自然派コスメができるまで(8)ゼラニウムで、もんどころ感のあるShieldを
もんどころShieldのゼラニウム、白の香りの立役者
新時代にふさわしい、未来につないでゆきたいと願う製品づくりを目指し発足した、Shield72°プロダクツチームの開発ストーリーを綴っています。開発担当の白木海月-shirokikurage-と申します。
このたび、無事にデビューを果たしました第1弾の化粧水と乳液は、ローズマリーを中心にオーガニックアロマだけの自然な香り、ナチュラルスキンケア「うるおいシリーズ」です。
白と黒、ふたつの香りがどのように出来上がっていったのかは、過去記事(5)に紹介しております。ローズマリーとの相性を基底に、Shield72°というブランド名と、五角形の銀の盾を表現できるような「シュッと魔法のひと吹き、透明なShieldでまもるような」イメージの香りに仕上げました。
盾には二つの側面が必要だろう、やさしくふんわり包み込んで安心感や清浄感をもたらしてくれるShieldと、強くて頼もしい速攻浄化力で広がりや解放感をもたらしてくれるShield。ということで、安心と清浄感を醸し出す、白の香りの立役者、ゼラニウムのものがたりをご紹介します。
ゼラニウムの精油は、化粧品業界では正式名ニオイテンジクアオイ油といいます。匂い、天竺、葵です。
アフリカ原産のハーブで、日本に持ち込まれたのは江戸後期から明治のころ。葵に似ているのでアオイ、遠い異国からやってきたのでテンジク、良い匂いがするからニオイ、ということでニオイテンジクアオイと呼ばれるようになりました。ローズの香りと同じ成分であるゲラニオールやシトロネロールを含むので、ローズゼラニウムの別名も持っています。
現在のぺラルゴニウム属に分類される前はゲラニウム属に分類されていた名残で、一般的にゼラニウムと呼ばれますが、園芸種を含めるとゼラニウムには200を超える種類があり、似ているといわれる葵の花も、日本人ならみんな知ってる「三つ葉葵のもんどころ」をはじめとして、タチアオイやウスベニアオイ、ゼニアオイなどたくさんの花があります。
ゼラニウムの精油を初めて蒸留したのはフランスの化学者で、1819年ころ。それ以降ゼラニウムはローズに代用される香水の大切な成分として、フランスの香水業界で重宝され、ヨーロッパの商業街道を疾走します。
現代ではヨーロッパ一般家庭の庭や生け垣で定番ハーブとなっており、ゼラニウムの鉢植えを、夏は庭のアプローチに、冬は室内の壁際にならべて、長いスカートの裾がゼラニウムの葉をなでることで、周囲に漂う香りを楽しむ風習が受けつがれています。
植物が精油をその身にもっている理由の一つに、忌避効果といって虫の捕食から身を守ったり、カビや細菌の繁殖を防ぐためというのがあります。
ゼラニウムはアフリカ喜望峰原産ですから、過酷な環境下で生き延びるために忌避効果を発揮して、虫の捕食やカビの発生、細菌の繁殖などから葉を守ってきた進化の経緯があると考えられます。だから精油は可愛らしい花ではなく、葉にもっているのです。
「ええい、このもんどころが目に入らぬか~!控え控え~」的なやり取りが、植物と虫たちの小さな世界でもくりひろげられているのかもしれません。
葉ではなく花や果皮に精油を持つ植物は、逆に鳥や蜂を引き寄せて、受粉や、種を遠くへ運んでもらうための進化プロセスを辿ってきました。誘引効果といいます。
ゼラニウムがヨーロッパ人に着目され、アフリカから持ち込まれた17世紀に、イギリスでセンセーショナルな薬草本を出版したハーバリスト、ニコラス・カルペパー。
占星学にも精通しており、星と植物の関連性、疾病についての処方を一般に開示しました。当時ハーブの知識は民間に開示されず、聖職者と権力者のみが扱える時代でした。一般人がハーブを植えたり勝手に使用したりすると魔女狩りにあった時代です。15世紀から18世紀の間に4万人が極刑にあったともいわれています。 いつ誰にチクられて告発されるかわからない、戦々恐々とした時代に、なんという天晴男。カルペパーさんは何冊もの本を出版し現代の植物学の礎をつくられました。
植物が薬効成分をもち、人体の不調や不安定な感情を癒す力を持っていること、花を愛でて視覚を楽しませ、香りで嗅覚を楽しませ、食するものは味覚を楽しませ、葉の擦れ合う音で聴覚を楽しませてくれること。さらに食器や敷物、屋根や柱となって生活を支えてくれること。カルペパーさんは植物の偉大さを、惑星象徴を使って示した人物の一人です。
占星学と医学の結びつきは古代に始まり、医学の父として名高いヒポクラテス(BC400年ころ)は身体の病と治癒は、惑星の周期と密接に関連していると考え、占星学の基礎的知識を診断の手立てとして活用していました。 スイスの医師、占星学者でもあったパラケルスス(1500年ころ)は、身体の各部位、内臓に惑星をあてはめ、薬草、貴石、色彩に影響を及ぼす「支配星」について集録しました。
西洋には古代から、ハーブを温度や湿度というエネルギーで分類し、占星学の星座や惑星に関連して学ぶことを通例とする学派がありました。
ゼラニウムは金星庇護のもとにあるハーブといわれます。占星術を知らない人のために補足すると、金星象徴というのは、情緒や感受性の豊かさをとりもどし、喜びや楽しみを素直に求める健康的な欲求を回復させるのに役立つハーブと定義できます。
また金星は牡牛座と天秤座の支配星なので、現代風にいうとお出かけ用ファッションを楽しむ気持ちとか、好きな人を見てキュンとなる気持ちとか、キレイになりたいカッコよくなりたい気持ちを楽しむこととか。
もうちょっと広げると、空の広さや、風の心地よさや、太陽の光に胸が躍って、歌ったり踊ったり、走り出したくなる気持ちや、音楽や芸術に触れて感動する気持ちを、抑圧せずに、存分に楽しむこと、といえます。
オーガニックゼラニウム精油を白の香りに選んだのは、固有の特徴である忌避効果(わたしたちは「もんどころ感」と言っています)を発揮しつつも、ゲラニオールやシトロネロールといったバラ様の香りによる安心感、清浄感、つつみこまれるようなしっとり感が、Shieldに守られた内面の心理を表現するのにぴったりと思ったからです。
香り成分にはトップ、ミドル、ベースと速度があり、動きが速いものほど人の嗅覚の受容器に届くのも速くなります。速く届くけど去ってしまうのも速いので、追っかけミドルノートが受容器に届き、香りのグラデーションが楽しめるという構造になっています。
スッと香るローズマリーを追いかけるように、ふわりと届くゼラニウムの香り。ゲラニオール成分はアロマ業界では視床下部/下垂体というホルモン分泌の司令塔に働きかけ、心身のバランスを整えると考えられており、視床下部/下垂体は免疫系、そして交感神経と副交感神経のオンオフをつかさどる部位でもあるので、ホルモン、免疫、神経系という三つ巴のヒーリングシステムを整える効果があると定義されています。
こうした植物、ハーブの恩恵をもっと身近な知識として広く扱い、試したり、学んだり、経験できる環境づくりも、未来につなげ、残していきたいプロジェクトのひとつだと、Shieldプロダクツチームは考えています。
植物の恩寵を自由に受け取ることができない時代。
知ることを禁じられ、試すことや、経験することを制限される時代。
魔女だと告発されないよう細心の注意を払って、穏便に、おとなしく、安心安全第一で、少しの波風も立てずに、誰にも迷惑をかけないように。
良かれと思った節度が、いつの間にか抑圧になっていると感じた時には、ゼラニウムの芳香を試してみるのもおすすめです。
(つづく)
*Shield72°製品に使用されているオーガニックゼラニウム精油は、正式にはニオイテンジクアオイ油と呼ばれ、賦香目的で配合しています。
Shield72°製品にご興味のある方は、公式HP https://www.shield72.net/ も、ご覧くださるとうれしいです。