世界中で愛される名作児童文学を全力おフザケ不謹慎リメイク!ハイジもおんじも大暴れ!エログロバイオレンスB級スプラッター「マッド・ハイジ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(685日目)
「マッド・ハイジ」(2023)
ヨハネス•ハートマン監督
サンドロ•クロプシュタイン監督
◆あらすじ
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チーズ製造会社のワンマン社長にしてスイス大統領でもある強欲なマイリは、自社製品以外のすべてのチーズを禁止する法律を制定。スイス全土を掌握し、恐怖の独裁者として君臨した。それから20年後。アルプスに暮らす年頃のハイジだったが、恋人のペーターが禁制のヤギのチーズを闇で売りさばき、見せしめにハイジの眼前で処刑されてしまう。さらに唯一の身寄りであるおじいさんまでもマイリの手下に山小屋ごと包囲されて爆死。愛するペーターと家族を失ったハイジは、邪悪な独裁者を血祭りにあげ、母国を開放することができるのか!?
(Filmarksより引用)
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『スイス全土を掌握した独裁者によって恋人ペーター、そしてアルムおんじの命までも奪われた少女ハイジ。彼女は愛する者を失った怒りを力に変え、復讐のためにクララたちと共に戦いに身を投じていく』
という清々しいまでに不謹慎かつ方方から怒られてもおかしくない内容ではありますが、映像や音楽、美しい風景、魅力的なキャスト、ハイレベルなアクションとバイオレンスなエンターテイメントに特化した珠玉の脚本とどれをとっても一級品です。ふざけてはいるもののリスペクトを持って真剣に作ったのが分かりますし、なによりも作り手側の“面白いものを作りたい”という熱意がダイレクトに伝わってくる素晴らしい作品でした。
タイトルからもお分かりの通り、原作はヨハンナ・シュピリ氏によって1880年に発表されたスイスの名作児童文学「アルプスの少女ハイジ」です。
日本では1976年に放送された同タイトルのアニメがもっともなじみ深いと思われます。今でもアニメの名シーンを特集する際は必ずと言っていいほど「クララが立った!」のシーンをこすり倒していますし、某家庭教師のCMもシュールで面白いと評判でシリーズ化しているため、世代問わず知らない人はいないでしょう。
そんな世界中で愛され続ける「アルプスの少女ハイジ」の著作権については製作国であるスイスでは1976年にすでに保護期間が終了しており、いわゆるパブリックドメイン化されていることから何の問題もなく、スイスのヨハネス•ハートマン氏とサンドロ•クロプシュタイン氏の幼馴染コンビが監督(脚本も)を務め、同じくスイス出身で経済学や経営学の博士号を取得している超絶エリートのヴァレンティン•グルタート氏がプロデューサーを務め、製作に着手しました。
ヨハネス&サンドロ氏はショートフィルムやMVの分野では評価を受けていたものの、長編映画の監督を務めるのは今作が初であり、おそらくは製作資金集めも難航したのかもしれません。そこで彼らは世界中の映画ファン、そして「アルプスの少女ハイジ」ファンにクラウドファンディングを呼びかけることにしました。
『スイス初のエクスプロイテーション映画!原作はなんとアルプスの少女ハイジです!』
というキケンな匂いしかしないこのクラウドファンディングは怖いもの見たさもあってか世界中で話題となり、最終的には世界19か国538人のファンからおよそ200万スイスフラン(日本円でおよそ2億9千万円)もの資金が集まったそうです。
※エクスプロイテーション映画とは
それだけの資金は集まったものの、製作費何十〜百億円がザラの映像業界でいえば今作は低予算映画に分類されると思います。しかし、先述した通り、遊び心満載の舞台セットの数々に広大な自然の風景、そしてキレッキレのアクションシーンやエログロ満載のバイオレンス描写は圧巻の一言で、1ミリ足りとも予算の少なさや手抜きを感じさせません。
逆に、何十億と使って当たり障りのない内容の箸にも棒にもかからないぬるい映画を作り続けている映像業界は今作を見て喝を入れられて欲しいです。
また、映画の冒頭では『この映画はクラウドファンディングによって制作し、一切のスタジオも企業も一切関与していません。あるのは面白いものを作りたいという気持ちだけです』といった類のテロップが入るなど関係各所への配慮においても抜かりはありません。
そんなこんなで完成された今作はブリュッセル国際ファンタスティック映画祭で初上映され、見事観客賞を受賞。その後も各国で上映される度に話題を掻っ攫っていきました。そして満を持しての日本での公開日は奇しくも宮崎駿御大の「君たちはどう生きるか」と同じ2023年7月14日となりました。
公開前夜祭ではサンドロ監督が
と、御大に対するリスペクトを感じられるコメントを残しています。あと余談ですが当初は「ハイジランド」というタイトルにする予定でしたが、同名の観光施設が法的措置をチラつかせたため、即変更したそうです。
※ちなみに本作は倫理観ガン無視のグロ描写のオンパレードのスプラッター映画なので当然のごとくR18となっております。
現在アマゾンプライムでは期間限定で100円でレンタルが可能です。その他、U-NEXT、楽天テレビ、TELASA、Leminoでもレンタル(399円〜)できます。
まずプロローグとして
という前情報があります。
一体これのどこがアルプスの少女ハイジなんでしょうか。気になるところばかりではありますが面白いので良いと思います。ちなみにアルムおんじ(アルペヒ)はハイジの母親の兄にあたり、デモで命を失ったハイジの両親に代わりハイジを育てることになりました。
という、なんとも穏やかではない展開で中盤へと突入します。これだけ色々起きていますがまだ序盤です。
あまりにも設定がぶっ飛んでいるため、文章だとなんのこっちゃとなりそうなので軽くまとめると
『洗脳効果のあるマイリ社のチーズのみを食べることを強制する独裁政権下のスイスが舞台となっており、マイリ大統領指示の下、一般的なチーズの売買は禁止されていたにも関わらず、ペーターが裏で売り捌いていたため処刑され、ハイジたちも目をつけられてしまった』
という感じです。イカれてますね。
あと作中では乳糖不耐症(牛乳や乳製品に含まれる乳糖を消化吸収できず下痢などの症状を引き起こしてしまう)はチーズによる洗脳が難しいことから処刑、または矯正施設送りとなります。そのため、『もしお近くに乳糖不耐症の国民がいたらLACTOSE(ラクトース)まで連絡を』という張り紙などが街の至る所に貼られています。
といったところでようやく半分くらいです。濃密ですね。
その後、実は生き延びていたハイジは森の女神ヘルヴェティア(妖精みたいな感じです)の下で修行を積んで、愛する者を奪われた怒りを力に変え、魂と一体化したアマゾネスの戦士と化します。ここに来ていきなりのファンタジー展開です。でもここまで好き放題やってるわけですから何でもありです。
その一方で、マイリ社では食べた者の脳を軟化させて殺戮マシーンにしてしまうというとんでもない新作のチーズ•ウルトラスイスチーズが生み出され、マイリはいよいよ世界中を我が物にしようと計画します。
そしてそのまた一方で、実は生きていたアルムおんじは昔の仲間たちを集めてレジスタンスを結成。全てを終わらせるためにとシュヴィング祭の会場へと向かいます。
といった感じにクライマックスへと突入します。
『家族を奪われた主人公が修行を積んで強くなって戦いに身を投じる』という、友情•努力•勝利を掲げるジャンプの王道漫画のような展開をベースにした勧善懲悪ものの映画みたいですね。独裁者のマイリは救いようのないクズの悪人ですし、クノールや他の部下にも温情の余地はありません。それを主人公たちがバッタバッタとなぎ倒していく爽快さもあり、最後の最後まで面白かったです。
最終的に『ホースを肛門に挿入され、大量の生乳を一気に注入されてなぜか顔面が爆発する』というマイリの壮絶な討ち死に姿や、爆発でも死ななかった無敵のアルムおんじがしょぼい腕の怪我が致命傷となり、チーズ工場の爆発に巻き込まれて死亡するという雑な展開を経て、スイスには平和が訪れて物語は幕を閉じます。
ラストは『ハイジとクララがウルトラスイスチーズを載せたトラックを真正面からマシンガンで蜂の巣にする』という爽快感たっぷりの終わり方で、しかも“「ハイジとクララ」ご期待ください”といういかにも続編を匂わせるような終わり方なのでこれは是非とも続編を作っていただきたいですね。
爽快なバイオレンスアクション映画を見たい方には持って来いの作品だと思います。めちゃくちゃ面白かったですし、映画としての完成度が他のB級映画とは段違いでした。オススメです!
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