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もうこの世にはいない父親の知られざる狂気が明らかになる…霊からもらったヒントで隠された真実を暴き出す短編ミステリーホラー「The Blue Drum」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(809日目)
「The Blue Drum」(2022)
アンジェリータ•メンドーサ監督
◆あらすじ
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父親の葬儀に参列した若い女性が謎めいた存在に取りつかれたことをきっかけに、実家に隠されてきた秘密の数々が次々と明らかになっていく。(Netflixより引用)
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『男手一つで主人公を育てた父の死をきっかけに、いなくなった母親やこの家に隠された真実、そして父という人間についてなど、様々なことが明らかになっていく…』
という、人間に秘められた狂気を描いたNetflixの短編ミステリーホラーです。
短編ホラー映画見るの凄い久しぶりだったんですけど、これは完成度がかなり高くて非常に面白かったです。
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心霊現象もありつつ、“身近な人間の知られざる狂気”みたいなものが明らかになる展開は相当なホラーでした。
なもんで心霊現象に関しては霊から主人公へのSOSのサインというか、「私ここにいるよー!見つけて!」と伝えたいゆえのものなので、それが判明した後は怖さよりも悲しさや切なさみたいなものがありました。
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そんな今作で監督•脚本を務めたアンジェリータ•メンドーサ氏はニューヨーク生まれサンディエゴ育ちのメキシコ系アメリカ人のクリエイターです。
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父親がビデオショップを経営していたこともあり、幼少期から映画監督を志していたそうです。そして今作が4本目の短編映画となるそうです。
なお今作は、映像業界において有色人種のクリエイターの方々が未だに過小評価を受けているという悲しい現状から、NALIP(National Association of Latino Independent Producers)とNetflixが提携し、4人の有色人種の女性クリエイターにオリジナルの短編映画の製作の機会を提供するという企画から誕生しました。
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現在Netflixにて配信中です。本編は15分ちょっとなので移動中の電車内等でもさくっと見られます。
今日は珍しく朝からずっと忙しくさせてもらっていたので長編映画を見る時間が取れず、しゃあなしで短編をチョイスしたんですけども、これは思わぬ良い出会いでした!オススメです!
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(https://m.imdb.com/title/tt15421298/mediaindex/?ref_=tt_mv_smより引用)
◇優しかった父親が亡くなり、一人娘のレティは慌ただしく葬儀の準備などに追われる。そして滞りなく葬儀は終わったものの、叔母は葬儀代の足しにするからと何の余韻も無く、勝手に家具を売り払い、さらにはその目に余る行為を咎めたレティに対して「アイツはろくでもない男だ!だから嫁に逃げられたんだ!」等と暴言を吐く。ただでさえ最愛の父親の死からまだ立ち直れていないのに…
とにかく今は一人になりたい。そんな矢先、レティは導かれるように一冊のアルバムを発見。それをきっかけに徐々に明らかになるこの家に隠されていた真実。何かを引きずるあの音の正体は?父親は何を隠していたのか?母親がレティに伝えたかったこととは?
というのが今作の細かめのあらすじです。
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母が家出をして消息を絶ち、それからというもの男手で一つで自分を育ててくれた父親が死に、一人娘のレティは葬儀の準備に追われ、悲しむ暇もなかった。
夫のルーベンは「去るものばかりじゃないから」と励ましてくれるも、子どもたちがフザケていたのか、突然窓ガラスが割れ、近くには父親の玉軸受けの玉がいくつも散らばっていた。
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父は自動車関係の仕事でもしていたのでしょうか?
(https://www.monotaro.com/g/03482887/より引用)
子どもたちを軽く諌めるも、皆一様に「急に割れた」と証言。結局はレティが片付けをする羽目に。
ようやく片付けが済んだと思いきや、今度は叔母が葬儀代を賄おうとこの家の家具をあらかた売り払う段取りを勝手に取り付けていた。
「そんなすぐにしなくても…」とレティから咎められると、「あの男はろくでもない!だから嫁に逃げられたんだよ!」と死んだばかりの父親への暴言を吐かれ、険悪なムードが漂う。
どうにかルーベンがその場を収めるも、レティの気は晴れない。
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そして、この頃から彼女にだけ何かを引きずる音が聴こえはじめる…
導かれるように大きな収納ケースを開けると、中には一冊のアルバムが。その中の幼いレティと両親が仲睦まじく写る1枚の写真の裏を見ると、そこには母の字で「愛する娘 ずっとそばにいる ママより」と記されていた。
なぜこんなところにアルバムが?母は自分に何かを伝えたかったのか?
モヤモヤしっぱなしのレティは、一緒に実家に泊まるよと声をかけてくれたルーベンにも「一人になりたいから」と拒絶。それでもルーベンは「じゃあ、リビングで寝るから」と残ってくれます。
そしてその晩、またあの何か大きいものを引きずるような音が聴こえてきます。漠然とした不安に襲われたレティは包丁と懐中電灯を持って音の発信源を探ります。
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どうやらその音が床下から聴こえると分かったレティは室内の地下室への扉は施錠されているため、裏庭から地下室へと入る。
音はどんどん大きくなります…
そして彼女の目の前には大きな青いドラム缶が…
このドラム缶を誰かが引きずっていたのでしょうか?でも誰かがいたような痕跡もありません。
そこへ心配したルーベンが駆け付けますが、レティはそんなことはお構い無しに、何かに取り憑かれたかのようにドラム缶を外へ運び出そうとします。
しかし、中には何が入っているのかは定かではありませんが相当な重さで、当然運び出すことは不可能です。そしてバランスを崩してしまい、レティはドラム缶を倒してしまいます。
その拍子に中身が飛び出す…
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中から飛び出したのはほとんど白骨化した腐乱死体と大量の玉軸受けの玉。その死体の着けている指輪からレティはそれが母親であると確信。
父から「母は出ていった」と聞かされていた。しかし母はずっとそばにいた。あの音は父がドラム缶を引きずる時の音だったのか?それとも母が自分の居場所を知らせようとしたのか?
真相は何も分からない…
というところで物語は幕を閉じます。
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後味が悪く、色々な解釈が出来るオチが非常に好みでした。
父はなぜ母を殺したのか…
いつも優しく誰からも愛されていたのに…
2人の間に一体何があったのか?
母も父もいない今では真相は闇の中です。
そして、なぜ自宅の地下室に隠し続けていたのでしょうか。謎は深まるばかりですが、室内から地下室へ降りる扉は施錠されており、言わば開かずの間のようになっていることから、もしかしたらレティは父親から「絶対に地下室には入るな」等と言われていたかもしれません。
そんなこと言われたら逆に入りたくなっちゃうような気もしますが、レティもこの地下室に対して記憶の奥底に眠っている何かトラウマがあるのかもしれません。
それにしてもあのドラム缶を引きずる音は『父が母を殺害して中に入れて、地下室の奥へと隠すために引きずった時の音』なのか、それとも『父が亡くなった今ならば、彼が罪に問われることも、レティが一人ぼっちになることもなく、自分の死を伝えられる頃合いだ』と思った母親の霊がレティに気付いて欲しいと伝えるためのメッセージだったのか
ここの解釈によってストーリーの捉え方が大分変わってくる気がします。
個人的には後者のパターンを推しているんですけども、皆様はどう思いましたでしょうか。さくっと見られる短編なのでもし御興味ありましたらご覧になってみてください。
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