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憂いを帯びたその微笑みに涙が止まらない…悲しくて美しい家族の物語「マローボーン家の掟」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(648日目)

「マローボーン家の掟」(2017)
セルヒオ•G•サンチェス監督

◆あらすじ
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森の中にたたずむ大きな屋敷で、不思議な5つの掟を守りながら暮らすマローボーン家の4人兄弟。忌まわしい過去を振り切り、この屋敷で再出発を図る彼らだったが、母親が病死し、凶悪殺人鬼である父親を殺害したことをきっかけに、明るい日々への希望はもろくも崩れ出す。父親の死体を隠した屋根裏部屋からは不気味な物音が響き、鏡の中には怪しい影がうごめき、やがて掟が次々と破られていく。心身ともに追いつめられた兄弟の長男ジャックは、妹や弟たちを守るため、ある決断を下す。(映画.com より引用)
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公式サイト↓
※がっつりネタバレがあるのでこれから視聴予定の方はお気をつけください。

『忌まわしい過去を振り切り、田舎で再出発を図る4人の兄弟が抱える業、家族の在り方、そして絆』を描いたミステリーホラーです。

ホラー的な演出もありますが、あくまでもこの作品は『家族の絆』『残された者が背負う業』がテーマのミステリー映画またはヒューマン映画に分類されるのではないでしょうか。なもんでホラーの部分はオマケくらいに思っていた方がいいかもしれません。

衣装やセットにも並々ならぬこだわりを感じます。
(映画.comより引用)

私の大好きなミア・ゴスが出演しているということであまり内容は確認せずに見たんですけども、これはとんでもないです!めちゃくちゃ面白かったです!内容が内容なだけに「面白かった!」という表現が正しいのかどうかはあれですが、映像作品として本当に素晴らしかったですし、泣きました。

監督を務めたセルヒオ•G•サンチェス氏は製作総指揮のJ•A•バヨナ氏の右腕として、これまでに「永遠のこどもたち」(’07)、「インポッシブル」(’12)などバヨナ氏が監督を務めた作品の脚本を手掛けてきました。そして今回はそんなサンチェス氏の満を持しての初監督作品にして、脚本も同氏が担当しています。

セルヒオ•G•サンチェス氏
(セルヒオ•G•サンチェスWikipediaより引用)

バヨナ氏は「脚本を読み終えたとき、本作が驚くほど素晴らしい映画になることはわかっていた」と語るほどにこの作品に入れ込んでおり、あらゆる面でサンチェス氏をサポートしたそうです。

ちなみに今回は珍しくイカれていない正統派のミア・ゴスを堪能できます。

これまで私が見たミア・ゴスは

主人公を地獄に引きずり込む気狂い女

「インフィニティ•プール」(’23)より(映画.comより引用)

史上最高齢の殺人鬼老婆

「X エックス」(’22)より(映画.comより引用)

世界一無垢で夢見る乙女な殺人鬼

「Pearl パール」(’22)より(映画.comより引用)

といった感じのトチ狂った役ばかりだったので、今回のようなまともな役は中々に新鮮でした。俳優としての存在感や技術が群を抜いているのでどんな役を演じてもしっかり印象に残るというのが本当にすごいです。

現在U-NEXTで配信中のほか、アマゾンプライムでは400円、DMMTVでは440円でレンタルが可能です。

映画.comより引用

◇1960年代のアメリカ•メイン州の片田舎。牧歌的で緑豊かなこの地にローズは4人の子どもたちを連れて自身の生家でもあるマローボーン家に移り住む。マローボーン性を名乗らせ、イギリスでの辛い過去を忘れるよう強く言い聞かせるローズだったが、新天地での生活に慣れた頃、彼女は病によりこの世を去る。彼女の遺言通り屋敷で暮らす4人だったが、突如鳴り響く一発の銃声をきっかけに歯車が狂い始める。彼らが背負う業とは、彼らの行き着く先には何があるのか…

という導入からお分かりいただける通り、ホラーというよりかはサスペンス映画としての側面が強いです。

画像右から次男のビリー、長男のジャック、長女のジェーン
ジェーンが抱えている子が末っ子のサムです。
(映画.comより引用)

マローボーン家には掟があり、

1.成人になるまでは屋敷を離れてはならない
2.鏡を覗いてはならない
3.屋根裏部屋に近づいてはならない
4.血で汚された箱に触れてはならない
5.“何か”に見つかったら砦に避難しなくてはならない

というこの5つの掟を皆で守りながら慎ましく生活していく中で、屋敷を相続するためにどうしても大金が必要となり、父親が犯罪を犯したことで手に入れた隠し財産(血で汚された箱)に手を付けたことから全ての歯車が狂っていきます。

どの掟も中盤までは「どういう意味?」と引っ掛かる部分が多いですし、屋敷で頻発する心霊現象も気になるところですが、それらが全て後々紐解かれます。

ジョージ•マッケイ演じる長男のジャック
セリフが無い時の表情等も本当に素晴らしいです。
(映画.comより引用)

母親に先立たれた4人の兄弟が支え合って慎ましい生活を送る中で、和気あいあいと海で遊んだり、カードゲームに興じたり、長男ジャックとアリーの恋模様があったりと、前半は割と穏やかで牧歌的な雰囲気で進んで行きます。ですが、その中にどこか悲しくて暗い空気感みたいなものが漂っており、それが彼らの辛い過去や背負っている業が滲み出たものだということが徐々に分かります。

そして後半以降は散りばめられていた謎が明らかになり、物凄く辛くはあるんですけども、その一つ一つの展開から目が離せなくなります。

長女のジェーンと末っ子のサム
過去の辛い出来事を鑑みるともしかしてサムは…
と推測してしまいます。(映画.comより引用)
次男のビリー
気は短いですが兄弟思いの優しいやつです。
(映画.comより引用)
ジャックの想い人アリー
演じたアニャ・テイラー=ジョイ氏は「ウィッチ」(’15)や「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」(’21)などでもその存在感を遺憾なく発揮しています。(映画.comより引用)

『何者かがマローボーン家の窓に向かって発砲する』という割と序盤にあるシーンが、何事も無かったかのように特に回収されずに、そのままタイトルが出て物語が6ヶ月後に飛びます。

あまりにも自然にスルーするため、見ているこちら側も「そういえばあれってどうなったんだっけ?」と頭の片隅には残っているものの、話が面白すぎるのでそのまま見進めてしまいます。

そして終盤のネタバレパートに突入したところで、先程の気になったシーンを含め、マローボーン家に隠された真実、ジャックの背負う業など、物語中に散りばめられたありとあらゆる点と点が一気に繋がり線となり、全ての伏線が回収される秀逸なラストへと続いていきます。

これはもう本当に見事としか言いようがないです。

「鏡を覗いてはならない」というのも「あぁ、そういうことか」と胸にズシンと来るものがあります。
(映画.comより引用)

少々丁寧に振りすぎていて、中盤くらいから「そういうことなんだろうな」とある程度予想は出来てしまうんですけども、この展開は文句の付けようがないんじゃないでしょうか。

登場人物の表情や目の動き等にも是非注目して見ていただきたいです。(映画.comより引用)

あまりに素晴らし過ぎるその余韻に浸り続けた結果、集中力が散漫となって他の事が手につかなかった私は、仕事中にマネキンを2回倒しました。それくらい素晴らしかったです。これは是非とも見ていただきたいです!

☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。

渋谷裕輝 公式HP↓


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