演出のクセが強すぎる!数々の若手クリエイターに衝撃を与えた伝説の作品!世界よ、これが大林宣彦だ「HOUSE ハウス」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(694日目)
「HOUSE ハウス」(1977)
大林宣彦監督
◆あらすじ
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学校から帰宅したオシャレに父は再婚相手を紹介する。オシャレはショックを受け、間近に迫った夏休みに仲間とおばちゃまのところへ行くことに。夏休み、おばちゃまはオシャレたち7人を歓迎するが、このおばちゃまはすでに死亡していて…。(Filmarksより引用)
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CM界の巨匠として知られる大林宣彦監督の商業映画監督デビュー作にして、『アイドル✕ホラー』という邦画の王道ジャンルを確立した作品とも言われています。
『父親に突然再婚相手を紹介された主人公はショックを受け、夏休みの家族旅行を拒否。演劇部の仲間たちと親戚のおばちゃまの家へ行くことに。しかしおばちゃまの家に着くなり次から次へと彼女たちの身に不可解な現象が降りかかる』
という、シンプルなストーリーを実写とアニメの合成等あらゆる特撮技術を用いた独特な映像表現や非常にクセが強い演出やカメラワークで唯一無二の世界観の作品に仕上げており、当時の若いクリエイターたちに絶大的な影響を与えたそうです。
私の率直な感想としましては、一つ一つのシーンが全て何かしらのCMのようで、そのCMが繋がって一つの作品になっているという印象です。
数十秒で視聴者にインパクトを残さなければならないCMだと印象重視で少々くどい演出やコミカルなやりとり等がありがちですが、今作の場合はそのほとんどのシーンでそういった演出ややりとりが見受けられるため、確かにどのシーンも印象に残るんですけども流石に全シーンでそれをやられてしまうとお腹いっぱいになってしまいます。
例としては
等などこれでもほんのごく一部です。
すごく重要なシーンでも、正直無くても成立するようなシーンでも同じように全力投球なので、結局この作品は何が見せたかったんだろう、何がテーマだったんだろうと少々モヤモヤしてしまいました。
また50年近く前の作品であるため、今見るとそういった当時のコミカル演出を古臭いと思う方もいるかもしれません。個人的には一周回って逆に新しいんじゃないかと思えてきて面白かったんですけど、映画としては相当異端児的なポジションになるのかもしれません。
公開当時はそのポップでカラフルな映像や斬新な表現の数々、そして若くてキレイな女性がメインキャストであることから主に15歳以下の若い層から爆発的に支持を得たそうで、同時上映にしてメイン作だった「泥だらけの純情」(山口百恵&三浦友和主演)の上映中には今作目当てのお客さんが映画を見ずにロビーでたむろしたため、売店の売り上げも凄まじかったそうです。そのため一部の劇場では今作をメイン作に変更するという現象が起きる程のブームを巻き起こしました。
しかし大林監督曰く、熱狂的な支持は若年層だけで観客の8割に否定されたとのことで、実際のところ「こんなものを見せるな!」というクレームを直接映画館に言いに行くお客さんがいたり、映画評論家の山根貞男氏は今作を「CFテクニックのオンパレード。耐えられない、我慢ならない」と評し、その他の評論家からも「女子(おんなこども)の映画」や「CM風に映像を数珠つなぎにしたカタログ的映画」などとボコボコに酷評されていました。
※CFテクニックとは
しかし今作の大ヒットにより、助監督の経験なし、自主映画出身、CMディレクター出身等の監督でもこれだけのヒット作を生み出せるんだという新たなムーブメントが巻き起こり、後に映画監督となる犬童一心氏や井口昇氏など数多くのクリエイターに夢と希望を与えたのもまた事実です。映画における表現の幅を多いに広げ、後の映像業界に多大な影響を与えた今作の功績は計り知れません。
ふと思ったんですけど、お笑いに例えるならば紳竜(島田紳助さんと松本竜介さん)、ダウンタウンさん、最近で言うとランジャタイさんが初めて出てきた時の衝撃に近いのかもしれません。新しいものは最初は中々受け入れられませんからね。
現在U-NEXTにて配信中のほか、アマゾンプライム、DMMTV、Leminoにてレンタル(440円〜)が可能です。私は五反田のTSUTAYAにてレンタルさせていただきました。
といった感じに展開していきます。
基本的にはオズの魔法使いのようなファンタジーの世界観がベースなんですけども、そこに登場する霊の存在がかなり歪というか、テイスト的には絶対そぐわないんですけど、その違和感みたいなものが逆に恐怖を煽るため、ホラー映画としてはかなり優秀なのではないでしょうか。
この作品の面白いのがメインの女子高生7人に明確な名前がないんですよ。主人公のオシャレを筆頭にファンタ、ガリ、カンフー、マック、スウィート、メロディーとそれぞれの特徴から付けたあだ名で呼び合っており、オシャレの両親も彼女のことをオシャレと呼びます。これにどういった意図があるのかは私のような凡人には分かりませんが、名前があろうがなかろうが物語の内容や理解度に変わりはないため、逆に「じゃあなんで名前が必要なの?」と言われると答えに詰まってしまいそうです。この点についても相当新しい試みですね。
羽臼屋敷内で繰り広げられるドタバタ劇は怖いというよりかは出演者たちが頑張ってるなぁという感じで、温かい目で見てしまう部分も多々ありました。カンフーのアクションシーン等はアレなBGMも相まって共感性羞恥が煽られます。
しかし、南田洋子さん演じる品がありながもお茶目で可愛らしいおばちゃまの存在が非常に大きく、若い子たちが家に来たことでウキウキしながら骸骨と踊ったり、目玉を口の中で転がしたり、金魚を齧ったりとかなり攻めた演技やシーンにも挑戦しており、このあたりも映画ファンからすると非常に見所だと思います。
というクライマックスにかけての盛り上がりはもはや意味不明過ぎてボボボーボ・ボーボボみたいになっていますが、これを当時映画館で見ていた人達はどう思っていたんでしょうか。正直、私は理解が追い付かず中盤以降は内容が入ってきませんでした。
結局全員が羽臼屋敷に取り込まれてしまうわけですが、最後のナレーションでは「たとえ肉体が滅んでも〜」や「愛する人の命を〜」など愛や命について語っており、この作品にそういったテーマがあることが示唆されます。
そして、もう一つ特筆すべきは先述した映像表現やクセスゴ演出はもちろんのこと、キャストの異常なまでの豪華さです。
物語のキーパーソンとなるおばちゃま役の南田洋子さんや演劇部顧問でコメディリリーフ担当の尾崎紀世彦さん。さらにはおばちゃまの婚約者として三浦友和さんが友情出演。オシャレの父親役には「木枯し紋次郎」などで知られる作家の笹沢左保さん、劇中の作曲を担当した小林亜星さんやゴダイゴさん、大林監督と奥様、そして娘さん、脚本を担当した桂千穂さん等など
俳優だけではなく、作家やミュージシャン、クリエイターなどあらゆるジャンルの方々が出演を果たしています。
先述した通り、若い層(主に10代)にウケた今作ですが、作中にはファンタ(大場久美子さん)が生首にお尻を噛まれるシーンやオシャレ(池上季実子さん)の入浴シーンや上裸姿などいわゆるサービスシーンが非常に多く、私の想像に過ぎませんがそういったエロいシーン見たさに劇場に足を運んだ人も少なくなかったのではないでしょうか。
兎にも角にも、こういった型破りな作品が新しい時代を作っていくわけですから、今後もこのような当時は叩かれたけど後々めちゃくちゃ評価されるみたいな名作が生み出されることを表現者の端くれとして願っております。
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