老害ジジイとサイコ青年のおしゃべり90分一本勝負!ちゃんとしたホラーかと思いきや、これは一体何映画なんだ?「オールドマン」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(708日目)
「オールドマン」(2022)
ラッキー•マッキー監督
◆あらすじ
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森の奥深くで迷ったハイカーの青年が、一軒の山小屋にたどり着く。青年はそこに住む老人に助けを求めるが、老人は青年を殺人鬼かもしれないと疑い猟銃を突きつけてくる。やがて2人は打ち解け始めたかのように思えたが……。(映画.comより引用)
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『山奥で暮らす孤独な老人の家にある日、道に迷ったと言う一人の青年が訪ねてくる。その青年を異常なまでに怪しむ老人は一向に警戒を緩めずに喋り続ける。そして2人の長い夜が始まる…』
という、ジャンル的にはサイコスリラーに分類される映画だと思います。偏屈な老人とどこか怪しい青年が会話をし続ける95分なんですけども、基本的にはそれぞれの自分語りばかりなので「今これ何の時間なんだよ!」と言いたくなるぐらいに何映画なのか分からなくなります。
なんですけども、最後の最後まであまりにもわけが分からない上にオチがまったく想像できないため、終始「もしかして今の会話に何かヒントがあるんじゃないか?」と前のめり状態で見てしまいました。結局オチもよく分からないし、後味もなんとも言えないものなんですけどなぜか面白いんです。どこがどう面白かったのかを詳しく説明しろと言われると難しいんですけど、なんかずっと見ていられる作品です。
所々で聖書の内容を題材にしているようですが、どうしても日本だとそこまで馴染みがないこともあり、中々どうしてとっつきにくい部分もあるかもしれません。なもんでその辺りを理解していた方が物語の本質的な部分も分かるのでより楽しめると思います。
老人と青年がずっと謎の会話をし続けるシーンが大半を占める今作なんですけども、『なぜ見ていられるのか』の理由を考えてみると、それはひとえに主人公の老人を名優スティーヴン・ラング氏が演じているというのが大きい要因の一つだと思います。
日本だと「アバター」シリーズのマイルズ•クオリッチ大佐のような悪役や、「ドント・ブリーズ」(’16)の盲目の老人役が特になじみ深いかもしれません。
私の大好きな「ドント・ブリーズ」では過去に戦争で視力を失うも、元々の強靭な肉体に加え、聴力や嗅覚が異常なまでに鍛えられたことで、金品目的で自宅に侵入してきた強盗3人組をボコボコにして返り討ちにする無敵の退役軍人を演じています。強いだけではなく、そのうちの1人である若い女性を拉致し、冷凍保存していた自身の精子を用いて子孫を残そうとするキ〇ガイっぷりを見せつけるなど、見た人全員にとてつもないトラウマを植え付けました。
そんな日本でも大人気の実力派スティーヴン・ラング氏が今作では自身の過去を喋り倒す謎大き偏屈老人を演じているため、意味が分からなくてもずっと見れてしまうんです。これに関しては本当にキャスティング勝ちだと思います。この役を知名度もキャリアもない俳優がやったら「見れたものじゃない!」となる可能性も全然あると思います。
あと余談なんですけど、個人的には同氏が出演している「リトル•パンダの冒険」(’95)が非常に気になりました。昨今は映像作品における動物の扱いが非常に難しいのか、あまり動物メインの映画がありません。あったとしても基本的にはCGによる合成なので、この作品のように本物のパンダが登場する映画というのはかなり貴重なのではないでしょうか。どうにかして視聴してみたいです。
今作で監督を務めたラッキー•マッキー氏(リズム感のある名前ですね)は今作以外にもB級ホラーを中心に数本手掛けており、「MAY-メイ-」(’02)や「ザ・ウーマン•飼育された女」(’11)はかなりの高評価を受けています。「オールドマン」のように相当クセのある作品なのかは定かではありませんが機会があればこちらも見ていきたいと思います。
今作は現在アマゾンプライム、U-NEXT、ABEMA、Lemino、hulu、WOWOWにて配信中です。
◇18万エーカーを超える広大なスモーキー山脈の山奥で暮らす孤独な老人。ある日、彼の家に道に迷ったという青年ジョーが助けを求めて訪ねてくる。しかし老人はジョーが殺人鬼なのではと疑い、警戒を緩めない。そんな老人に対して怯えながらもどこか怪しい対応をするジョーはそうこうしているうちに老人の家で一晩を明かすことになる。ほんの少しずつ心を開いてきた老人は自身の過去をぽつりぽつりと語り始め、ジョーもまた自身の過去や辛い現状を語る。老人は何者なのか、そしてジョーがこの家を見つけたのは本当に偶然だったのか、老人がたびたび口にするラスカルとは何なのか。あらゆる謎が少しずつ明らかになっていく…
という感じでストーリーが展開していきます。
※今回がっつりネタバレしてしまうので、もしあれだったら鑑賞後に読んでいただいたほうが良いかもしれません。
この作品の肝となってくるのが『老人とジョーは何者なのか』という所になってくると思います。
そのあたりのバックボーンが会話というか長尺の自分語りによって明らかになっていく構成になっており、老人に関しては「その昔、訪問販売の仕事をしていた」、「最近は自分のもとを訪ねてきた訪問販売員にクスリを盛って拷問を加えた」、「妻とは別れた、または出ていった」等が明らかになり、ジョーに関しては「ルールを守り、真面目一筋で生きてきた」、「子宝に恵まれず夫婦関係がうまくいってない」、「どうやら妻を殺害しているっぽい」ということが分かってきます。
この会話をよくよく聞いてみると、何かが引っ掛かるというか、この2人って何か関係性があるっぽいぞとなってきます。
そして、完全にネタバレになってしまい恐縮なんですけども、ジョーは老人の過去の姿であり、現実にそこに存在しているわけではありませんでした。つまりは『老人=ジョー』だったわけです。
老人は過去に周囲の言われるがまま真面目に生きてきたものの、子宝に恵まれず、さらには夫婦関係も上手くいっておらず、挙句の果てにはセールスマンが妻と情事に耽っている現場を目撃してしまい逆上。セールスマンも妻も殺害し、おそらくは逃亡の末にこの山小屋に辿り着いたんだと思われます。そして老人は今でも妻を殺めた事を悔いて、罪悪感に耐えきれず、もしくは向き合うために日々過去の自分と対話をし続けていたのではないでしょうか。
これは完全に私の想像なんですけど、もしかしたら老人は刑務所か何かに収容されているけど、罪と向き合うために自分の殻に籠り、山小屋に住んでいる自分自身を妄想の世界に作り出して過去の自分と会話をすることでギリギリの所で自我を保とうとしていたのかもしれません。
『老人=ジョー』は流し見だとしてもかります。なんですけども、それ以外のところで正直分からないところが多々ありました。
まずはラスカルの存在です。
物語の冒頭から度々名前が挙がるんですけども、どうやら老人と一緒に暮らしていたものの、急にどこかに行ってしまった生き物のようです。しかし、家を訪ねてきたジョーに対しても「お前はラスカルか?」と聞くあたりから、犬や猫の類ではないことが伺えます。物語の終盤で満を持して登場したラスカルは黒尽くめのおじさんで、意味深なことばかりを老人に言います。この発言含め、私はラスカルが何だったのか分かりませんでした。
そして、絵本というか、山の伝説みたいなものもストーリーにどういう風にかかっているのかが分かりませんでした。森の中で聞こえた不思議な声や原住民の存在。そしてどんな病気でも治す湖がある等など、この辺りが聖書と関係しているんでしょうか。いまいち最後まで分からなかったです。
この作品のガチ勢の方などいらっしゃいましたらぜひ御教示いただきたいです。
最近は「ほんのちょっとだけどゾンビ出てるからこれはホラー映画だ!」等と無理やりこじつけて、ただただ自分が見たいB級映画を視聴することが多く、今日こそはちゃんとしたホラー映画を見ようと思って今作を選んだんですけども、これもちょっと違いましたね。これは本当に何映画なんでしょうか。
かなりクセのある作品だったんですけど個人的には結構好きでした。評価もあまり高くないんですけど、“つまらない”というよりかは“よくわかんない”というところで評価が下がったように思います。もし気になる方がいらっしゃいましたら是非ご覧になってみてください。
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渋谷裕輝 公式HP↓