このタイトルが素晴らしい!ホラー映画の一つのジャンルを確立させた不朽の名作「ローズマリーの赤ちゃん」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(646日目)
「ローズマリーの赤ちゃん」(1968)
ロマン•ポランスキー監督
◆あらすじ
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売れない俳優ガイと妻ローズマリーは、マンハッタンの古いアパートに引っ越してくる。そのアパートは以前から不吉な噂がささやかれていたが、若い2人は気に留めることもない。ある日、隣人の老夫婦の養女が不可解な飛び降り自殺を遂げる。その後、隣人夫婦はローズマリーに、養女が生前に身に着けていたペンダントを贈る。やがて奇妙な悪夢とともに妊娠したローズマリーは、次第に情緒不安定に陥っていく。(映画.comより引用)
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『妊娠に伴う不安やストレス』という日常的なテーマに悪魔崇拝やカルトという要素を上手く絡めたサスペンスホラーであり、最後の最後まで展開が読めず、とても面白かったです。
原作はアメリカの小説家•劇作家のアイラ・レヴィン氏による同名小説です。同氏は時事ネタやその時々の社会問題を織り込んだサスペンス作品を得意としており、今作に関しては1950〜60年代に問題となったサリドマイド事件を取り入れていると言われています。
この小説の内容に甚く惚れ込んだ映画監督•プロデューサーのウィリアム•キャッスル氏は今作の映画化、そして自らが監督を務めることを熱望。しかし、自身が監督を務めた作品にショック死保険をかけたり、上映中の劇場内に光る骸骨を出現させたり、客席に微弱な電流を流して観客を驚かせたりと、映画プロデューサーとしては成功を収めていたものの、あまりにもそのやり口がB級過ぎるため、製作元のプロデューサーがストップをかけました。
結局、ウィリアム•キャッスル氏は製作のみを担当、そして監督にはロマン•ポランスキー氏が抜擢されました。
ポーランドで映画監督のキャリアをスタートさせたポランスキー氏は長編映画監督デビュー作「水の中のナイフ」(’62)でアカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされるなどその非凡さを遺憾なく発揮し、その後はイギリスに活動の場を移し、様々な賞を獲得。そしてさらなる活動の場を求めて満を持してのアメリカ移住。監督を務めた今作はアカデミー賞の助演女優賞を獲得するなど世界中から評価され、ポランスキー氏は確固たる地位を手にしました。
現在U-NEXTにて配信中のほか、アマゾンプライムにて9月末まで99円でレンタルが可能です。私は例によって浜田山のTSUTAYAでレンタルさせていただきました。
◇不吉な噂が絶えない古アパートに引っ越してきた若い夫婦。売れない俳優のガイと妻のローズマリーは慎ましくも幸せな日々を過ごしていた。しかし、隣人の養女の不審な自殺を皮切りに次々と不可解なことが起こり始める。そんな折、ローズマリーは妊娠が発覚したものの、その日に見た恐ろしい悪夢、どこか様子がおかしい夫、度を超えたお節介な隣人、怪しい治療法を進める産婦人科医たちによってノイローゼは日に日に強まり、異常なまでに痩せ衰えていく。誰も信じることができなくなった彼女の運命は…
という、一人の女性を取り巻く絶望的な運命を描いております。
ここからは完全なるネタバレになってしまいますが、彼女の夫も、お節介な隣の老夫婦も、産婦人科医も全員悪魔崇拝者で、彼女は悪魔の子を宿す候補者として選ばれていました。隣人の養女が元々は候補者でしたが、自ら命を絶ってしまったことでローズマリーにお鉢が回ってきたというわけです。
ローズマリーが人ならざる者に犯される悪夢を見て不安を口にし、日々痩せ衰えても、どこか他人事だった夫。独自の調合を施した自家製の薬草ジュースを飲ませてきたり、彼女の全てを支配しようとする隣人。本来であれば必要な薬を飲むことを禁止する等の怪しい治療法を頑なに推し進める高名な産婦人科医も、彼女を取り巻くほとんどの人間がグルでした。
彼女がどれだけノイローゼになっても周囲の人間がまったく取り合わないので、見ているこちら側も『無事に産まれてくるだろうか』という不安から来る被害妄想であって、「私の周りにいる人たちは悪魔崇拝者だ」や「自分のことを監視している」等の発言も、彼女がそう思っているだけのことであって、『本当は何にも起きてなかった』というオチなのかなと思っていました。
ですが!
先述した通り、周囲の人間は揃いも揃ってバキバキの悪魔崇拝者ですし、彼女の赤ちゃんは残念ながら悪魔の子として育てられることになります。映りはしないもののおぞましい姿であることが明らかな悪魔の子を我が子として育てていくローズマリーはどんな気持ちだったのでしょうか。
「ローズマリーの赤ちゃん」というタイトルにシンプルながら深みを感じます。
『全ては主人公の妄想や幻覚であって実際は何もなかった』または『その全てが実際の出来事だった』
というホラー映画における一つのジャンルを確立した作品と言っても過言ではないと思います。今ではそこまで珍しいオチではありませんが、当時は相当斬新だったのではないでしょうか。
余談ですが、この作品には曰く付きのエピソードが数々存在します。
いくつかご紹介しますと、
•作品の舞台となるアパートの外観はジョン・レノン氏とオノ・ヨーコ氏が住んでいたことで有名なダコタ・ハウスで、後にこの建物の前でジョン・レノン射殺事件が起きた。
•製作を担当したウィリアム•キャッスル氏は悪魔崇拝者を名乗る人物から『苦痛を伴う病気を発症するだろう』という内容の手紙が送られた後、腎不全を患い、回復するまでにかなりの時間を要した。
•今作の公開から半年後の1968年の12月、屋外パーティーにて、音楽を担当したクシシュトフ・コメダ氏は脚本を担当したマレク・フラスコ氏にふざけて突き飛ばされた結果、崖から転落して昏睡状態に陥る。脳血腫を起こしており、転落してからおよそ5ヶ月後に死亡。さらにその2ヶ月後、ドイツに戻っていたフラスコ氏は謎の死を遂げた。(フラスコ氏に関してはおそらく自死ではないかと思われます。)
•公開からおよそ1年後、ロサンゼルスのポランスキー監督の自宅にチャールズ•マンソンのカルト教団が押し入り、妻であるシャロン・テートやスタイリスト、友人などを惨殺した「テート・ラビアンカ殺人事件」が起こる。監督自身は脚本執筆のためロンドンにおり被害は免れたものの、この事件に大変ショックを受け、鎮痛剤の投与が必要なほどに憔悴しきっていた。
•この時、妻のテートは劇中のローズマリーと同じく妊娠八ヶ月だった。
※この事件に関しては人違いによる殺人事件であったことが後に明らかになります。事件が起こった邸宅はポランスキー監督が住む前にミュージシャンのテリー・メルチャーが住んでいました。過去にミュージシャン志望だったチャールズ•マンソンがメルチャーのもとを訪ねたものの、プロになれなかったことを逆恨みして凶行に及んだそうです。
チャールズ•マンソンについて詳しく知りたい方はこちらから↓
偶然が重なっただけなのかもですが、こうして列挙してみると本当に悪魔崇拝者による呪いの類なのではと考えてしまいます。こういったバックボーンを知った上で鑑賞すると映画がより楽しめるかもしれません。50年以上前の作品ですが古臭さなどは一切無く、とても面白かったです。オススメです!
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渋谷裕輝 公式HP↓