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あの天然記念物が凶暴&巨大化して人間どもを蹂躙!?そんな生きた化石を殲滅すべく天才高校生たちが立ち上がるB級パニックモンスターホラー「キラーカブトガニ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(806日目)
「キラーカブトガニ」(2021)
ピアース•ベロルゼイマー監督
◆あらすじ
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廃炉となった原子力発電所が爆破処理されたカリフォルニアのある海辺の町で、行方不明事件が続発し、白骨化した人間の死体が次々と発見される。当初は人食いザメの出現が疑われたが、被害者を襲ったのはサメではなくカブトガニだった。放射能の影響で凶暴化したカブトガニの群れが人間を襲っていたのだ。やがて、一匹の殺人カブトガニがゴジラ並に巨大化し、町を襲う。(映画.comより引用)
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『放射能の影響で凶暴化&巨大化したカブトガニの大群が田舎町で大暴れ!不思議なエネルギー源を手に入れた主人公たちはヤツらから町を守るべく立ち上がるのだった!』
という、低予算のB級モンスターパニック映画なんですけども、登場人物の見せ方が非常に上手く、青春や恋愛要素も上手く絡めることでストーリーに厚みを持たせているため、シンプルに映画としてめちゃくちゃ面白かったです。
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主人公の発見好きの学生•フィルは生まれつき車椅子で、口には出さないまでもそのことにコンプレックスを抱えています。明朗快活でいつも自分の側にいてくれる幼馴染のマディと並んで歩いてみたい、そして思いを打ち明けたい。しかし心のどこかでいつも一歩引いてしまっている自分がおり、マディにも兄にも素直になれません。
そんな彼がちょっと怪しいエネルギー源を手に入れ、それ利用した歩行器具を作り出し、一人で歩いてプロムに参加してマディをダンスに誘うシーンなどは甘酸っぱい青春物語のようで応援せずにはいられませんでした。
登場人物一人一人の見せ方が上手いので、誰にでも感情移入してしまいますし、皆一様にちょっと不器用なので愛おしくなります。
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そんな青春映画、恋愛映画としても楽しめるコメディベースの作品ですが、一番の見どころでもあるキラーカブトガニの活躍ももちろん見逃せません。
放射能の影響で凶暴化し、後に成長すると巨大化するなど、設定はかなり緩いですが、面白いのでいいんじゃないでしょうか。
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見た目もエイリアンのようでキャッチーですし、何かもちゃもちゃ喋ったり、鼻歌を口ずさんだりするのも可愛らしいです。
物語後半では町を壊滅状態に追い込み、クレーンゲームに興じたり、酒をしこたま飲んで泥酔したりと思い思いに過ごす描写もあり、なんだか「グレムリン」(’84)を彷彿とさせますし、第二形態の2メートル級大型は完全にエイリアンですし、最終形態の超大型は特撮怪獣映画に登場してもおかしくないビジュアルです。
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今作においてたった一人で監督•脚本•製作•編集を務めたピアース•ベロルゼイマー氏は昭和平成のモンスターパニック映画や特撮がお好きなのか、同氏の好きなものややりたいことがこれでもかと詰め込まれています。
なんですけども、構成や脚本の妙なのか、それがうまいこと渋滞せずに進行していますし、なによりも熱量が凄まじいので相当良い仕上がりになっていると思います。
そして、そんな今作に登場するキラーカブトガニのモデルはアメリカカブトガニという種だそうです。
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いわゆる我々が思い浮かべるカブトガニですね。あまり知られていませんが、その血液は医療分野において感染症や新薬のテストに用いられており、また血中の酵素は細菌の多い場所を検出する働きがあるため、国際宇宙ステーションで清掃が不十分な場所を見つけるために使用されています。さらに血中のタンパクから新たな抗生物質を開発する研究も進められているそうです。
血液は1リットルでおよそ1万5千ドルで取り引きされており、専門業者はカブトガニが死なない程度に血液を取り続けているそうです。流石にこれは可哀想ですね。
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今のところ絶滅危惧種には指定されていませんが、70年頃から減少傾向にあるため、保護活動も行われています。ちなみに、新たに繁殖したカブトガニのおよそ1割が毎年裏返しになったまま元に戻れずに死んでしまっているらしく、保護活動グループが『裏返しのカブトガニを見つけたら元に戻してあげよう!』というキャンペーンを展開しているようです。
当然このカブトガニが人を襲うことなどはなく、一応今作のエンディング後に『噛みつかないから、ビーチで見つけてもイジメないでね』というテロップが出ます。こうでも言っておかないと「JAWS」(’75)の二の舞いになりかねないですからね。
監督を務めたピアース•ペロルゼイマー氏は今作が長編映画デビュー作で、先ほども少し触れましたが監督の他に脚本、製作、編集も全て御自身が務めています。
それもあってか完成までに6年の歳月を費やしていることから、もしかしたら同氏の次回作の公開は2027年前後になるかもしれません。また、日本に輸入されるのがその2年後だと考えると我々が拝めるのは2030年くらいかもしれませんので気長に待ちましょう。
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◇カリフォルニア州メンダシーノ郡に位置する海辺の田舎町。ここで廃炉になった原子力発電所が爆破処理された。しかしその際、偶然近くにいたカブトガニは放射能の影響で凶暴化し、次々と人を襲うようになった…
そんなこととは露知らず、発明大好き学生のフィルとその幼馴染のマディはエモリウム•クラスター•グラムという凄まじい力を秘めたエネルギー源を手に入れる。生まれつき車椅子のフィルはそのエネルギー源を用いてオリジナルの歩行器具を作ろうとしていた。そんな折、町では次々と人が行方不明となり、フィルの兄で保安官代理のハンターは捜査の末に海辺で大量の白骨化死体や無惨に腹を食い破られた巨大な鯨を発見。当初はサメの仕業と思われていたが、その間にも個体数を増やしていたカブトガニはいよいよ町に出現し、人々を蹂躙し始めた。画してフィルたちは自分たちの日常、青春、そして恋愛、全てを台無しにしたキラーカブトガニたちと決死の攻防を繰り広げるのだった!
というのが今作の細かめのあらすじです。
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ある日、鼻歌を口ずさむ一匹のカブトガニが浜辺を散歩していると、目の前で廃炉になった原子力発電所が爆破処理された。
その時の放射能の影響で凶暴化したカブトガニはさっそく自分をもてあそんだバカップルを惨殺。
こうして田舎町にとてつもない脅威が訪れるのだが、まだ誰も知る由はなかった…
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カリフォルニア州メンダシーノ郡の海辺に位置する田舎町は今日も平和。保安官代理のハンターは職務をサボってゲームに興じ、上司のフラニガンからお説教。と言ってもパンツ一丁でジョギングをするおじさんくらいしか取り締まる相手もおらず、町の人たちは皆完全に平和ボケしている。
ハンターの弟で発明好きの学生フィルは幼馴染のマディと今日も自宅の納屋で発明に没頭。エモリウム•クラスター•グラムという一歩間違えたら兵器にもなりかねない凄まじいエネルギー源がアジアの怪しい業者からようやく届いたらしく、何やら彼の実験は大詰めらしい。
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そんな折、フラニガンたちの元には鯨の死体が浜辺に打ち上げられたと通報が入る。
さっそく現場に急行すると、無惨にも腹を食い破られた巨大な鯨の死体があり、サメの仕業として処理されたものの、こんな大きな噛み跡を残すサメがいるのだろうかとハンターは腑に落ちない。
その後、浜辺をさらに調査したハンターは洞窟の奥で無数の白骨化した遺体や腐った臓器が散らばっているのを発見。かろうじて生きていた女性に声をかけると、目玉が飛び出したその女性は「カブトガニよ!」と叫ぶのだった…
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その晩、フィルたちと同じクラスのおバカな留学生•ラドゥは自宅のガレージでお友達とおクスリをキメて気分も上々。
そこへカブトガニが数匹侵入し、ラドゥの友人を瞬殺。ラドゥは命からがら逃げ出して近所のパブに助けを求めるも、テンパりすぎて要領を得ず、つまみ出されてしまう。
一方、フィルの研究はいよいよ大詰め。彼が取り寄せたエモリウム•クラスター•グラムは大量の電力を粒子の流れに乗せられるらしく、よく分かりませんが、要はそのエネルギーを上手く利用すれば、生まれつき車椅子のフィルも自力で歩けるような歩行器具が作れるみたいです。しかし中々上手くいきません。
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(https://youtu.be/TvZryVP1_gs?si=NfrxLmfnkXVkki62より引用)
落ち込むフィルとそんな彼をいつも優しく励まし、側にいてくれるマディ。そして、そんな彼女の母親で理科の教師を務めるアナリスはフィルの兄•ハンターと言わば教師と元教え子の関係ですがイイ感じです。
気晴らしにと夜の町をぷらぷらと散歩するフィルとマディ。そこへ先ほどパブをつまみ出されたラドゥがやって来て、「アメリカ帝国軍に連絡しなきゃ!」等とまだテンパっています。
そんな3人は弱っている小さいカブトガニを発見。咄嗟にマディは助けようとしますが死んでしまいます。フィルたちが立ち去った後もカブトガニの死体にイキリ続けるラドゥ。すると死骸の甲羅部分がパカっと開いて2メートル程の大きなカブトガニが出現。どうやら死んだのではなく、成長または脱皮をしていただけでした。
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(https://youtu.be/TvZryVP1_gs?si=NfrxLmfnkXVkki62より引用)
その翌日は待ちに待ったプロムの日です。
おめかしするフィルとハンターはプロム会場に到着。あの歩行器具はついに完成し、不格好ながらも彼は一人で歩き、ずっと好きだったマディを踊りに誘います。
マディは一人で立てるフィルに「背、高いのね」と一言。ずっと好き同士だった2人が初めて並んで歩いて、踊ることが出来る。こんな幸せなことがあるでしょうか。
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しかし、そんな楽しい時間も束の間。校内に無数のカブトガニが侵入し、生徒たちを次々と襲い始めます。ハンターが皆を避難させようとするも、2メートル級の大型も現れたことで一行も逃走。
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校内の至る所で生徒たちが襲われている最悪の状況の中、フィルの装置が壊れてしまい、そこへタイミング悪く大型カブトガニが襲いかかる。
ハンターが身を挺して庇おうとしたその時、日本刀を持ったおバカ留学生のラドゥが駆け付けて、カブトガニを一刀両断。皆のピンチを救います。
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とりあえず理科室に逃げ込んだ一行はここで一度情報を整理します。
ハンター曰く、カブトガニは3種類いるらしく、通常の小型、2メートル級の大型、そしてまだその姿は見ていないものの鯨を襲った超巨大個体がいるとのこと。
そして、奴らは放射能を浴びたことで急激に成長した。ということはその環境に適応したということ。つまりは同等の凄まじいエネルギーに適応した別の生物で対抗するしかないとの結論に至る。
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学校を車で後にする一行だったが、町ではカブトガニがクレーンゲームをしたり、酒を浴びるように飲んだりとはしゃぎ放題。至る所で人々が襲われており、いつもはパンツ一丁でジョギングをするおじさんも流石にちゃんと服を着て逃げています。
ここでハンターはフラニガンと落ち合うために一度保安官事務所へと向かい、フィルたちは納屋で何やらDIYに勤しんでいます。
残念ながらフラニガンはすでに殺されており、嘆くハンター。一方、納屋にも大型カブトガニが襲いかかりますがラドゥの日本刀無双でどうにかこうにか切り抜けます。
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しかしここでついに鯨を襲った超巨大カブトガニが上陸。もはやここまでと誰もが諦めたその時!
先ほどまでフィルたちが作っていたサメロボットがエモリウム•クラスター•グラムの力によって超巨大化。コクピットにはフィルが乗り込み、操縦できるようになっています。
何をどうしたら無機物を巨大化出来るのか、あの短時間でどうやってロボットを作ったのか、疑問は溢れるばかりですが、まずは超巨大カブトガニを倒さねばなりません。
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特撮のような取っ組み合いを見せる両者。サメ型ロボットは片手を失うなど苦戦を強いられるも、どこから取り出したのかは定かではないですが、巨大日本刀でカブトガニの片手を切り落として互角の戦いを展開。
しかし不慣れな操縦で思うように動けないサメ型ロボットの方が分が悪く、いよいよ窮地に立たされる。しかしここで状況を1ミリも理解していないはずのハンターがパトカーに大量の爆弾を積んで特攻。ギリギリで自身は飛び降り、無人のパトカーをカブトガニにぶつけて大爆発。
最期はエモリウム•クラスター•グラム光線で見事にカブトガニをやっつけたフィル。ようやく田舎町に平穏が訪れました。
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しかし、カブトガニの脅威はアメリカだけにとどまらず、なんと無数の超大型は日本でも大暴れ。改良したサメ型ロボットに乗り込んだフィルはマディからのエールを受け、今日も戦うのだった!
というところで物語は幕を閉じます。
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後半がめちゃくちゃ御都合主義展開なうえ、おそらく作中で一番鍵となるエモリウム•クラスター•グラムが最後まで何だったのかが分からず多少モヤッとはしましたが、勢いがあって面白かったです。
“面白ければ何でもあり”な作風なので玄人向きではないかもですが、エンタメ映画として十分に楽しめるのではないでしょうか。また、作中でも大活躍だったおバカなラドゥが歌う「カブトガニ~カブトガニ~深い海からやってきた~」というエンディングにも作品に対する愛を感じました。
作り手側が楽しんで作っているのが伝わる作品ってやっぱり良いですね!B級感が強めで個人的にはかなり好みでした。オススメです!
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