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お前の目的は何なんだ!?その名を知るだけで死に至る異形の存在“バイバイマン”はあなたのとこにもやって来る…「バイバイマン」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(722日目)

「バイバイマン」(2016)
ステイシー•タイトル監督

◆あらすじ
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アメリカ、ウィスコンシン州の古い屋敷に引っ越してきた3人の大学生が、ふとしたきっかけで、その名を知った者、口にした者に不幸が訪れるという「バイバイマン」を呼び起こしてしまう。バイバイマンに取り憑かれた3人は協力して互いの命を助け合うが、周囲の人間たちが次々と命を落としていき、次第に追い詰められていく。(映画.comより引用)
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『その名を知った者は死に至るという異形の存在“バイバイマン”のことを偶然知ってしまった主人公たち。バイバイマンに取り憑かれた彼らの周囲の人間が次々と不審な死を遂げる中、ついには彼らも追い詰められていく』

という、王道の“若者巻き込まれ系”のジワジワじっとりホラーです。構成力が素晴らしく、しっかりと恐怖シーンを随所に散りばめながらジャンプスケアも効果的に使用しており、90分の中に起承転結がキレイに収まっているため完成度が非常に高かったです。

こういうボールペンのなぐり書きの絵って不安になりますよね。(映画.comより引用)

ホラー映画のお手本と言いますか、優等生な作品だと思うんですけど、裏を返せば意外性がありませんでした。これはもう完全に好みの問題なんですが、どの恐怖演出やシーン展開もどこかで見たことあるものばかりなので「ここでこうなる」、「このあと大きい音がなる」、「振り返ったらいるぞ」等など全て分かってしまいます。もちろんそれが悪いわけではないんですけども、ホラー通の方々からすると物足りなく感じるかもしれません。

なもんでどちらかというと普段ホラー映画を見ない層でしたり、これからホラー映画を見たいんだけどたくさんあり過ぎてどれを見れば良いのか分からないみたいなライト層の皆様向けの作品かもしれません。

『中古の一軒家=ヤバい』はホラー映画の定石です。(映画.comより引用)

もちろん十分に楽しめるので、この作品をきっかけに「ホラー映画いいじゃん!」となって他の作品も是非手に取っていただけたらなと思います。ホラー映画における恐怖演出の良いとこ取りとも言える作品なのでかなりオススメできます。

そんな今作の監督を務めたステイシー•タイトル氏は監督としては今作が3作目であり、作品の知名度としても今作が一番高いです。ちなみに同氏が2作目として手掛けた「ギャング•オブ•ホラー」(’06)はヒップホップ界の大御所であるスヌープ・ドッグ氏が主演ということでこちらも相当気になってます。

タイトル氏は今作「バイバイマン」(’16)で商業的な成功を収め、次作はブラックコメディ映画を手掛ける予定でした。しかし2017年12月にALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し、闘病生活を送りながら最後の最後まで次作の制作に取り組んでおりましたが、完成には至らず、残念ながら2021年1月にお亡くなりになれました。亡くなる数年前には雑誌のインタビューにて「好きなことをすることが私の遺産の一部になる」とコメントを残しており、生きているうちに何をするのかを今一度考えさせられました。

ちなみに今作の脚本を担当し、普段は俳優としての活動が主なジョナサン•ペナー氏はタイトル氏の旦那様です。今作にも主人公たちが借りることになった家の大家さんとしてワンシーンのみですが出演しております。

現在アマゾンプライム、ABEMA、huluにて配信中です。

https://natalie.mu/eiga/film/172423より引用

◇エリオットは恋人のサーシャ、そして派手な女性関係が原因で寮を追い出されてしまった親友のジョンと三人で古い一軒家を借りて一緒に暮らし始めた。しかし、古いコインに導かれるままにエリオットが発見した中古のナイトテーブルの引き出しには“考えるな”、“言うな”という2つの言葉で埋め尽くされた紙があり、その紙を剥がすと“バイバイマン”という名が刻まれていた。この家に言い表わせない不気味さを感じていたサーシャは霊感のある友人•キムに除霊を依頼。その場でエリオットはついバイバイマンの名を口にしてしまう。それ以来彼らの周囲では不可解な現象が頻発し、バイバイマンの名を知った者や聞いた者に次々と死が待ち受けていた。なんとかして死を回避しようとあの家のこと、そしてバイバイマンを調べていたエリオットは過去に起きた凄惨な殺人事件のことを知る…

というのが今作の細かめのあらすじです。

除霊の最中に“バイバイマン”の名を口にしたことよりも、この家にやって来たことが全ての元凶の始まりだったのかもしれません。(映画.comより引用)

『引っ越し先で何やらヤバいものを見つけ、それが原因で騒動にまきこまれてしまう』という構図自体王道中の王道で、やっぱり見やすいですし誰が見ても楽しめる作品だと思います。先述した通り、最後の最後までしっかりした構成なんですけど、よくよく見てみると「なんで?」とか「そうはならんだろ!」と思えてくる部分もありました。

まず主人公であるエリオットに関する掘り下げが少なく、『なぜ彼女とヤリチンの親友の三人で一軒家に越してきたのか』という導入部分をさらっと流してしまうので、見ているこちら側からするとなぜそのような状況になったのかをもう少し丁寧に教えて欲しかったです。あと個人的には「ヤリチンの親友と彼女一緒にさせておくの嫌じゃない?心配にならない?」と至極当たり前のところが気になってしまいました。

何かしらバックボーンがありそうだけど特に明らかにならない主人公のエリオット(映画.comより引用)

『主人公と彼女と親友の三人でルームシェア』って100%寝取られ確定演出のエロ漫画みたいで、なんかおかしくない?って思ってしまったんですけど海外だと普通なんでしょうか。

確かに、バイバイマンの幻覚や幻聴によってエリオットから見るとジョンはサーシャに気があるような素振りを頻発しますし、寝取られている光景(幻覚)を見てしまうので、もしかしたらあいつならやりかねないというキャラである必要があるのかもですが、別にジョンが女好きという設定がそこまで活かされているわけでもなかったので『エリオットとサーシャ』、『ジョンと彼女』のカップル二組で暮らすみたいな導入でも別に良かった気がします。

ジョンとサーシャ(映画.comより引用)

またエリオットにすごい哀愁があり、常に何かを背負っているかのような素振りや表情をするんですけども、それが一体何なのかが最後まで分かりませんでした。両親を事故で亡くしているようですが、例えばそれが自分のせいで今でも悔やみ続けており、兄はそんな自分を責めずに今まで通りに接してくれるのが彼にとっては逆に辛いみたいなバックボーンがあればいいんですけど、明確に“何があった”という部分は描かれていません。

なもんで優しい兄貴と距離を取ろうとしたりするのがいまいち分からず、クライマックスでせめて兄貴と姪っ子だけは助けなきゃみたいなエリオットが覚悟を見せるシーンも乗り切れませんでした。

バイバイマンに追い詰められるエリオット(映画.comより引用)

本作の肝とも言えるバイバイマンは黒いフードを被っており、最後の方まで素顔が明らかにならない謎の存在です。自身の名前を知った人間に対して、幻覚や幻聴で惑わしたり、また思考などを操ることができるようにも見えます。常に不気味な猟犬を連れており、バイバイマンによって死亡した人間を食べている描写もあります。これが肉体を食べているのか、魂を食べているのかは定かではありません。

バイバイマンという可愛い名前のくせして、やることが毎回えげつないというギャップが非常に良かったです。ただ彼の目的が何なのか、何者なのか等の情報がほぼないのでそこまで親しめないというか、魅力はあまり感じられませんでした。

映画.comより引用

明確な倒し方は無く、前回の事件の唯一の生き残りであるレドモン夫人曰く、「私が無事なのはその名前を知らないから。対処法は名前を知る者が全員死ぬことだけ」とのことで、エリオットに拳銃を渡すだけ。さらにはキムも「知っている人間を全員殺せば、バイバイマンはいないことになる」とエリオットたちのことも殺害しようと計画していました。エリオットは他にも対処法があるはずだと最後の最後まであがき、バイバイマンへの恐怖心を克服すれば幻覚や幻聴の症状が弱まることを発見しており、もしかしたら“強い意志”がバイバイマンへの対抗策となるのかもしれません。

レドモン夫人(映画.comより引用)
キムに幻覚を見せて列車で轢死させる瞬間(映画.comより引用)

どちらかというと、エリオットたちの物語よりも冒頭に描かれていた過去の事件の方がドラマ性があって面白そうでした。

◇バイバイマンが原因で家族や友人を殺害した少年について調査した新聞記者のラリー•レドモン(レドモン夫人の夫)もまたバイバイマンの存在に辿り着いてしまい、精神的に追い込まれた彼はその名を知った人物を散弾銃で次から次へと殺害する

という中々にショッキングな内容なんですけども、ラリー役のリー・ワネル氏の演技が非常に上手く、それもあってかこっちメインで見たいと思ってしまいました。鋼の意志を貫き、バイバイマンの名前を愛する妻にだけは最後まで告げなかったってかっこ良すぎるじゃないですか。

ラリー役のリー・ワネル氏は「ソウ」(’04)のアダム役が非常に印象深いです。(映画.comより引用)
精神に異常を来し、壁中に“考えるな”と“言うな”を書き殴るラリー(映画.comより引用)

クライマックスはあっさりというか、いまいち盛り上がりきらなかったものの、後味の悪いラストは相当好きでした。もし続編が作られるのであれば是非とも前日譚的なエピソード0が見たいです。「呪い襲い殺す」(’14)と「ウィジャビギニング~呪い襲い殺す~」(’16)と同じパターンです。

ちなみにエリオット役のダグラス・スミス氏は「呪い襲い殺す」に出演、バイバイマン役のダグ・ジョーンズ氏は「ウィジャビギニング」の方に出演しています。(映画.comより引用)

もちろん面白いんだけど、外側だけしっかりしており、中身や深みはあんまり無いというのが個人的な素直な感想です。粗削りでもオリジナリティとか熱意や魂みたいなものをもっと見せて欲しかったなと思いました。

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