昼は自動車教習指導員、夜はカリスマ霊能力者!二足のわらじを履くおばちゃんが恋に仕事に悪魔退治と大忙し!「ゴー!ストップ•バスターズ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(721日目)
「ゴー!ストップ•バスターズ」(2019)
マイク•アハーン監督
エンダ•ラウマン監督
◆あらすじ
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ローズは幽霊と交信して、成仏させることができるゴーストバスター。でも、事情がありその能力を封印している。ある時、亡き妻の亡霊に悩まされているマーティンにゴーストバストを依頼されるが彼女は断った。しかし、マーティンの娘が悪魔召喚のための生贄の処女に選ばれたため、ローズたちは悪魔を崇拝するロックスターや地獄から召喚された悪魔と戦うことになる!(amazing-dc.jpより引用)
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『元凄腕霊能力者で現在は自動車教習所の指導員として働く主人公は悪魔召喚の儀式に巻き込まれた知人の娘を救うため、再び霊能力を解放させて強大な悪魔に立ち向かう』という、シンプルな構成かつ随所で笑わせてくれる秀逸な脚本が光るアクションコメディホラーです。
最近アマゾンプライムでも配信が始まり、そのバカ過ぎるタイトルに惹かれて視聴したんですけどもこれは中々に面白かったです。地味なおばちゃんが主人公ですし、その他の出演者にも正直なところ華がないんですけども、下ネタ多めのコメディテイストが相当ハマっており、中でも引きのお笑いが素晴らしかったです。
意外と言ったら失礼かもですが、映像やカット割り、BGMのセンスが良く、映像作品としてのそもそものクオリティが非常に高いです。怖さはまったく無いので、ホラー映画として見るというよりかはアクションコメディ映画を見たい時にちょうど良い映画かもしれません。
そして!
まずは「ゴー!ストップ•バスターズ」という、どう考えても「ゴーストバスターズ」(’84)を意識しているタイトルが気になるところではありますが、今作の原題は「Extra Ordinary」です。“並外れた”とか“非凡な”という意味で、スラングだと“最高!”みたいな意味もあるみたいです。なもんで今回もまた例によって日本の配給会社が完全にやってます。
内容は「ゴーストバスターズ」と同じくコメディテイストで悪霊や悪魔退治をメインに描いていますし、作中にも「ゴーストバスターズ?」、「読んでない」というセリフのやり取りがあるので作品自体も多少は意識しているのかもしれません。だとしてもこのタイトルはかなり強烈というか、そのまま過ぎるというか、とにかくインパクト大ですね。
実際の内容がかなり見応えがあるうえにしっかり楽しめるので、ただのパクりのおバカ映画だと思われてしまうのは勿体ないですし、このタイトルだと肝心の内容が伝わってきません。ですが、私のようにこのタイトルだからこそつい興味をそそられて手にとってしまう人間も相当数いるでしょうから、この『邦題どうするか問題』は困窮を極める永遠の議題なのかもしれません。
今作の監督を務めたマイク•アハーン氏、エンダ•ラウマン氏は基本的にコンビでアイルランドを拠点に活動しているようで、今作の脚本も2人で手掛けております。
それ以外の情報はほとんど出てきませんでしたが、今作の公開が2019年ということを考えると、他の作品が日本に入ってきてないだけかもしれません。今作が非常に私好みのコメディホラーだったので他の作品も今後日本に輸入されることを願ってます。
現在アマゾンプライム、U-NEXTにて配信中です。
◇凄まじい霊能力を持ちながらもあることがきっかけでその能力を封印し、自動車教習所の指導員として働くローズ。しかし彼女が凄腕の霊能力者であることは口コミで知れ渡っており、指導員としてでははなく、霊にまつわるお悩みが絶えず寄せられる。そんな折、元妻の霊からのモラハラに悩むマーティンに恋をしたローズは彼の依頼を受けることに。その一方、落ち目のロックシンガーであるウィンターは再起をかけて悪魔と契約するために処女を生贄に捧げようとしており、なんとマーティンの娘•サラがその儀式に巻き込まれてしまう。ローズは己のトラウマを乗り越えて、恋、仕事、そして悪霊退治に全力投球!悪魔を打ち倒し、無事サラを取り戻すことができるのか!?そしてマーティンとの恋の行方は…
というのが今作の細かめのあらすじです。ちなみに実話に基づいたお話だそうです。本当でしょうか。
ストーリー自体はシンプルかつコメディテイストなので非常に見やすいですし、主人公ローズのバックボーンがしっかり描かれているので感情移入が出来ますし、『彼女が己のトラウマと向き合い、そして乗り越える』という流れがストーリーに上手く組み込まれているのがとても良かったです。
実は彼女の父親であるヴィンセントも過去に霊能力者として活躍しており、娘であるローズの霊能力者としての素質を高く評価していました。しかし父親からの過度な期待がプレッシャーとなっていたローズはある依頼で除霊に失敗。霊が憑依したヴィンセントは運悪くトラックに撥ねられて死んでしまいました。自分のせいで父親が死んでしまったと悔やむローズは成人してからも失敗することを極度に恐れ、霊能力を封印してしまったというわけです。
その後は自動車教習所の指導員として平凡な暮らしを送っていたものの、霊のトラブル絡みで相談されることが多くて辟易していました。
一方、マーティンは亡くなった元妻ボニーの霊からのモラハラとも取れる行動に日々悩まされており、それを見かねた娘のサラがローズの存在を教え、相談するに至ったんですけども、この元妻の霊によるポルターガイスト現象も非常に面白かったです。シンプルに皿が飛んでくるみたいなヒステリックなやつもありつつ、「税金支払い」とか「犬に寄生虫」とかマーティンたちが忘れていることや気づいていない妙に生活感のあることを鏡の曇りやトーストの焦げ目を利用して伝えてきます。
こういうボニーによるアクションや物語後半でマーティンに憑依してローズに悪態をつくみたいなシーンは非常に面白いんですけど、いまいちボニーの人間性が分からず、その存在が最後まで中途半端に感じました。ボニーはマーティンからプレゼントされた木製の壁掛け時計が落下して頭部に直撃したことで死亡したので彼のことを恨んでいるのか、それともそもそもそういうキツい性格だからモラハラ的なポルターガイスト現象を起こしているのかが不明瞭でした。おそらく後者なんですけど、もしそうなら死因はもっとくだらないかつマーティンは関係してなくて良い気がしますし、性格キツいけどちゃんと夫のことを思ってる鬼嫁みたいなキャラの方が入って来やすい気がしました。
この『モラハラ鬼嫁のボニーを成仏させる』よりもストーリーの主目的である『悪魔召喚の儀式に巻き込まれたサラを助ける』にもっと比重を置いたほうが映画としては見やすかったのではないでしょうか。あと、サラに掛かっている呪文を破るためにはエクトプラズム(霊が成仏する時に落とす粘液)を7つ集めて顔に塗るという展開があまり活きていないようにも思いました。
結局集めきれてないですし、『依頼者のもとに行き、マーティンに霊を憑依させて、それをローズが成仏させるとマーティンがエクトプラズムを吐き出す』という同じパターンの繰り返しなので、これが中盤にあることで少々中弛みしているように感じました。
今作のヴィランとなるロックシンガーのウィンターと妻のクローディアがギャグ担当としても十分に機能しているので、もっと対ウィンターを中心に描いた方がアクション映画としてもコメディ映画としても面白くなったような気がします。処女を見つける杖を用いて街をうろついたり、霊に取り憑かれて空中浮遊するサラを捕まえて車で走ったりと笑いの起点となるのは基本的にウィンター回りです。
クライマックスの悪魔召喚からの最終決戦も見応えがあるのでこっちをもっと見せて欲しかったです。『生贄に捧げたサラが実は経験済みだったので悪魔のアスタロスがブチギレながら登場。実はローズが処女であることが発覚したので代わりに生贄にしようと地獄へ引きずり込もうとする』というパワープレイかつバカ過ぎるクライマックスは非常に面白く、さらにはズルズルと引っ張られるローズが「処女じゃなくなればいいんだ!」と地獄に続く穴までの数メートルでマーティンと強引に行為に及ぼうとするのもくだらなくてよかったです。
なぜか最終決戦に付いて来たローズの妹で妊娠中のセイラはその場で出産しちゃうし、セイラの夫は叫んでばかりで一切活躍せず、エクトプラズムを集めたくだりは意味なしで、なぜかサラは普通にピンピンしてるしで、めちゃくちゃカオスな終盤なんですけどコメディなんで全然ありでした。欲を言えばもっと笑いに振り切った方が面白いようにも思いましたが、そこは好き好きだと思います。
終わり方もらしさ全開でとても良かったです。あんなこと言っといて結局仲良く三人で暮らすんだろうなと思える良いエンディングでした。肩の力を抜いて見ることができますし、下ネタが嫌いじゃなければ楽しめる作品だと思います。
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