたいと思います。
①自分の頑張りは、誰かが絶対に見てくれている。
サーカス団に来たばかりの少年は何の取り柄もなく、
強いて言えば、13歳なのに見た目が10歳に見えることぐらいでした。
そこで、少年は『トイレ掃除』をすることに決めます。
サーカス団のトイレはひどい状態で、これではせっかくサーカスを見に来たお客さんもトイレに入ってげんなりしてしまうと思い、動き出します。
最初、少年は誰かしら協力してくれるだろうと思っていましたが、
結果、誰も協力してくれず。
むしろ、少年がどんなにピカピカに掃除をしても、平気で汚していきました。
でも、そんな状況も半年後には変化していきます。
トイレを汚す人がどんどん減っていき、
ついには他のサーカス団にいる子供たちも”協力する!”と声を上げるほどになりました。
この『少年のトイレ掃除』だけくり抜いても、少年と周りの人々との変化が伝わってきます。
自分の頑張りを、ちゃんと周りの人は見ているんですよね。
だからこそ、新しいコミュニティの人々と本当の意味で『仲間』になりたいのなら、誰でもできそうだけど、誰もやっていないことをする。
これって、すっごく大切なことなんだと改めて感じました。
そこから、『人の輪』がどんどん広がっていくことを少年が教えてくれました。
②ありのままを受け入れることの大切さ。
サーカス団では、自分のありのままを受け入れることがモットーとされています。
例えば、登場人物のひとり。
手のひらがくっついたまま生まれてきた双子の『チェリー姉妹』
「二人は大事な臓器を共有しているわけでもないから、離そうと思えば簡単にできたはずなんだ。でも、ここではありのままを受け入れる。連中(サーカス団員たち)は、そうなったのにはきっと何か意味があるんじゃないか、って考えるんだよ。(略) それに二人は、ああして繋がっているからこそ、息の合った、それこそつかず離れずのあの絶妙な演技ができている」
『サーカスの夜に』p.89 6行目より
今、世界は性別や人種などで人を判断するのではなく、
”個人”として人を判断する時代になってきています。
『みんなちがって、みんないい』
ちがうからこそ、他の人ができないものを生み出すこともできる。
『”ありのままでいること”から、自分にしかできないことができる。』
そんな一つの答えを、この本は導き出してくれました。
③何かを習得したいのであれば、諦めずに続けること。
物語の中で、少年は『ジャグリング』と『綱渡』を練習します。
最初は『ジャグリング』。
『ジャグリング』はサーカス技の基本で、団員なら誰でもできる技で、少年は『ジャグリング』を習得するために練習を始めます。
もちろん、最初は上手くいきません。
でも、少年は団員からもらったアドバイスを素直に実践し、メキメキと腕をあげていきます。
最後には、1つもボールを回せなかった少年が、5個もボールを回せるようになりました。
次に、『綱渡』。
もともと、ナットーがやっていた演目でしたが、ナットーが脱退。(ナットーが脱退した理由については、ぜひ本を手にとって見てください😊)
ナットーに憧れていた少年が、後を引き継ぎます。
これまた、最初は上手くいかず、他の団員の子供たちの方がうまい状況。
それでも、少年は諦めず練習に練習を重ねて成長していきます。
そんな時に、ジャグリングを教えてくれたキャビアからこんな言葉を貰います。
「十人十色さ。だから少年も、少年にしかできない芸を開拓していくんだな。こうして練習しているうちに、だんだん自分の型みたいなものが見えてくるから。いいかい? ローマは一日にしてならず、って諺があるだろ。サーカスも一緒。何度も何度も練習して、失敗を重ねて、そこからようやく見えてくる世界があるんだよ」
『サーカスの夜に』p.261 10行目より
最後のシーンでは、舞台の上で『綱渡』をする少年が描かれています。
ナットーのように上手くいかず、悔し涙を流しそうになる少年。
でも、ここからがスタートです。
最後の一文には、「未来を見つめて歩き続ける。」で終わっています。
『続ける』ということがとても苦手な私ですが、
成長した少年から続けることが『変化』へとつながることを教えてもらいました。
私も少年のように『見える世界を変えたい』と強く思い、
『続ける』ことに苦手意識を持つのではなく『変化する自分を楽しむこと』。
このことを、大切にしたいと考えが変わりました。
■さいごに
私は、この本を新しいコミュニティやグループ、『人の輪の中に入ること』に悩みを持っている人におすすめしたいです。
何かしら、学べるものがきっとあるはず。
また、サーカスの歴史や貧困の格差。
本当に価値あるものは何か。
この本には色んなテーマがつまっています。
読んだときに印象に残ることが、自分の中で大切にしていることかもしれません。
そんなふうに、この本を読んでいただけるといいかなと私は思います。
私のおすすめの作品です。
読んでいただけると嬉しいです。