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ずっと気持ち悪い…唯一無二の世界観「オテサーネク 妄想の子供」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(569日目)

「オテサーネク 妄想の子供」(2000)
ヤン・シュヴァンクマイエル監督

◆あらすじ
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その夫婦は子宝に恵まれずにいた。ある日、夫は偶然見つけた切り株が子供の形に見えたことから、妻のためにそれを持ち帰る。妻はそれを我が子と信じ、求められるがまま食べ物を与え続けた。やがて切り株の子・オチークは巨大化して食べ物を求め…。(Filmarksより引用)
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もう本当に最初から最後まで気持ち悪くて、難度も鳥肌が立ちました。現実と妄想の境目が曖昧な世界観とストップモーションアニメの動きが非常にマッチしておりとても面白いし、良い作品なんですが、キモ過ぎて私はもう見たくないです笑

チェコとイギリスの共同製作の作品で、チェコの民話「オテサーネク(食人木)」という『人間や動物を食い殺す伝説上の植物』の話がベースとなっています。

食人木Wikipediaより引用

監督を務めたヤン・シュヴァンクマイエル氏はチェコスロバキア出身の映画監督で、その他にもアニメーション作家や、シュールレアリストとして芸術の分野でも精力的に活動していらっしゃいます。

ヤン・シュヴァンクマイエル監督
(ヤン・シュヴァンクマイエルWikipediaより引用)

本作もそうなんですが、作中において『食べる』という行為を頻繁に扱っていますが、登場する食べ物や料理は色味も悪く不味そうに見えます。更には咀嚼中の口のアップや、口腔内が丸見えになるようなカットがあったりと意図的に視聴者に不快感を与えています。

これは同監督が幼少期から食べること自体が好きではなかったからであり、両親に無理やり食べさせられたことでより食に嫌悪感を抱いてしまったそうです。その結果、体が弱ってしまい車椅子生活だった時期もあるそうです。

監督は『食べる』という行為に対して、文明や社会が何でも食べてしまうことを象徴する恐ろしさを感じているそうです。

さらには自身が見た夢を日記に書き留めるほど、『夢』というものを重要視しており、現実と夢を混ぜた世界観の作品を撮ることを意識しているそうです。

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Filmarksより引用

◇不妊症に悩むホラーク夫妻。ある日、気晴らしにと購入した別荘で夫•カレルは赤ん坊のような形をした切り株を発見。精神的に参っている妻•ボジェナを慰めるつもりでその切り株をプレゼントした。ところが、ボジェナはその切り株を自分の息子として溺愛するようになり、さらには周囲の人々にも自分が産んだと見せかけるために妊娠したと吹聴し始める。

というなんとも辛い幕開けに不意打ちのボディーブローを何発も喰らってしまいます。

切り株を我が子のように溺愛する妻も相当に参ってますが、生け簀に入ってる魚が赤ん坊に見えたり、スイカの中身が赤ん坊に見えてしまう夫も夫で大分きてます。妻•ボジェナは別荘でこっそり赤ん坊(切り株)の面倒を見ながら、一月毎にサイズを大きくしたクッションをお腹に入れ、妊娠したように振る舞い、ご近所さんや夫•カレルの職場にも妊娠したことを報告します。

カレルもカレルで、切り株の件で妻がおかしくなったのは自分のせいでもあるため、あまり強く言い出せません。何度か切り株を処分しようかと試みますが妻の猛反対もあり、実行には移せず、妻の妄言に付き合わざるをえません。

夫•カレル
彼も彼でかなり追い込まれてます。
(shibuya.uplink.co.jpより引用)

ここまで見ると、『ただの切り株を赤ん坊だと思って可愛がる妻とそれに付き合わされる夫』という内容の作品に見えますが、この作品は一筋縄ではいきません。

切り株はまるで本物の赤ん坊のように動くし、ちゃんと泣くんです。

中盤まではこれが夫妻だけに見えている妄想や幻覚なんだと思いながら我々視聴者も見ています。

しかしです!

中盤以降それが徐々に覆されていきます。

無事に男の子を出産したことにしている夫妻はそれ以降も周囲にウソをつき続け、オティークと名付けたその切り株を育てます。そして、この切り株が徐々に自らの意思で行動するようになり、異常なまでの食欲を見せ、ついには猫や人までをも食べてどんどん巨大化していきます。

オティークを沐浴させるシーンなんかも見ていてかなり辛いです。(site2021.airport-anifes.jpより引用)

このあたりで我々視聴者もこの切り株が動いているのは夫妻の妄想ではなく、現実なのだと気づきます。

夫妻でもオティークを止めることは出来ず、ついには夫がアパートの地下に閉じ込めるもそれが最悪の結末を引き起こすことになる。

という風に展開していきます。

この作品の上手いところが、夫妻視点だけで物語が進むとどうしてもただの妄想や幻覚の話に見えてしまうため、お隣さんの娘•アルジュビェトカの視点を多くいれているところです。

性に興味津々なおませさんのアルジュビェトカは常に夫妻の同行を覗い、赤ん坊が切り株であることにもいち早く気づきます。さらにはその切り株が「オテサーネク(食人木)」であると推察し、なんとかその姿を見てやろうと躍起になってあれやこれやと行動に移します。おそらくこのアルジュビェトカの存在が我々視聴者そのものなんだと思います。

アルジュビェトカ
母親から頻繁に食べ方を注意されます。
(natalie.muより引用)

精神的に参っている妻とそれに付き合わされる夫のどちらにも感情移入するのは難しいです。そんな中でアルジュビェトカという第三者(視聴者)の目があるお陰で、この作品はどういう見方なのかという方向性がブレることがなく、最後まで一本筋の通ったお話として見ることができました。

ストップモーションアニメで表現されるオティークの動き、ロリコンジジイの股間から出てくる手、不味そうな食事の数々、オテサーネクの絵本アニメ、登場人物の行動や発言等など

作品を構成するほぼ全ての要素が辛いし、気持ち悪いです。それがこの作品の最大の魅力の一つでもあると思いますが、これはかなり体力を持っていかれると思います。キモを摂取したい人にはオススメです。

この絵本のアニメーションも独特な雰囲気というか気持ち悪さがありました。(site2021.airport-anifes.jpより引用)

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