昔の英語の通信教育が「読書の楽しみ」を思い出させてくれた話
かつて英語通信教育のアルクが実施しているプログラムの1つに、「6カ月間でペーパーバックを読みこなせるようになる」という、「ペンギン・リーディング・マラソン」という講座がありました。子ども向けのやさしいペーパーバックを毎月2冊ずつ読んでいく講座で、もうかなり前に終了しています。ところが先日、メルカリに教材一式が出品されていたので、興味があって購入してみました。このテキストが非常に素晴らしい! 「英語の本の読み方」だけではなく、読書の楽しみ方、楽しさを、改めて思い出させてくれました。その感動を共有したいと思います。
ペンギン・リーディング・マラソンとは?
ペンギンのロゴが目印のパフィンブックスは、イギリスの児童書出版社。このパフィンブックスの物語を毎月2冊ずつ読み込んでいき、英文和訳ではない英文読解力を付けるのが、ペンギン・リーディング・マラソンです。内容はこんな感じです。
<構成>
・パフィンブックス 2冊 × 6カ月分=12冊
・リーダーズガイド(テキスト) × 6カ月分=6冊
・リーダーズカセットテープ(!) × 6カ月分=6本
・コースガイド(講座全体の説明リーフレット)1冊
・単語集 1冊
ペーパーバックをパラパラと見ると、7歳以上〜12歳くらいまでの子どもを対象にした本かな、という印象です。
コースの目標が「英文和訳ではなく、英語を英語のまま理解する読解力を付けること」なので、翻訳は一切ありません。「子ども向けだから簡単でしょ」とはいっても、100ページ以上の物語をスラスラ読み通せるかといえば、それは少々難しい。
そこで出てくるのが、このリーダーズガイドです。独特な言い回しやイディオムの解説、音声テープの効果的な使い方と会話ダイアログが載っているほか、「どう読んでいけばいいか」という読み方指南があります。
この「読み方の指南」が、とても素晴らしい内容でした。まだ初回のテキストを読んだだけですが、「本を読む楽しみ」を改めて思い起こさせてくれたのです。
自分のことを「本好き」だと思っていたけど
私は子どものころから本好きで、図書館や本屋さんに行くのが何よりの楽しみでした。新学期が始まり、新しい国語の教科書をもらうと、どんな話が載っているのか楽しみで、帰宅するとすぐに教科書を読んでいました。
大人になったいまも本は好きです。ですが子ども時代と異なり、小説はほとんど読まなくなりました。学生時代は哲学書なども読んでいましたが、それらもすっかりご無沙汰に。現在読むものは、ノンフィクション&ドキュメンタリー、仕事で必要な本、ビジネス書が中心で、「物語を読んで楽しむ」という機会はかなり減っています。特に近年のラノベ等にはまーったく興味がないし、最近の作家さんのこともよく知らないので、どんどん物語から離れていってしまいました。
そんな私でしたが、このペンギン・リーディング・マラソンのリーディングガイドを読んで、改めて「物語を読むって、いい体験なんだなー」としみじみ思い出したのです。
すべての読書に通じる「本を読む心構え、楽しみ方」
第1回の目標は「訳さずに理解しよう」ということで、辞書もなるべく引かずに(引くなら英英辞典)、「わからない単語などは類推しながら読んでいこう」というのが基本スタンス。そんな読書スタンスで英語の物語を読み込むコツとして、リーディングガイドでは「第1章が勝負だ!」と断言しています。
・読書の原動力を思い出そう
どんな本でも第1章を越えればたいていはおもしろくなるものだ。したがって1冊の本を最後まで読むかどうかは、第1章でその本のおもしろさが発見できるかどうかにかかっている。しかもこのおもしろさはできるだけ早く見つけねばならない。(酒巻晴行氏著, リーダーズガイド"Reading Skill Course"より、以下同)
なるほど! 大人になると——少なくとも私の場合は——おもしろさを発見するより、「仕事で必要だから読んでいる」「勉強になるから読んでいる」という読書が多かったのですが、そういえば「子どものころは、おもしろいから本を読んでいたんだよな」と思い出しました。
もちろん、勉強になる本や仕事で必要な本も、おもしろいことは間違いありません。知らないことを知る楽しみ、斬新な考えやアイディアに触れる楽しみがあります。
ただ、子ども時代の読書は物語のハラハラワクワク、「これから何が起こるんだろう?」という好奇心、そういう気持ちが読書の原動力でした。このリーダーズガイドは、昔あった「本のページをめくるトキメキ感」を思い出させてくれたのです。
・物語を読む楽しさとは
リーディングガイドによると、おもしろさを発見するために、「第1章は丁寧に、そして一気に読むこと」とあります。ここに物語の背景&前提条件がすべてあるため、第1章をおろそかにすると、その後の物語が全然理解できなくなってしまいます。
そこで押さえるべきは「場所」「時間」「主人公」「登場人物の関係」です。これらの要素をきちんと認識したうえで、「主役は心を読め」とのアドバイスがあります。
主役は、そのアクションよりも心がおもしろい。
物語がおもしろいのは、主役の奇想天外なアクションよりも、むしろその心の世界にある。主役のしめす怒りや正義感や悲しみや喜びが、読者の心とひとつになるからで、物語を読む楽しさはまさにここにある。
したがって、あなたの読む本がおもしろくないとしたら、(中略)主役の心を読むのを忘れているに違いない。
そういえば最近のミステリー小説とか、「伏線は何か」とか、そんなことばっかり考えて、あまり主人公の心情に注意を払っていなかったかも……。
ちなみに今回の課題は“Dragon in Danger”という、ドラゴンと少女Susanの友情物語(多分)。このドラゴンはアーサー王の時代から生きているそうで、何百年もの間ひとりぼっちで暮らしていたそう。リーディングガイドでは
(中略)何百年もの間、人間ともつき合うことなく、海辺の洞穴にひとりで住んでいるわけだから、心は寂しい竜に違いない。それがSusanという心を許せる人間に出会ったのだから、Dragonはいま、どんなにか楽しい夏を送っていることだろう。
と、主人公の心情を掘り下げて解説しています。こういう読み方、そういえば忘れていたな……。
・感動は余韻の中に
最後に、本を読むことの楽しさについて、ガイドでは以下のように語っています。
感動は余韻の中にある
本のよしあしは読んでいる途中で決めないほうがいい。一冊の本がほんとうに良い本かどうかは、最後のページを読んだ後の感動の中にあるからだ。
本は、本来どんな本でもおもしろい。(中略)だから読書をおもしろくするかどうかは、作家が見つけたおもしろさを、読者が見つけることができるかどうかにかかっている。
私が子どものころ本好きだったのは、「どんな本もおもしろい」と思っていたからですし、「これはどんなにおもしろい物語なんだろう」とワクワクする期待感、そういうものを持っていたからでした。だからこそ、作者が見つけたおもしろさを、読者(私)も見つけることができたのだと思います。
これからどんな物語が待っているのか
主人公の心とひとつになる、「どんなふうに物語が展開するんだろう」とワクワクする……そういう読書を忘れていたことを、昔むかしの英語通信講座が教えてくれました。「そういえば、子どものころはこんな読書だった」と改めて思い出し、これから12冊のペーパーバックを童心にかえって読んでいくのが楽しみでもあります。最後のページまで読んで、感動の余韻にひたりたい。
ただし懸念もあります。それは「本当に最後まで読み切れるか?」ということ。英語への苦手意識が勝るか、それとも読書の楽しさが勝るのか、どうなるやらわかりませんが、せっかく入手したペーパーバック12冊とリーダーズガイド6冊、頑張って活用したいと思います!
▲音声テープをmp3に変換できるプレイヤー、買ってこなきゃ……
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