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脚本が秀逸過ぎる!疑心暗鬼のパリピたちがお送りする無益にも程がある殺し合い!「ボディーズ•ボディーズ•ボディーズ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(689日目)
「ボディーズ•ボディーズ•ボディーズ」(2022)
ハリナ•ライン監督
◆あらすじ
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20代の女性ビーは恋人ソフィーに誘われ、彼女の幼なじみデビッドの親の別荘である山奥の屋敷を訪れる。そこにはデビッドに加え、アリス、ジョーダン、エマの3人の友人と、アリスの恋人であるグレッグがいた。嵐が接近するなかパーティを楽しむ一同だったが、くじで決めた殺人鬼役が誰かを当てる推理ゲーム「ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ」を始めたことをきっかけに、彼らの間に潜んでいた偽りの友人関係や裏切りが浮かび上がり、事態は最悪の方向へと突き進んでいく。
(映画.comより引用)
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これはべらぼうに面白かったです!
ジャンル的にはクライムサスペンスとかスリラーとかになると思いますが、さらに細分化すると“フーダニットスリラー”というジャンルになるようです。
※フーダニット(whodunit)とは
ミステリー小説用語の一つで、『誰が犯行を行ったか』という意味です。推理小説やサスペンス映画において「誰が犯人か」という部分に主軸を置いた作品のことを指します。
内容自体は極めてシンプルですし、途中からオチも分かるんですけども、ついつい笑ってしまいます。もちろん物語の登場人物たちは至って真剣なわけで、そこに見ている我々との温度感の違いみたいなものが生じるのが良いですね。
『金持ちのボンボンの別荘に集まったパリピたちが酒やクスリの勢いからくだらないゲームを始めるも、その途中で仲間の1人が不審な死を遂げたことから互いに疑心暗鬼に陥り、醜い殺し合いへと発展していく』
という大筋を見ただけで“パリピじゃなくて良かった”と心底ほっとするとともに、『一生相容れることが無さそうなウェイウェイ系の人たちが誰が犯人かも分からない状況で無益な殺生を繰り返す様を絶対安全な位置から鑑賞することができる』というのがおそらくはこの作品の正しい見方なんだと思います。
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彼らが作中で行う『ボディーズ•ボディーズ•ボディーズ(殺人ゲーム)』とは
•皆でくじを引いて✕を引いた者が殺人鬼役となる
•電気を消して真っ暗な状態で殺人鬼役が他の参加者の背中をタッチ
•タッチされた者は死体となり、その場で音を立てないように倒れる
•他の参加者は殺人鬼役にタッチされないように逃げるとともに死体を見つけたら大きな声で「死体よ!」と叫ぶ
•その声が聞こえたら電気を付け、誰が犯人かを当てる
という感じで、人狼ゲームのもっと簡単なやつだと思っていただけると分かりやすいと思います。
ゲーム開始前には“車座になって全員が順番に自分の右隣の人の目を見ながら思いっきりビンタをする”という陽キャ特有のノリみたいなものがあります。犯人を特定する際は「お前の〇〇へのさっきのビンタなんか強くなかった?」とか「若干空気ピリってたよね」みたいなところを判断材料にしたり、日頃の関係性から割り出したりします。
お分かりの通り、戦略性なんてあってないような雑ゲームです。しかしルールが緩いからこそ感情論で犯人を決め付けざるを得ず、それゆえに口論や喧嘩に発展しやすく、それが後の惨劇へと繋がります。
そんな今作の素晴らしい脚本にはサラ・デラップ氏、クリステン・ルーペニアン氏、クロエ・オクノ氏、ジョシュア・シャープ氏、アーロン・ジャクソン氏の計5名が名を連ねており、共同執筆であることが分かります。誰がどの程度関わったのか、大元となる話を作った人がいるのか等は定かではありませんが、5人もいながらあんなにも緻密な心理描写がある脚本を完成させられることに脱帽です。普通そんなにいたらゴチャついてしまいそうなものですが本当に凄いですね。
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監督を務めたハリナ•ライン氏が長編映画の監督を務めるのは今作が初めてのようです。「ブラックブック」(’06)、「ワルキューレ」(’08)などに俳優として出演している記録がある他、日本ではまだ公開されていませんが「Babygirl」(’24)というニコール・キッドマン氏主演のクライムスリラー映画で監督•脚本を務めております。こちらも楽しみですね。
ちなみに本作で主人公の1人であるソフィー役を務めたアマンドラ・ステンバーグ氏は製作総指揮にもクレジットされております。
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海外の作品だとメインの俳優さんが製作も務めるということが多々見受けられますが、兼任できるものなのでしょうか。どれくらいの仕事量かは定かではありませんが、ただでさえメインキャストとして自分の演技に集中したい状況だろうに、その他の仕事もあるとなったらパンクしてしまいそうですがどうなんでしょうか。不器用な私には想像もつきませんが、近い内に『映画における製作(プロデューサー)の役割とは具体的にはどのようなものなのか』という記事をまとめてみても楽しそうですね。
ちなみに今作は日本では劇場公開スルーされてしまったものの、批評家からの評価もかなり高く、興行収入は世界中で計1400万ドル超えを記録するなど大ヒットしております。
現在Netflixにて配信中のほか、アマゾンプライム、U-NEXT、楽天TVにてレンタル(204円〜)が可能です。いわゆるクライムサスペンスやマーダーミステリーが好きな方にもオススメです。
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※作品的にネタバレすると面白さが半減すると思われますのでこれから見る予定の方はお気をつけください!
◇同性カップルのビーとソフィーは友人からの誘いを受けて山奥の豪邸を訪れた。そこはソフィーと顔なじみのデイヴィッドの親が所有する別荘で、他にもアリス、エマ、ジョーダン、そしてソフィーたちとは面識のないグレッグという男性がいた。先に来ていたマックスはデイヴィッドと派手に喧嘩をしたらしく、車で出かけて行ったという。突然の嵐で外は豪雨、そんな中、アルコールやクスリでハイになってきた面々は殺人ゲームをやることに。しかしそのゲームがきっかけで互いに過去のことを蒸し返したりと険悪な雰囲気になる。そんな折、突然の停電で通信障害が発生。スマホも何も使えない中、首を切られて死んでいるデイヴィッドが発見される…
という感じで展開していきます。
この作品の凄く良いなと思ったのが『話の流れや盛り上がりが自然』なところなんです。
特に口論や喧嘩になるまでの過程がものすごくキレイで、殺人ゲームを行ったことで「そういえばあんたあの時、私の彼氏と〜」とか「そんなこと言ったらあんただって〜」みたいに若い男女特有の表面的には隠しているドロドロとかギスギスみたいなものが徐々に露見し、みんながみんな少しずつスイッチが入り「そんな言い方したら喧嘩になっちゃうよ!」みたいな言い方になって、高まったところでバッと喧嘩になります。
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(sonypictures.jpより引用)
この過程がものすごくリアルで見ているこちらまでヒヤヒヤしてきます。何か見せたい事象(盛り上がるシーン)があっても、その事象のためのそれまでの過程をおざなりにしてしまうとどうしてもその事象が浮いてしまうというか、不自然に独立しているように見えてしまいます。ここが個人的には結構気にしてしまうポイントではあるんですけども、この作品はその過程が本当に自然でキレイでした。
このあたりに脚本な妙が感じられました。5人も脚本家の方がいらっしゃるようですが、上手いこと連携が取れているように見えました。先日視聴した某TVドラマはまさに事象にばかり囚われ、その過程をおざなりにし続けていたのでちょっと見習って欲しいです。
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◇デイヴィッドの死体を発見した女子一同は電話も繋がらない、唯一の車もバッテリーが上がってしまい助けを呼びに行くこともできない、そしてこの中に殺人鬼がいるかもしれないという最悪過ぎる状況から疑心暗鬼に陥る。そして『先ほどデイヴィッドと険悪になった&その場にいなかった』という理由だけでグレッグが犯人なのではと疑い、そのことをグレッグに直接問いただすも激昂される。キレてソフィーに襲い掛かったグレッグをビーがフライパンで殴り殺し、ようやく殺人鬼がいなくなったと思いきや、エマが何者かに突き飛ばされ階段から転落して死亡。さらには護身用の拳銃を奪い合い、アリスが死亡。さらには2階から転落してジョーダンも死亡。ついにはビーとソフィーの2人だけとなってしまう…
という感じで終盤へと続いていきます。
女子一同が不安な状況からその場にいない人間(グレッグ)を犯人と疑うというか、正直心のなかでは「こいつが犯人だろう。というか犯人であってくれ!」みたいな心理描写がリアルなうえに非常に滑稽です。グレッグがソフィーに襲い掛かった時点でその場にいた全員が「やっぱりこいつが犯人だ!」となり、結果的に犯人だと思われる彼を殺してしまったことでおそらくですけど殺人に対するハードルが下がったのではないでしょうか。
だからその後の拳銃の奪い合いでも『目の前にいるこいつが殺人鬼かも』という思考になっているため、躊躇わずに引き金が引けたんだと思います。そもそも最悪な状況下で思考も視野も狭まっているのでもはや極限状態に近い感じだったのかもしれません。
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(sonypictures.jpより引用)
最終的には『デイヴィッドはTikTok用の動画のためにふざけてナタを振り回していたら誤って自分の首を切ってしまった』、『エマはソフィーから貰ったクスリでラリって階段から落ちて死亡』ということが明らかとなり、じゃあグレッグは完全にとばっちりだし、アリスもジョーダンも犯人じゃないし、つまりは“殺人鬼なんて最初からいなかったんだ!”という分かりきった事にようやく気づきます。
このオチも本当にくだらなくて良かったですね。大バカ者(デイヴィッド)の死をきっかけに全員が全員「この中に殺人鬼がいる」という思考に陥り、疑心暗鬼になっていただけという着地の仕方が最高でした。
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(sonypictures.jpより引用)
グレッグに至ってはゲーム中のデイヴィッドからの挑発を大人の対応で受け流してトレーニングルームにいただけなのに、他の全員からあんたが犯人だ!と決めつけられてキレたら殴り殺されるってあまりにも不憫過ぎます。人の死を笑うのはよくないことですが、この作品に関しては笑っても良いんじゃないでしょうか。デイヴィッドが死ぬとことかめちゃくちゃ面白いです。
これは本当に良作でしたね!オススメです!!
☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。
渋谷裕輝 公式HP↓