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王道のワニワニパニックムービー!工夫を凝らした演出に舌を巻く!!「アリゲーター」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(559日目)

「アリゲーター」(1980)
ルイス・ティーグ監督

◆あらすじ
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ある少女がペットとして飼っていた小さなワニが、部屋に糞をしたことに怒った父親によってトイレに流されてしまう。それから12年後、アメリカ中西部の小さな町で何かに食いちぎられたような無残なバラバラ死体が地下溝で発見される。下水溝に何かが潜んでいる可能性を見いだした市警刑事デヴィッドは、爬虫類学者のマリサに協力を求めるが、実は町中を恐怖に陥れているその怪物こそ、かつてマリサが飼っていたワニが成長し、巨大化したものだった。(映画.comより引用)
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スティーヴン•スピルバーグ監督の言わずと知れた不朽の名作「ジョーズ」(’75)の大ヒット以降、「グリズリー」(’76)や「ピラニア」(’78)、そして今作「アリゲーター」(’80)など手を変え品を変えて、いわゆる動物パニック系のホラー作品が次々と発表されました。

便乗の匂いはほんのりするものの、そのどれもが監督や脚本家の独創性や意欲を感じられるものばかりで、個人的にはこの年代のこの手の作品にはあまりハズレが無い印象です。

今作もその例に漏れず『市街地に現れた巨大ワニと人々の死闘』というオリジナリティ溢れるぶっ飛んだ大筋ながら、スピーディーな展開に加え、低予算をカバーするオリジナリティ溢れる演出の数々、人間を丸呑みする大迫力のワニのインパクトもあって相当面白かったです。

「下水道のワニ」という、1920〜30年代のアメリカ合衆国において、捨てられたペットのワニが下水道に住み着いているという都市伝説が元ネタとなっています。

現在DMMTVとU-NEXTにて配信中です。

映画.comより引用

日本公開時のキャッチコピーは「誰でも12回は飛び上がります」で、配給会社は誇張し過ぎの煽り文句を付けることでおなじみの東宝東和です。ちなみにその誇張傾向は90年代後半あたりから薄れてきた印象です。

◇とあるワニのショーを見た少女がお土産としてワニの赤ちゃんを購入して帰る。ペットとして可愛がるも、部屋中に糞をしたことに腹を立てた少女の父親がそのワニをトイレに流してしまう。下水道に流れ着いたワニは果たしてどうなったのか…

という導入部分をわずか4分程でまとめています。こんなにもスピーディーに導入部分を片付けて本題に入っているにも関わらず、「端折り過ぎ」や「早すぎ」などとは一切思いません。

むしろ『ワニのショーのおっさんが鈍臭いせいでワニに足を噛まれて大出血してそこそこのパニックになる』という、正直無くても成立するけど、パニック映画としてはあったら嬉しいアイドリングのようなシーンなのでとても良かったです。

あと、ワニの赤ちゃんをお土産として販売するとかいうイカれた倫理観の時代があったことが逆に新鮮過ぎて面白かったです。

映画.comより引用

その後は

◇アメリカ中西部の小さな町に住む市警刑事のデヴィッドが、下水溝からバラバラ死体が発見された事件を捜査する中で、下水道で巨大なワニに遭遇。当初は誰も信じなかったがいよいよ巨大ワニはコンクリートを突き破り、市街地に出現。餌を求めて次々と人間を丸呑みにしていく。デヴィッドは爬虫類学者のマリサと協力し、ワニ討伐に乗り出す。

という王道の展開ながら、事が運ぶきっかけが全て自然なので作為的なものを一切感じません。

例えば

巨大ワニを目撃したというデヴィッドの話を信じる者は当初いなかったものの、デヴィッドにしつこく絡んでくるねちっこい記者•ケンプが下水道でワニに襲われた際も最後の最後まで写真を撮っており、彼の死後にそのカメラのフィルムを現像したことで周囲の人々もワニの存在を認める。

みたいな感じで、登場人物の特徴や職業や設定をうまいこと活かしており無駄がありません。なので、ケンプが執拗にほじ繰り返してくる“デヴィッドが相棒を失った過去”もしっかり最後まで活きてきます。

映画.comより引用

後半からはメディアもこぞって報道し始めたり、市長が会見を開いて軍を要請したり、ワニパニックに便乗してグッズを販売するやつがいたり、懲りずにまたワニの赤ちゃんをこっそり売ろうとする無法者がいたりとリアリティが増します。

映画.comより引用

冒頭で下水道に流れ着いたワニは、研究所が不法投棄していた成長ホルモン実験用の犬の死体を食べてしまったがために体長10m以上に成長し、エサを求めて人間を襲い始めました。

だいたい予想はつくと思いますが、そのワニを飼っていたあの時の少女こそがヒロインで爬虫類学者のマリサでした。学者なので解説•説明担当のキャラとしても機能しますし、べらぼうにお美しいのでヒロインとしても相当に存在感があります。

主人公のデヴィッドはバックボーンもしっかりしており、相棒を失った過去から周囲からも避けられがちの一匹狼な感じで非常にかっこいいです。本編でやたらと薄毛をイジられますが、そこに関してはなんのオチも無く、ただただイジられているだけです。

主人公•デヴィッド
確かにちょっと前頭部が怪しいです。
(映画.comより引用)
老いてもなおかっこいいです。
(ロバート・フォスターWikipediaより引用)

そして、今作はワニの演出が非常に素晴らしいです。

おそらくあまり予算が無いのか、中盤まではワニの全体は写りません。顔や口、尻尾のみ、目のアップ、影だけ等ですが、緊張感のあるBGMや照明やフラッシュを最大限に活かし、見せ方に工夫を持たせているのでまったく気になりません。

映画.comより引用

ワニが市街地に出現するシーンはマンホールやコンクリートを突き破って登場する大迫力の演出で、更には車の横を這うシーンを上空から俯瞰で見るカットにすることで“どれくらいの大きさなのか”を視聴者に印象付けることも忘れません。

映画.comより引用

肉の焼ける匂いに誘われて結婚式場に出現し、参列者を次々と襲うシーンもかなりえげつないです。何人もの人を丸呑みするわ、尻尾で車をボコボコに潰したりと暴虐の限りを尽くします。更には逃げ惑う人々がずっと悲鳴を上げたり、転倒したりと非常に臨場感があります。その光景はさながら阿鼻叫喚の地獄絵図のようでとても良かったです。

映画.comより引用

クライマックスもデヴィッドが命がけで下水道にダイナマイトを仕掛けて脱出を試みるも、マンホールの上にちょうど車が止まってしまい出られない!というお決まりのハラハラドキドキもあり、最後の最後まで楽しめました。

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