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富士急ハイランド名物“戦慄迷宮”メディアミックス再び!世界の清水崇が魅せる極上のセンチメンタル•ミスリードホラー「ラビット•ホラー3D」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(761日目)

「ラビット•ホラー」(2011)
清水崇監督

◆あらすじ
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死にかけたウサギを惨殺した幼い弟・大悟と声の出ない姉のキリコは異母姉弟。父は童話作家で「人魚姫」の 絵本作りに没頭している。ある日映画館でスクリーンから飛び出たぬいぐるみのウサギを手に入れた大悟は、夜な夜な巨大なウサギに連れられて、遊園地や廃病院をさまようという幻想に悩まされる。そしてキリコと父も次第にその悪夢に巻き込まれていく…(ラビット•ホラー3DWikipediaより引用)
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『巨大なウサギに連れられて遊園地や廃病院を彷徨う悪夢に悩まされるようになった大悟。姉のキリコは必死に彼を救おうと奔走するがそこには悲しくてそして恐ろしい真実が隠されていた…』

というミスリードからのどんでん返しで最後の最後まで楽しめる王道のジメジメ系ジャパニーズホラーです。

全体的に『これは夢かそれとも現実か』と思わせる幻想的な表現やシーンが多く、嫌な夢を見ているかのような感覚に陥ります。また前半から巧妙なミスリードが存在し、それを後半で一気に回収したうえで非常に後味の悪い着地をしてくるのがなんとも邦画らしいというか、一筋縄ではいかない感じが相当好みでした。

毎晩悪夢にうなされる大悟(映画.comより引用)

今作は世界一のアトラクションを多く備えた大人気アミューズメントパーク•富士急ハイランドにおいて、『世界最長のお化け屋敷』としてギネスにも認定されている超有名お化け屋敷『戦慄迷宮』とのメディアミックス作品です。

所要時間は約50分、コースの全長は900mと規格外のボリュームであまりの怖さにリタイアするお客さんが続出することでお馴染みですが、そんな戦慄迷宮とのメディアミックス作品というと、アジア圏初のデジタル3D実写長編映として有名な「戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH」(’09)が挙げられます。

“清水崇監督作”、“柳楽優弥さん主演”、“色々飛び出す3D”など魅力的な要素が盛りだくさんの切ないジメジメ怨恨ホラーでしたが、なんと今作も監督は「呪怨」シリーズ等でお馴染み“ジャパニーズホラーの巨匠”•清水崇氏です。

さらには今作も引き続き3D映画として上映されたそうで、Panasonicが開発した世界初の一体型二眼式3Dカメラ“AG-3DA1”を初めて用いた映画と言われています。

映画.comより引用

DVDでは当然2Dのバージョンしか見られないのであれですが、3D版は通常の映像よりも奥行きがあり、その上あんなものもこんなものも目の前に飛び出してくる映像だったそうで、当時はハリウッドの3D映画にはない新しいアトラクションエンターテイメントを生み出したと言われていたとのことです。

そんな特殊カメラを用いた撮影監督には数多くのアジア映画を中心に活躍しており、“杜可風”という中国名を名乗っているオーストラリア出身のクリエイターであるクリストファー・ドイル氏が起用されております。

ハリウッドにも進出しており、ナイト・シャマラン監督などとも組んだことがあります。(クリストファー・ドイルWikipediaより引用)

戦慄迷宮を題材とした3Dホラー映画を立て続けに2作も撮ることになった清水崇監督ですが、前作では“友情”、今作では“家族”をテーマにしており、作品のテイストがまったく被っていないのが本当に凄いです。

また、両作の間に繋がりなどはありませんが、今作で主人公姉弟が見に行く映画は前作の「戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH」です。そこで飛び出してきたウサギの人形が本当の人形になって大悟のもとにやってきたことがきっかけで恐ろしい悪夢が始まります。なもんで先に前作を見ておいたほうがより楽しめると思います。

「戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH」より(映画.comより引用)

3つの時系列が入り混じる前作は少々難解だったこともあり、個人的には今作の方がシンプルな構成で好みでしたし、巨大なウサギ人形のビジュアルが絶妙にキモ怖くてとても良かったです。

着ぐるみっぽい見た目をしていますがCGを用いているので、まばたきをしたり、お腹のファスナーから人間を出したりしまったりと、かなり歪な存在となっているのが作品においてとても良いアクセントになっていました。

映画.comより引用

そんな今作は現在配信などはないようです。定番のミスリード系の王道ジャパニーズホラーで個人的には結構好きだっただけに残念です。ですがTSUTAYAなどのレンタルショップだと在庫のある店がわりと多いみたいです。もし気になる方は是非ご利用ください!

https://www.cinematoday.jp/movie/T0010286/photo/T0010286pより引用

◇学校で飼育しているウサギが瀕死であることに気づいた大悟はこれ以上苦しませたくないという思いから石でウサギを惨殺。良かれと思った彼の行動も周囲には理解されず、ウサギ殺しのレッテルを貼られてしまい不登校になる。彼が通う学校の図書室のスタッフとして働く姉のキリコはあることがきっかけで声を発することが出来ず、大悟に対する誤解を解いてあげられないことをもどかしく感じていた。姉弟の母親はすでに他界しており、絵本作家の父親は人魚姫の飛び出す絵本作りに没頭し、子供たちのことなど眼中にない。そんな折、姉弟が見に行った3D映画でスクリーンから飛び出してきたウサギの人形が本物となり、大悟のもとに舞い降りる。しかし、その人形を手に入れてからというもの、彼は巨大なウサギに遊園地や廃病院を連れ回される悪夢に毎晩のように悩まされる。キリコは彼を救おうと奔走するも、ついに大悟はあちら側の世界に連れて行かれてしまう。

というのが今作の冒頭から中盤までの流れです。

主人公のキリコと大悟(映画.comより引用)

今作は満島ひかりさんのホラー映画初主演ということでも話題になったそうですが、他にも父親役には香川照之さん、医師役には大森南朋さん、義母役には緒川たまきさん等、豪華俳優陣が勢揃いしているのも非常に魅力です。

中盤まではウサギのぬいぐるみを手に入れた大悟が悪夢に悩まされ、いよいよそちら側の世界に連れて行かれてしまうという風に展開し、以降はそんな大悟を救うためにキリコが奔走し、真相が明らかとなるという種明かしパートとなります。

※これ以降はがっつりネタバレするのでお気をつけください!

満島ひかりさん演じるキリコ(映画.comより引用)

実は大悟はキリコにしか見えない幻想で、実際には存在していませんでした。

キリコは小学生の時に父親に紹介された再婚相手のキョウコを受け入れられず、遊園地で彼女を突き飛ばしてしまい、激しく転倒したキョウコは打ち所が悪く命を落としてしまいました。

さらにはキョウコのお腹には新たな命が宿っており、そのことを知ったキリコは2人の命を奪ったという事実を受け入れることが出来ず、ショックで声を出すことができなくなり、生まれてくるはずだった大悟という架空の弟の面倒を見ることで心の隙間を埋めていたというわけです。

映画.comより引用

声は失ったままだけど成長と時間の経過に伴い、いつしか大悟の存在は消え、日常生活を送っていたキリコの前になぜか再び大悟が現れます。(これが作品の冒頭の出来事です)

ずっと一緒にいたかのように過ごす2人でしたが、キリコがまた大悟の存在をほのめかすため、父親は度々精神科医に相談をしており、中盤ではキリコに直接「大悟は存在しないんだ」と告げて、強制入院させるにまで至ります。

香川照之さん演じる父親(映画.comより引用)
大森南朋さん演じる医師(映画.comより引用)

しかしここでいないはずの大悟が一人歩きし始め、なんと父親に取り憑き、あちら側の世界に連れて行こうとします。キリコは直感的にあの遊園地近くにある廃病院(キョウコが搬送された病院)に大悟がいると確信し、何かに導かれるかのように病院へと向かいます。

悪夢の遊園地(映画.comより引用)
廃病院で再会する大悟(映画.comより引用)

キリコは廃病院で大悟と再会を果たすも、大悟は「僕を消したいならば刺して」とナイフをキリコに渡します。ここで特になんの葛藤もなく大悟を刺すキリコでしたが、なぜかナイフはキリコに刺さっており、致命傷を負ったキリコはそのまま大悟に螺旋階段から突き落とされて死亡します。

廃病院の外には虚ろな表情の父親がおり、どこからか現れた大悟と手をつなぎどこかへと楽しそうに歩いていくというところで物語は幕を閉じます。

映画.comより引用

正直なところ、ラストの展開が良くわかりませんでした。大悟(というか生まれてくるはずだった弟)はキリコのことを恨んでいたのか、これですっと一緒にいられるということなのか、それともキョウコの怨念がそうさせたのか、意図しているのかもですが落としどころが不明瞭でモヤッとしましたし、人魚姫のラストの展開とのリンクも中途半端に感じました。

また、中盤までがめちゃくちゃ大悟視点なので、それがいきなり後半から「大悟はいませんでした」と言われてもちょっと飲み込みづらかったです。

映画.comより引用

人魚姫と不思議の国のアリスという2つの童話を題材にしているようですが、「ウサギに導かれるままにあちら側の世界に入り込んでしまう」というのはまさに不思議の国のアリスですが、人魚姫の要素がかなり薄かったです。

せいぜい“父親が人魚姫の絵本を作っている”、“キリコが声を失っている”、ラストで螺旋階段から突き落とされた際、キリコは泡となって消える(実際は床に叩きつけられて死亡)”くらいしか人魚姫っぽさがありません。タイトル的にもウサギを推しているのだから人魚姫はちょっと余計というか、無くてもよかったんじゃないでしょうか。

映画.comより引用

怖いシーンはバランス良く織り込まれているため、ホラー映画としては楽しめますが、ストーリー的にはよくわからないところが多々あり、あまり入り込めませんでした。尺も80分程と短めなので登場人物の掘り下げもあまりなく、感情移入するには至りませんでした。世界観はかなり好みだったのでもう少し長尺で見てみたいなと思いました。

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