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ジェームズ•キャメロン監督の黒歴史!経歴から消したがってる幻の監督デビュー作「殺人魚フライングキラー」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(666日目)
「殺人魚フライングキラー」(1981)
ジェームズ・キャメロン監督
◆あらすじ
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南海に浮かぶ美しいリゾート島、そこはまさにパラダイス。しかしある日、肉はおろか、骨までも食いちぎられたダイバーの死体が発見される。不審を抱いたダイビング・インストラクターのアンは調査に乗り出すが、そこには恐ろしい事実が…。かつてベトナム戦争時に軍が秘密裏に開発した戦闘用殺人魚のしわざだったのだ!そして、毎年恒例の祭りの到来とともに、殺人魚の大群もまた島に襲いかかる。地獄と化したパラダイスを救う道はあるのか!(sonypictures.jpより引用)
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「グレムリン」(’84)でお馴染みのジョー・ダンテ監督が手掛けたモンスターパニック映画「ピラニア」の続編にあたります。
ですが、舞台や登場人物、時系列など前作とはまったく関連性がなく、殺人魚(ピラニア)が登場する以外は完全に別物なので今作から見ていただいても理解度に大差はありません。
なもんで原題は「PIRANHA Ⅱ: Flying Killers」ですが、邦題だと「殺人魚フライングキラー」という別物感が漂うタイトルになっています。
『空中を飛び交うハイブリッド殺人魚が南海のリゾート地を血に染める』という、いかにもなB級パニックホラーで、前作同様かなりの低予算で製作されました。
余談ですが、今作は監督としてクレジットされているジェームズ・キャメロン氏がプロデューサーと意見が対立し撮影中に解雇という憂き目に遭うなど、完成までにかなりの紆余曲折があったそうです。
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後に「ターミネーター」(’84)、「タイタニック」(’97)、「アバター」(’09)など数々の名作を世に出す稀代のヒットメーカー(ジェームズ・キャメロンWikipediaより引用)
製作が難航した経緯を順序立てて説明していくと
前作で監督を務めたジョー・ダンテ氏が新作「ハウリング」の製作に取り掛かっていたため、彼とも親交があったミラー•ドレイク氏が監督、そしてプロデューサーはイタリアのオヴィディオ•G•アソニティス氏が務めることになりました。
しかし、理由は定かではありませんが撮影に入る前にアソニティス氏がドレイク監督を解雇。そして特殊効果を担当する予定だった若き日のジェームズ・キャメロン氏に白羽の矢が立ったというわけです。
当時まったくの無名だったキャメロン氏抜擢の裏には元日活スター女優の筑波久子氏(チャコ•ヴァン•リューウェン名義)の存在があったそうです。
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24歳で芸能界を引退し、アメリカで映画製作に携わっていた筑波氏。彼女がプロデューサーを務めた前作「ピラニア」においては無名のジョー・ダンテ監督を抜擢。製作費100万ドルの低予算にも関わらず、興行収入4000万ドル超えの大ヒットを飛ばし、彼女はハリウッドの一流プロデューサーの仲間入りを果たしました。
そして満を持しての続編となる今作でもプロデューサーとして参加。前述の経緯から当時28歳のキャメロン氏を監督に大抜擢しました。
おそらくですけど、彼女の中で「キャメロン氏を第二のダンテ監督にしたい」という思惑があったのかもしれません。前作で自分が抜擢した無名監督が低予算で大ヒットを飛ばして自分の評価もうなぎのぼり。今作でも同じ絵を思い浮かべていたのかもしれませんが二匹目のどじょうとはなりませんでした。
そんなこんなでいきなり監督に抜擢されたキャメロン氏でしたが、筑波氏曰く
「彼は堂々としてましたね。最初から現場に溶け込んでました。自信家だったんでしょう。声も大きかったですよ」
とのことで、この頃から大器の片鱗を見せていたのでしょう。
しかし、いざ撮影が始まると予算の都合もあってか、スタッフはほぼ全員がイタリア人で固められており、現場で英語を話せる者がほぼいないという悪条件の中で撮影が始まりました。(イタリアの出資で製作されたためだと考えられます)
撮影が始まってからもキャメロン氏とアソニティス氏は作品内容を巡って幾度となく意見が対立。さらには予算やスケジュールの逼迫、スタッフの多くが英語での意思疎通が不可能、出演者に衣装を自前で用意してもらう、撮影に使用する殺人魚の模型があまりにも酷い出来で仕方なくキャメロン監督自ら徹夜で作り直すなど、あまりにも可哀想過ぎる環境での撮影が続きました。
結局、撮影から二週間程でキャメロン氏はアソニティス氏から解雇を言い渡され、その後はアソニティス氏が監督を務めて完成に漕ぎ着けました。
完成した本作を見たキャメロン氏はそのあまりの酷い出来に失望し、自らの名前をクレジットから外してもらうべく自費でローマまで赴きますが、「作品を米国市場に納品するにはアメリカ人の名前が必要」という謎の法律が立ち塞がり、カナダ出身のキャメロン氏には為す術がなかったそうです。
後にキャメロン監督はインタビューにて「本作をデビュー作とは思っていない」と語っており、今作が自身の初監督作品とみなされることに不満を持っているそうです。
現在配信等は無いようですが、アマゾンプライムで399円でレンタルが可能です。キャメロン監督自ら「史上最高の空飛ぶ殺人魚ホラー&コメディ」と自嘲するだなんて一体どんな作品なんだ?と気になる方は是非!
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◇南海のリゾート地。ある夜、一組のカップルが海中で性行為を行おうとした矢先、何かが彼らに襲いかかり、辺りは鮮血に染まる。
ダイビングのインストラクターとして生計を立てている海洋生物学者のアニーは、保安官を務める夫•スティーブとはうまくいっておらず、息子のクリスと二人暮らし。そんな折、彼女のダイビングツアーで立ち入り禁止の沈没船内に入った客が見るも無残な姿で発見される。どうにかして原因を突き止めたいアニーはプレイボーイの同僚タイラーと死体安置所に侵入。惨たらしい遺体の様子やタイラーの証言から、一連の事件が生物兵器として生み出された殺人魚フライングキラーの仕業だということが明らかになった。
そんなこととはつゆ知らず、ホテルのイベントで海岸に集まった大勢の観光客。しかしそこへ、宙を舞う殺人魚の群れが押し寄せ、ビーチは地獄絵図と化す…
という感じでざっくりと展開していきます。
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海中のシーンが多過ぎるように感じました。
(thecinema.jpより引用)
冒頭の水中セックスシーンからしてB級感が漂いまくる導入になっており面白かったです。
登場人物も主人公の海洋生物学者アン、別居中の夫•スティーブ、一人息子のクリス、アンの同僚タイラー、スティーブの友人で漁師のギャピー親子、金にがめついホテルのオーナー•ラウル等などキャラの見せ方や関係性もしっかりまとまっていました。
なんですけど、全員が全員バラバラに行動するというか最後の最後まで一致団結してくれません。
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アンはワンナイトを決め込んだタイラーと2人でフライングキラーを倒しに行きますし、夫のスティーブはヘリコプターでクリスの捜索。クリスはクリスで一目惚れした女の子とイチャつくばかりで見せ場なし。ギャピーは息子の敵討ちとばかりにフライングキラーに立ち向かいますが犬死。
全員が別々に行動するので、否応なしにシーンが継ぎ接ぎのようになっており、正直すごく見づらいし、楽しみにくかったです。それもこれも、先述したような撮影中のゴタゴタや低予算、険悪なムードが如実に作品に現れた結果だと思います。
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(sonypictures.jpより引用)
クライマックスで『アンとタイラーがフライングキラーの根城である沈没船に爆弾を仕掛けて一網打尽にする』という見せ場は、狭い船内でフライングキラーに追われるなど緊張感があってそれなりに楽しめるんですけども、音楽も終始単調の上、違うシーンが度々差し込まれるのでイマイチ乗り切れませんでした。ちなみにタイラーは最後の最後に逃げ遅れてフライングキラーに食べられますし、アンは余裕で彼を見捨てます。
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終わり方も非常に雑で、『沈没船の爆発から命からがら生還したアンが、船で待機していた夫のスティーブに引き上げられる』というところでいきなりエンディングクレジットが流れます。
その後、一連の騒動は収束したのか、アンの不倫の件はどうなったのか、フライングキラーは無事殲滅できたのか等など、スッキリさせなければいけない部分を全てすっ飛ばして「はい、終わり!」と一方的に幕を閉じられた感じがしました。
一説によるとキャメロン監督は大方のシーンを撮り終えた瞬間に解雇されたそうです。なのでおそらくですけど、それ以降の監督を引き継いだアソニティス氏が残りの諸々のシーンを撮りつつ、それらの映像をつなぎ合わせた結果、あの継ぎ接ぎ感が出てしまったのかもしれません。あきらかに「こんなシーンいらないだろ」と思うシーンも多々あり、上手く意思疎通や引き継ぎが出来ていないのが分かりました。特にアニーとタイラーの不倫のシーンなんて絶対にいらないですし、水着ギャルがホテルの料理人をもて遊ぶシーンなんかも必要性を感じませんでした。
余談ですが、スティーブ役のランス•ヘンリクセン氏はキャメロン監督とも親交があり、諸々のゴタゴタも知ってか、殺人魚の模型を徹夜で作り直すのに付き合ったそうです。
そんな殺人魚の設定もベタっちゃあベタですけどいかにもな感じで個人的には好きでした。
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(thecinema.jpより引用)
ベトナム戦争時にアメリカ軍が極秘裏に開発した生物兵器で、凶暴なピラニア、飛ぶトビウオ、そして陸で産卵するグルニオンを掛け合わせた種となります。その種の卵を輸送中に落としてしまったらしく、その卵が孵り、近くの沈没船を拠点にして近づく人間を襲っていたというわけです(タイラーはこの計画に携わっていた過去を持っていました)
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フライングキラーに食べられます。(thecinema.jpより引用)
今作はジェームズ・キャメロン監督にとっては黒歴史かもしれません。
しかし!
噂によると今作をクビになった直後、ホテルでふて寝を決め込んでいたキャメロン監督は「赤い目をした銀色のピラニアがどこまでも追いかけてくる」という悪夢を見たそうです。その時の悪夢を元にあの名作「ターミネーター」が生まれたとも言われています。
何かと大変だったのが如実に表れている映画でした。察するに余りあります。本当にお疲れ様でした。
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