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無限に続く奇天烈ループ地獄の終着点はどこなのか!?不幸と幸せは表裏一体とは言うけども…「パラドクス」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(724日目)
「パラドクス」(2014)
アイザック・エスバン監督
◆あらすじ
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繰り返される「今日」― 待つのは「死」か、「明日」か。ある日突然、刑事と犯罪者の兄弟、家族4人が出口のない空間に閉じ込められた…。
刑事と兄弟が足を踏み入れたビルの非常階段。そこでは1階を下るとなぜか最上階の9階が出現、何度下っても同じ9階に辿り着いてしまう。一方、家族4人が迷い込んだのは荒涼とした大地が続く中の一本道。真っ直ぐ車を走らせても、どうしても元の同じ道に戻ってきてしまうのだった。そんな中、刑事に足を撃たれたカルロスは瀕死となり、長女カミーラは持病の発作で危険な状態に陥る…。今、体験していることは夢なのか?それとも現実なのか?そして彼らはこのループする空間から無事に脱出できるのか!?(Filmarksより引用)
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『逃走中の兄弟と彼らを追う刑事は1階から9階へと永遠にループする非常階段に、旅行中の一家はどれだけ走っても同じ場所に行き着くハイウェイから抜け出せなくなる。どうあがいても脱することが出来ないこの状況は一体何なのか』
という、いわゆるループ地獄に巻き込まれた人々を描いたシチュエーションスリラーなんですけども、これはちょっとテーマが壮大過ぎるというか、圧倒されっぱなしでした。凄い作品だと思います。
もちろん面白いし、ずっと見てられます。後半で全ての謎を一気に回収する構成も非常に気持ちいいんですけど、少々難解で油断していると何のこっちゃで終わってしまうかもしれません。
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今作はループもののド定番である『その空間からどうやって脱出するのか』はほぼ描いておらず、監督の思想やメッセージみたいなものを『なぜそのようなループが存在するのか』という概念で表現しているので大分エッジが効いており、パンチが強かったです。
個人的には相当面白かったんですけど、「これってどういうことなんだ?」と常に考えながら見るのでかなり体力を持っていかれるので、好き嫌いがはっきり分かれる作品だと思います。
そんな今作の監督•脚本を務めたアイザック・エスバン氏にとってこの作品は初めて手掛けた長編映画となります。ちなみに同氏が2作目に発表した「ダークレイン」(’15)はこの企画の最初の方に視聴したんですけども、あまりに難解過ぎて何を書けばいいのか分からず頭を抱えた気がします。
今見るとまた違った感想とかも出て来るかもですし、『初期に見たけど何にも分からなかった作品、ハマらなかった作品をもう一回見て、改めて感想を書いてみる』みたいなのも時間に余裕が出来たらやってみたいです。
現在アマゾンプライム、hulu、Leminoにて配信中です。
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(映画.comより引用)
◇何かヘマをやらかし警察に追われる身となったカルロスとオリバーの兄弟はマルコ刑事に追い詰められ、非常階段へと逃げ込むがカルロスが足を撃たれ重症を追う。その時、大きな爆発音がしたと思うとなぜか1階の下が9階になっており、どれだけ降りても無限にループしていることに気がつく。必死に脱出の策を練る中で次第に衰弱していくカルロス。彼らを待ち受ける運命とは…
というのが非常階段パートのあらすじで、
◇反抗期のロベルトは新しい父であるダニエルには中々心を開かない。そんな折、一家揃って休暇を利用して元父親トーマスの経営するホテルに行くことになる。母のサンドラ、妹のカミーラと共に4人で車で出発するも、道中でカミーラが喘息の発作を起こしてしまう。予備の吸入器も忘れてしまったことから一度引き返そうとしたその時、大きな爆発音が鳴り響く。カミーラの発作が重症化する中、どれだけ車を飛ばしても永遠に同じ場所に戻ってきてしまう…
というのがハイウェイパートのあらすじです。
※ここからは完全なネタバレというか解説みたいなことを書いていきますのでもしあれだったら、視聴後に読まれた方がいいかもです。あと、大分長いです。すいません。
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正直なところ、私も一回見ただけではこの作品の肝である“ループについて”は完全に理解することができませんでした。
ただでさえややこしいのに、『非常階段パートとハイウェイパートがシンクロし始め、実は全ての事柄は繋がっていたことが明らかとなる』みたいなことまで一気に明かしてくるのでややこしさに拍車を掛けますし、よっぽど熱心に見ていない限りは理解しようとすることも放棄してしまうかもしれません。
なもんで自分なりにかいつまんでまとめてみます。
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そもそも兄弟や一家が巻き込まれたこのループ現象は35年周期で起こるもので、正確に言えば無限ループではありません。発生条件として中年層と若年層の存在が必須であり、さらにはその場で何者かの死(生贄)が引き金となってループが始まります。
35年の間は何をどうあがいたってループを脱することは出来ず、人間の身体にのみ時間という概念が影響して年を取るようです。空間などは24時間でまた元に戻るため、自動販売機やガソリンスタンドの売店の飲食物や自分たちの荷物などは元通りになるため、荷物や食べ物だけが増え続けます。
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そして35年が経過すると中年層(非常階段チームで言うところのマルコ、ハイウェイチームで言うところのダニエル)が年老いて死ぬことによって、中年となった若者(非常階段チーム:オリバー、ハイウェイチーム:ロベルト)がループから解放されるという仕組みになっているようです。
なんですけども、ようやっとループから抜け出しても、新しい名前と記憶を与えられた状態で今度は中年層としてまた別のループで若年層と生贄要員と共に35年を過ごします。そして今度は35年後に自分が年老いて死ぬ側となって、中年層にヒントを与えて死んでいくというわけです。
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なのでダニエルは元はルーベンという名前の少年で、10歳の時に水上の筏において友人の死によってループが発生。35年後に船頭の死によってループから抜け出しましたが、今度はダニエルという名前と記憶を与えられて、あのハイウェイのループに突入しました。
そしてロベルトは中年層のダニエル、そして妹の死によってハイウェイでループが発生。35年後にダニエルの死によってループを抜け出すも、今度は警察官マルコとしての記憶を与えられて、あの非常階段パートに入っていくという流れになっています。
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ということで、1回目は抜け出せるっちゃ抜け出せるけどまたすぐ次のループに入るため、おそらく一度このループに入った時点で死ぬまで抜け出せないんだと思われます。
2回目のループに入る時点で1回目のループのことや自分の名前や記憶を全て忘れてしまい、死の直前に1回目のループや自分自身のことを思い出します。そして、これから2回目のループに入る元若年層に対して「名前を忘れるな」、「車に乗るな」、「エレベーターに乗るな」等を必死に訴えるものの、全ての運命が何か大きな存在によってもう既に定められています。
そのため気付けば以前の記憶を全て失い、導かれるままにパトカーがあれば乗っちゃいますし、不自然に存在するエレベーターにも乗るし、ホテルマンの制服があれば着てしまいます。こうして2回目のループがスタートします。
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すいません。まだもうちょっと続きます。
じゃあ“このループには一体何の意味があるのか”というところになってくるんですけども、これがちょっとスピリチュアルというか、監督の思想みたいなものがテーマになっているようで、『現実世界にいる自分たちにエネルギーや幸せを与えるため、このループ空間で肉体と感情を酷使している』というのが作中で明かされております。
そのため、このループ空間は“現実の自分たちのための精神世界”とも言えるのかもしれません。この35年ループの中で若年層は必死に生きようと抗い続けて、その活力が現実の若い自分に対する幸福やエネルギーへと繋がり、中年層は全てを諦めて自堕落に時を過ごすことで現実の老いてゆく自分への不幸に繋がるんだと思われます。なもんで“35年ループを2回繰り返すこと”そのものが現実の人生とリンクしているのではないでしょうか。
『若者は自分の人生を謳歌し、時間を有意義に使うけど、年を取るとどんどん保守的になり、過去に縋ってしまう』という人間の在り方を示しているのかもしれません。そして、それと同時に『自分の幸せは誰かの不幸の上に成り立っている。つまり幸せと不幸は表裏一体』も今作の大きなテーマの一つだと思われます。
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もちろんこのループにいる人達も必死に抗うわけです。だからこそ2回目のループで死にゆく直前にこのループの仕組みや「記憶を失うな」など忠告をするんですけども、結局は運命に抗うことは不可能で、手元の赤い手帳に書いてあるあらすじ通りに行動してしまいます。
あと、ハムスター(ガメン)の存在や爆発音に関しては申し訳ないんですけども、最後まで分かりませんでした。有識者の方がいらっしゃいましたらば是非御教示ください。
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これを初見で完全に把握できる人っていないんじゃないですかね。これが果たして正しいのかも不明ですし、難解な映画は見ていて疲れるのでやっぱり私はどうしようもないB級映画の方が好みです。
自分の内容把握具合を整理するために長々と書いてしまいましたが、今作を視聴して「良くわかんねぇや」と思った方々にとって少しでもお役に立てれば幸いです。
☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。
渋谷裕輝 公式HP↓