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松重豊さんの出世作!無口無表情の怪力警備員が贈る地獄の殺戮ショー「地獄の警備員」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(556日目)

「地獄の警備員」(1992)
黒沢清監督

◆あらすじ
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成島秋子はバブル期で急成長中の商社に就職し、絵画取引部門で働き始める。同じ日に入社した警備員の富士丸は元力士だった。彼は過去に殺人を犯したのだが、精神鑑定の結果、無罪となっている。ここでも富士丸は周囲の人間を次から次へと殺害していく。やがて、残業のために会社に残っていた成島秋子は、富士丸と対決することになる。(地獄の警備員Wikipediaより引用)
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これまで見た映画の中でもぶっちぎりで面白かったです!

死ぬまでに一度でいいから映画館の大きいスクリーンでこの作品を見たいです。それくらい良かったです!

『無口無表情の怪力警備員の松重豊さんが鉄の棒を振り回して、無差別殺人を繰り返す』

なんて、どう考えたってつまらないわけがないんですよ。しかも監督は世界の黒沢清監督ですから、見る前からもう極上の面白さが保証されているようなものです。

ということで、見所はストーリーやヒロイン•秋子の存在や成長云々というよりも、やはり松重豊さん演じる元力士の怪力警備員•富士丸の存在に尽きます。

松重豊さん演じる富士丸
(映画.comより引用)

当時は舞台が主戦場で三谷幸喜さん作品の常連ではあったものの、テレビや映画ではほぼ無名だった松重豊さん。いきなり黒沢清監督作品の主演に抜擢され、次々と殺人を繰り返す無口無表情の怪力警備員を演じるわけですから、そりゃあ話題にもなったことでしょう。

映画を見た人からしたら「富士丸怖すぎ!見たことない俳優だし、もしかしたら本当にヤバい人なんじゃない?」とすら思う人が出てきても全然おかしくないですし、業界関係者からしたら「こんな面白い俳優がいたのか!」と引っ張りだこになるのは必然でしょう。

実際、今作は松重豊さんの出世作とも言われています。

松重さん演じる富士丸の魅力は後ほどたっぷり書かせていただきますが、まずはもうこのnoteを読む前にとりあえず見て欲しいです!それくらい良い映画なので!

現在はアマゾンプライム、U-NEXTで配信中です。

Filmarksより引用
デジタルリマスター版のジャケ写もかっこいいです。
(映画.comより引用)

内容は本当にあらすじそのままというか、ものすごく重厚だったり、深い内容だったりではないです。

ですが冒頭の秋子とタクシー運転手の会話や、大杉漣さん演じる久留米が取り引き先と電話をするシーン、警備員同士の何気ないやり取り等など

日常の会話や人柄が現れる所作の一つ一つがめちゃくちゃ面白いです。森田芳光監督作品なんかでも本編と大して関係ない会話や何気ないシーンがすごく面白かったりする印象です。

◇バブル期。とある商社に入社した成島秋子は新設された絵画取引部門に配属される。そして秋子の入社した同じ日にもう一人、警備員としてその会社で働き始めた男がいた。元力士という経歴を持つ、無口無表情の大柄な男•富士丸。彼は力士時代に兄弟子とその愛人を殺害して逮捕されたものの、精神鑑定の結果、無罪となっていた。秋子に歪んだ恋愛感情を抱いた富士丸は秋子を執拗に付け狙い、再び殺人を繰り返すことになる。

といった感じで、ジャンルとしてはサイコスリラーとかクライムホラーにあたると思います。

私の体感ですが、こういうヤバいヤツに狙われる系の作品って、最初は怯えて逃げ惑うも、最後は勇気を出して立ち向かうヒロインの成長物語とかになりがちです。もしくはイケメンの同僚なんかが登場して、恋愛要素を足してきたりするイメージです。

しかし!

今作は先述したあらすじそのままで、イケメンの同僚も登場しなければ、ヒロインの成長や葛藤もそこまでがっつり描かれているわけではありません。

もちろんヒロインの秋子を演じられたクノ真季子(公開当時は久野真紀子として活動)さんの存在感や演技は素晴らしく、富士丸だけでなく、変態上司の久留米や同僚の野々村までもが惹かれるほどの魅力を持ち合わせています。逃げ惑うシーンや富士丸の凶行を止めようと説得を試みるシーン等も今作の見所の一つです。

クノ真季子さん演じるヒロインの秋子
(映画.comより引用)

その他にも、口先だけかと思いきや意外と男気を見せてくれるおサボり上司•兵藤役の長谷川初範さんや、変態上司•久留米役の大杉漣さん、たちの悪い警備員•白井役の内藤剛志さん、秋子の同僚•吉岡役の諏訪太朗さん等など、映画好きには堪らないキャストが勢揃いしています。

豹柄のハンチングを被るキモキモ上司•久留米も作中では中々にヤバいやつで、しかも大杉漣さんが演じていらっしゃるので何割増しかで変態度が上がっています。この久留米のキャラも相当パンチが強くて面白いです。

色々と書きましたが、やはり今作の一番の見所は何と言っても富士丸でしょう。

映画.comより引用

無口&無表情で、殺しにも躊躇いがない。過去には殺人事件も起こしている元力士の大柄な警備員•富士丸。

殺人事件を起こしたこと以外、彼の過去や素性は一切描かれていません。更には、秋子を狙う理由も周囲の人間を次々と殺す理由もほぼ不明です。

一応、秋子を狙う理由に関しては「あんたは突然俺の前に舞い降りた。その時から恋が始まっている。」と中々にロマンチストな発言をしていることから歪んだ恋愛感情を抱き、執着していたと思われます。
秋子が落としたイヤリングの片方を身に着けるあたりにも形容し難い気持ち悪さが出ています。

amazonより引用

ですが周囲の人を殺す理由に関しては「過去の殺人がきっかけで箍が外れている」「元から生粋のサイコパスだった」など見た人のそれぞれの想像で補う他ありません。

表情一つ変えずに、警棒のような鉄の棒でボコボコと人を殴り、まだ息がある状態を確認してから熱湯を顔面にぶっかけるなど容赦ないです。

女性社員•高田をロッカーに押し込み、何度もタックルをしてロッカーごと潰して殺したり、その他にも感電、骨折り、人体破壊とその恵まれた体躯と怪力をフルに活かして殺戮ショーを見せてくれます。

joji.uplink.co.jpより引用

パワーの怖さもありますが、ただただ扉をノックし続けたり、ドアノブをずっと回したり、そこにいるだけみたいな静かな怖さも兼ね備えています。

なのでターゲットを追いかける際に全力疾走などは決してせず、せいぜい点滅してる横断歩道を渡る時くらいの小走りなのがこれまた良いです。体が大きいですから歩幅ももちろん広いので小走りでも追いつけるんだと思います。

終盤には、秋子からなぜこんなことをするのかと尋ねられた際には「俺の体にはあんたらとは違う時間が流れている。絶望的な時間だ。」とこれまた意味深な発言をしますが、ついぞ富士丸の本心や目的は分からず終いでした。

「俺のこと忘れるな」と呟き、秋子の前から立ち去った富士丸はあの時どんなことを思っていたのでしょう。バックボーンや人間性がわからないからこそ我々視聴者を惹き付けるのだと思います。

これはトップクラスに面白かったです!オススメです!

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