見出し画像

あらしのよる、落ち目のレスラー兄弟がゾンビ相手に大暴れ!愉快痛快アクションコメディホラー「バトルロワイヤル•オブ•ザ•デッド」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(769日目)

「バトルロワイヤル•オブ•ザ•デッド」(2021)
マックス・マーティーニ監督

◆あらすじ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
落ち目のプロレスラー、マンソン・ブラザーズと人気レスラーの試合が開催される。だが、突然の暴風雨に見舞われ、観客とレスラーたちは会場に閉じ込められてしまう。すると、得体の知れない筋肉増強剤を使用したレスラーたちに、次々と異変が起こり…。(Filmarksより引用)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『中国製の筋肉増強剤によってレスラーが次々とゾンビ化してしまう!落ち目の元人気レスラー•マンソン兄弟はゾンビが蔓延るプロレス会場から生きて脱出することが出来るのか!?』という、王道のB級アクションコメディホラーです。

ゾンビになる設定が非常に強引なうえに局所的にバチボコに怒られそうですし、本題(ゾンビパニック)に入るまでがまぁ長いです笑

90分程の作品なんですけども、本題のゾンビパニックが巻き起こるまでに60分を要します。本来であればここが大きなマイナスポイントになりそうなものですが今作はこの前フリ部分が普通に面白いです。

中国製であることをゴリゴリにいじっています。(https://youtu.be/ASEtdQvh4JE?si=1xtJj6YRA1A5YEKPより引用)

基本的にはプロレスラーのマンソン兄弟を軸にストーリーが展開するんですけども、迫力満点のガチすぎる試合、控室でのブック(試合の筋書き)についての打ち合わせ、過去の栄光に縋る現状、筋肉増強剤の取り引き等など、“レスラーに密着したドキュメンタリー映画”を見ているかのようで普通に楽しめます。

本当にどうでもいい会話ばかりしますし、無くてもいいシーンもたくさんあります。なんですけども、それが逆にリアルというか、「ドキュメンタリーって全然どうでもいい会話とかやり取りとかあるしなぁ」と勝手に好意的に解釈して飲み込んでしまうため、ずっと見ていられます。

試合も本格的です。(https://youtu.be/ASEtdQvh4JE?si=1xtJj6YRA1A5YEKPより引用)
盛り上がりを見せる場内や観客の様子もかなり良かったです。(https://youtu.be/ASEtdQvh4JE?si=1xtJj6YRA1A5YEKPより引用)

おそらくこれは製作陣も意図していなかったんじゃないでしょうか。シンプルに中盤までの脚本や構成、そして時間配分がいまいちなだけなんだと思いますが、奇跡的に面白くなってます。俳優陣が全員ガチですし、途中でほんのちょっとだけあるゾンビのシーンもクオリティが高いからこそ、なんとかキープ出来ていたのかもしれません。

最初にゾンビになる闇ブローカーのおじさん(あだ名はデカチン)(https://youtu.be/ASEtdQvh4JE?si=1xtJj6YRA1A5YEKPより引用)

あとこれは本当に好みというか、個人的な意見なので全然読み飛ばしてもらって大丈夫なんですけども、今作は最後の最後まで何を描きたかったのかが不明瞭で、絶妙に盛り上がりそうで盛り上がらないし、登場人物たちの目的も曖昧に感じました。また『嵐だから外に出られない』という設定もいまいち活きていませんでした。

例えばテレビやラジオで「街中がゾンビで溢れかえっている」みたいな報道があれば別なんですけど、避難勧告が出るほどの嵐だから外を歩いてる人なんていないでしょうし、そもそもゾンビ化の原因である筋肉増強剤を使用しているのはレスラーだけなので会場内でパンデミックが起こるのは分かりますが、ラストシーンで屋外に大量のゾンビがいるのは少々矛盾している気がします。

『騒動の途中で嵐は止み、ゾンビは会場から出て被害を拡大させていた』と考えることもできますが、ならばせめてそういうシーンを少し入れたほうがいいと思います。

この絶望しかないラストシーンは嫌いじゃないんですけど、嵐の後感がまったくないのが些か気になりました。(https://youtu.be/ASEtdQvh4JE?si=1xtJj6YRA1A5YEKPより引用)

またレスラーと同時に観客が突如ゾンビになるのも謎でした。客席で見ていただけで噛まれたわけでもないし、増強剤を打ったわけでもないのにゾンビ化するのは流石に勢いだけで展開させ過ぎだなと思いました。

もう少し状況を整理して

『嵐で外には出られない。ゾンビがいるのは会場だけ。マンソン兄弟は彼女や仲間と協力してこの危機を乗り切ろうと奮闘する』

という具合にシンプルにまとめてストーリーを展開させたほうが、何を見せたいのかは明確になる気がします。そこに兄弟の絆や仲間の死などを織り込んで、従来の力押しのアクションコメディに振り切れば相当面白くなったのではないでしょうか。

対戦相手のダッチもこっそり増強剤をつかっていました。(https://youtu.be/ASEtdQvh4JE?si=1xtJj6YRA1A5YEKPより引用)

基本的にはコメディなので上記のような部分もそこまで気になりませんし、今のままでも全然面白いです。ですが、いまいち何をしたい話なのかも分からないですし、主なゾンビパニックのシーンも後半だけなのでホラー映画として見ると少々物足りないし、あまり記憶にも残らないです。

そんな今作で監督を務めたマックス・マーティーニ氏は「プライベート・ライアン」(’98)や「パシフィック・リム」(’13)、さらには数々の人気海外ドラマにも出演している超売れっ子俳優です。

映画.comより引用

監督としては2019年に長編映画「SGT.Will Gardner」(日本未公開)でデビューしており、今作が2作目となります。レスラー役には元UFC(アメリカを拠点とする総合格団体)の選手を起用する等、かなりのこだわりを感じますし、もしかしたらプロレス好きの一面があるのかもしれません。

そんな今作は現在Amazonプライム、U-NEXTにて配信中です。大盛り上がり!とまではいかないまでも、でっかいおじさんたちがゾンビ相手に大暴れする画は相当面白いです!プロレス好きの方もきっと楽しめると思います。

Filmarksより引用

◇父親が所有するコミックから気になる一冊取り出し、どんな話なのかを尋ねる息子。父親は得意気に伝説が誕生した日の話だと教え、息子は目を輝かせてコミックに目を落とす。

かつては人気レスラーとして活躍するも現在は落ちぶれ、場末の会場でヒールレスラーとしてほそぼそと活動するマンソン兄弟。そんな彼らに久々のチャンスが訪れる。ハロウィンの日に大きな会場で人気レスラーとマッチメイク。試合当日、避難勧告が出るほどのモンスター級の嵐に見舞われるも会場は超満員。いよいよ兄弟が栄光を取り戻す時…と思われたが、中国製の筋肉増強剤によってレスラーたちが次々とゾンビ化。会場中をゾンビが跋扈する異常事態!はたしてマンソン兄弟はこの窮地を脱することが出来るのか!?

というのが今作の細かめのあらすじです。

主人公のマンソン兄弟。兄のスカル(右)と弟のストーン(左)
(https://youtu.be/ASEtdQvh4JE?si=1xtJj6YRA1A5YEKPより引用)

『マンソン兄弟のことを描いたコミックを父親が息子に見せる』という始まり方からマンソン兄弟たちのパートに入っていく構成は個人的にはかなり好きでした。

正直なくても成立しますし、その親子のシーンが作中で特段機能しているわけでもないです。ですが緩急も付きますし、途中で息子が「すごい!このあと2人はどうなるの?」みたいな感じで一旦フラットな状態に戻してくれるため、ストーリーテラーに近い役割になっていると思います。

欲を言えば、実は父親がそのマンソン兄弟のパートに登場していたキャラクターの一人で、『このあり得ないゾンビパニックが実は本当の話だった』みたいなのをほのめかす終わり方だったらもっと締まった気がします。

威勢がいいのは口だけでゾンビを見た瞬間失神したアイルランドのギャング(画像の倒れてる人)が実は生きてて、後に語り部となってこの漫画を生み出したみたいな設定とかも面白いかもです。(https://youtu.be/ASEtdQvh4JE?si=1xtJj6YRA1A5YEKPより引用)

言うまでもなくマンソン兄弟を筆頭にレスラー役の人達が全員ガチすぎるので、戦闘シーンはべらぼうに大迫力です。しかも「おそらく日常的にステロイドとかを使って身体を仕上げてるな」みたいなレスラーもいるので、特に脇役などの掘り下げはないんですけども勝手に色々想像できるのが楽しいです。

このゾンビの筋肉が人工的というか綺麗過ぎて、たぶんですけどステロイドボディだと思います。違ったらマジですいません。(https://youtu.be/ASEtdQvh4JE?si=1xtJj6YRA1A5YEKPより引用)

先述した通り、本題のゾンビパニックに入るまでは基本的にはプロレスラーのドキュメンタリーを見るスタンスの方が楽しめと思います。じゃないと「ゾンビ映画なのにゾンビ出ないじゃん!」とむかっ腹が立ってしまうかもしれません。

開始から60分でゾンビが登場するのは2回だけです。あとはずっとプロレスラーのわちゃわちゃです。それが今作「バトルロワイヤル•オブ•ザ•デッド」です。

マンソン兄弟の兄•スカル。メキシコ訛りが抜けず、卑猥な言い間違いを連発します。(https://youtu.be/ASEtdQvh4JE?si=1xtJj6YRA1A5YEKPより引用)
マンソン兄弟の弟•ストーン。おバカな兄の手綱をしっかり握っています。(https://youtu.be/ASEtdQvh4JE?si=1xtJj6YRA1A5YEKPより引用)

しかし残りの30分はまさに怒涛の展開で、プロレスラーも観客も次々とゾンビになり、会場は地獄絵図と化します。先述した通り、このゾンビパニックシーンが出色の出来で、「なぜこれをもっと最初からやらないのだろう?」と思ってしまうところではありますが、監督的にはプロレスの方をメインに描きたかった可能性もありますので、そこは好き好きです。

ゾンビになる過程なんかも相当良かったです。(https://youtu.be/ASEtdQvh4JE?si=1xtJj6YRA1A5YEKPより引用)

そして主人公のマンソン兄弟ももちろん良いキャラなんですけども、ライバルのカーソンもいけ好かない嫌なヤツとして作中でしっかり機能していました。

自分が生き残ることしか考えておらず、感染している可能性が少しでもある者はなんの躊躇いもなく殺害するなどかなりのクズとして描かれています。

元々マンソン兄弟とは犬猿の仲で、スカルの彼女がゾンビと接触しただけでおそらくは感染していないにも関わらず射殺するなど兄弟のヘイトを溜め続けており、挙句の果てには会場にいる全員(生存者含む)を殺して、ゾンビパニックを収束させた英雄になろうとするなど非常に自分本位な男です。

大金持ちのスターレスラーでマンソン兄弟を見下すカーソン(画像左から2番目)(https://youtu.be/ASEtdQvh4JE?si=1xtJj6YRA1A5YEKPより引用)

クライマックスで兄弟に秒殺されるシーンは爽快感すらありますし、その後のラストシーンも絶望感が漂うものの、その中にしっかりと希望があって良い終わり方でした。最後は父親が息子にマンソン兄弟シリーズの続編を読ませようとするなどマンソン兄弟が生きていたこと、本当にここから伝説が始まったことをほのめかしており、これまたすごく良かったです。

ホラー映画としてのパンチは少々弱めですが、十分楽しめると思います!

☆ホームページ開設しております!
もしよかったら覗いてやってください。

渋谷裕輝 公式HP↓

いいなと思ったら応援しよう!