ヒアリングには『スコップ』と『ライト』をもっていこう【プランナー 言葉の雑談vol.3】
こんにちは、プランナーのうらかわです。いやぁ暑い日が続きますねぇ。
CI、VI、MVV、冊子、動画、アパレル商品、ウェブサイト、キャラクター…これまで、シフトブレインでいろんなものを作ってきました。ひとつとしておなじ制作過程をふんだプロジェクトはありません。作るものが変われば、プロセスは変わりますし、作るものが同じでも、そのプロジェクトの目的や制作体制、制作期間、予算など、さまざまな要因でもプロセスは変わってきますもんね。
しかし、毎回変わらないことがあります。
どんなプロジェクトでも必ず行うこと、
それが『ヒアリング』です。
この記事では、シフトブレインが、いやぼく自身が、プランニングやクリエイティブディレクションを行っていくうえで、どのようなことを考え『ヒアリング』を行っているかをまとめた記事になります。
って書くとなんだか偉そうですね、いやん、そういうキャラじゃないの。
でも、なるべく包み隠さず、なるべく素直に、わかりやすく、そしてしっかり体重の乗った言葉で語っていきたいと思います。もし何かの参考になったら、うれしいです。
みえない『らしさ』を捉える
ヒアリングをなぜ行うのか?
それは、まだみえていない『らしさ』を把握するために行うのだとぼくは考えています。その企業や人の『根っこ』のようなものを探すと言ってもいいかもしれません。
土の中で太く大きく広がっている根。それは思想、価値観、原体験…さまざまなもので形成されています。
ヒアリングでは、企業の事業やプロダクトなどいわゆるみえる『らしさ』はもちろんのこと、それらを下支えしているみえない『らしさ』も把握することが目的になります。
何を、どうすべきかみえてくる
上記のようなヒアリングを行うことで、その対象の『らしさ』全体をしっかり把握できます。
その『らしさ』は、クリエイティブの方向性はもちろん、何を、どう、伝えるべきか?などのコミュニケーション手段を考える上でも役に立ってくれるのです。また、これは時たまですが、ヒアリングを行うことで、想定していたプロジェクトの課題が実態と合致していないことに気づく、なんてこともあります。
これまでの経験からぼくは、企業におけるさまざまな『課題』というのはその企業のみえていない『らしさ』と強く紐づいている場合が多いのではないかと考えています。だから課題とその対策との整合性を確認するためにも、ヒアリングは欠かせないプロセスだと考えているのです。
より良いヒアリングをつくる『スコップ』と『ライト』
では、具体的にどのようにヒアリングを行っていくか、です。
ぼくは『らしさ』を見つけ出すには、2つの観点でヒアリング項目を設計していきます。その観点こそ『スコップ』と『ライト』です。
スコップとはなにか?
根っこの先に行き着くために
スコップはその対象のみえない『らしさ』を目指し掘り進めていく問いのことです。曖昧だけれども、なんとなく認知されている事柄や価値観、雰囲気を答えることで言語化していけるような問いであることを意識して設計していきます。
『時をかけるスコップ』を持とう
スコップになる問いは、さまざまな時間軸で設計する必要があります。
簡単に言うと…
まず『現在』の状態や行動を知ること、そしてなぜそうしたのかの理由を『過去』の状態や行動を知ること、今後どのようになっていきたいか『未来』の展望を知る、ということです。
現在の状態や行動を知るための問いは、その対象の「WHAT(なにをしているのか)」「HOW(どのようにしているのか)」「WHO(誰がしているのか)」などを実体や手段を捉えるために必要な問いです。
過去への問いは、それらそれぞれの項目を『WHY(なぜそうするのか)』と一段深く掘っていくための問いです。
そして未来への問い。これは、『WANT(どうしたいか)』『WILL(どんな意志があるか)』を確認するための問い。今後進んでいく方向や展望を語ってもらえるような問いだととても良いですね。
上記のいずれかを明らかにできる問いになっているかな?と意識しながら問いだてやチェックをしていけるとよいですよ。
あとこれはみなさんご存知だとは思うのですが、たとえばリブランディングのような今から大きく刷新を望まれるプロジェクトでも、過去はしっかりと把握すべきだとぼくは考えます。
リブランディングで作っていくものも、しっかり過去や現在と繋がりがなければいけません。そうしないと、唐突で、チグハグなものができあがってしまったりします。今立っている位置から人間は逃れられないものです。
ライトとはなにか?
掘り起こされたものを見定める
ライトとなる問いは、スコップで掘り起こされた事柄や経験、価値観をよりしっかり、はっきりと見定めるための問いです。これまで「そうである」「そうあるべき」と考えられてきたことが、本当にそうなのか、検証するきっかけとなる問いです。
『いじわるなライト』を持とう
ライトとなる問いは『いじわる』になることからはじまります。
スコップで掘り起こした事柄ひとつひとつを「そうは言っても、本当は違うんじゃないのぉ?」という疑いの目で検証をしていきます。
もちろんいじわるなライトは、自分の中で使うだけではなく、外、つまりクライアントにも照らしていきましょう。そんないじわるになれないって?勇気を持ってなりましょう!嘘です。秘訣があります。
ライトは対象とともに手を取り合って持つのです。
突き放すような質問を投げかけるのではなく、ともにライトを手に取り、ひとつひとつの検証していくのだと考えましょう。その姿勢はきっと相手にも伝わると思います。
いじわるな問いは、掘り起こしたものたちの関係性や繋がりを意識して答えを見つけていくと良いでしょう。
「ここでこう考えているから、こう行動しているんだ」
というような論理構造や心情的な流れを見つけられると、疑いはいっきに晴れ、より強固な『らしさ』の理解に繋がったり、新たな『らしさ』の発見につながったりします。
逆に、論理的な破綻や心情的にチグハグな印象をもつところがあったら遠慮せず、さらに質問していきましょう。
たとえば…【人にやさしく】という想いのもとやってる会社が、社員にすごく厳しい教育をしていて、一貫性がないなぁと感じたのなら、それはその会社の考える【やさしさ】をより具体的な定義につなげるチャンスです。あなたの感じている破綻やチグハグと合わせてさらに質問していくと一段と深いヒアリングになることまちがいなしです。
✨✨🔦🔦🔦✨✨
型なんて存在しない?
と、ここまでぼくの考えをまとめていきましたが、このスコップとライト、完全に分離して思考できるときばかりではなく、時には同時に考えていたり、順序が変わったりする時もあります。ほんとうにまちまち。それはそうですよね、対象の状態は常に違うんですから。
症状によって処方される薬が違うように、対象の状況や課題によってヒアリングの設計方法も変わっていきます。型なんて存在しないのです、いや、型は日々、アップデートしていくものなのだということなのかもしれません。
ヒアリングは誰のため?
ヒアリングは、聞き手であるあなたのためだけに作用する行為ではありません。それは回答する側の頭の整理や、そのヒアリングを隣で聞いている制作メンバーのためにもきっとなります。なので、なるべくスコップやライトを自分の手にだけ持つのではなく、さまざまな人の手に渡していきながら、ヒアリングを遂行できると良い気がします。
ぼくはいつもヒアリングを設計しているとき、『グーニーズ』という映画を思い出します。少年たちは、暗い洞窟の中を財宝を求めて旅に出る映画です。泥だらけ、傷だらけになりながらも、仲間たちとともに明るく前へ進んでいく姿は、ぼくのヒアリング設計の理想の形です。ヒアリングは『らしさ』というお宝を見つける冒険みたいなものです。
あなたの話を聞かせてほしい
今回この記事をまとめたのは、ぼくの考えを誰かに伝えたいということよりも「自分はこうだけれども、あなたはどう?」というような形に、さまざまな人のヒアリングのこだわりや考え方について聞いてみたいなという思いからでした。ヒアリングの価値を否定する人はいないと思います。しかしその価値を共有するのはとても難しい。この記事がきっかけに、ヒアリングについてのディスカッションや方法論の醸成につながったらいいな。
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