“呪い(本物)VS呪い(力技)” 胸糞を心ゆくまで堪能できる隠れた名作「スティーヴン・キング 痩せゆく男」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(480日目)
「スティーヴン・キング 痩せゆく男」(1996)
トム・ホランド監督
◆あらすじ
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人生のすべてに成功を収めた弁護士ビリーにとって、唯一の悩みは食欲が旺盛な事。彼の食欲は四六時中で日に日にひどくなるという状況だった。そんなある夜、ビリーは酔っ払い運転の末、ロマ族(ジプシー)の老婆をひき殺してしまう。警察署長、判事とともにその事件をもみ消すビリー。しかし、彼の前に現れたロマ族の長老レキムにより“痩せていく”呪いをかけられてしまう。最初はダイエットの必要がないと喜ぶビリーだったが…。(洋画専門チャンネル ザ・シネマより引用)
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原作はスティーヴン・キング氏の小説「痩せゆく男」(1984年)で、監督は「チャイルド・プレイ」や「ドール•メーカー」でおなじみのトム・ホランド氏です。
◇ダイエット失敗続きの肥満体の弁護士が自身の不注意でジプシーの老婆を轢き殺してしまったことから呪いをかけられ、どれだけ食べても日に日に痩せ細っていく…
という
一見嬉しいことのように思える“痩せる”を恐怖として描くのがこれまたスティーヴン・キング氏らしいですね。
肥満体だった主人公ビリー•ハリック(ロバート・ジョン・バーク)がどんどん痩せ細っていく様子が実にリアルで今見てもその特殊メイクは非常にクオリティが高いです。
特殊メイクはマイケル・ジャクソンのMV「スリラー」なども担当したグレック・キャノン氏が務めました。
現在、アマゾンプライムで4月末まで100円で視聴可能です。
轢いてしまったのはもちろん悪いことだけど、急に飛び出してきた住所不定の万引き老婆にも非があるし、いくらなんでもそんなひどい呪い(死ぬまで痩せ続ける)にかけられるだなんて流石にかわいそうでは…
と思ってしまいそうなところですが轢いた張本人でもあるビリーは正直あんまりいいヤツではありません。
弁護士としての腕は確かですが、金のためにマフィアを無罪にして借りを作るし、それを朝食の席で妻や娘にいじられても笑い飛ばすくらいに正義感がありません。
ジプシーの老婆を轢いてしまった際も老婆が急に飛び出して来たのは事実ですが、ビリーは飲酒&助手席にいた妻に尺八をして貰っており、よそ見をしていた状態なので情状酌量の余地は皆無です。
しかも判事や署長と口裏を合わせ、見事無罪を勝ち取り「そもそも俺は何も悪くない」と開き直っているので激ヤバな呪いをかけられても仕方がありません。
最初はどれだけ食べても痩せていくことにウキウキなビリーでしたが、急激な痩せ具合に加え、自分に味方した判事や署長までもが呪いにかけられ見るも無惨な姿となった事、妻が自分の担当医であるマイクと不倫してるっぽい等
様々なことが重なった結果、ビリーは自身に呪いをかけたジプシーの長•レムキを探す旅に出ます。
ようやっとレムキたちを見つけて心からの謝罪、そして呪いを解くよう懇願するビリーですがジプシーたちに一蹴され、更には破壊力が強すぎるパチンコで掌に穴を空けられます。
ここでビリーは鬼の形相で
「俺が呪いをかけてやる」
「町の白人の呪いだ」
と言い、ジプシーたちの笑い声を背に集落を後にします。
失うものなどもう何も無い男が怒りの沸点を越えた時に見せる呪いとはどんなものだろうと期待値が爆上がりしましたが、当然ビリーには呪いをかける力などありません。
そのため以前借りを作ったマフィアのジネリを招集し、呪い(本物)に対して呪い(力技)で対抗し始めます。
ジネリはマフィアですが義理人情に厚い作中屈指のナイスガイなのでもちろんビリーに力を貸し、単独でジプシーの集落を夜襲して銃乱射。翌日には警察のフリをして潜入し、レムキのひ孫を拉致。ビリーとレムキの一対一の話し合いの場を設けるよう脅迫します。
このジネリの行動ひとつひとつが本物のマフィアらしいと言いますか、人質を盾にしたり、硫酸を顔にかけようとしたりと本当に恐ろしいです。
これ以上襲撃されてはたまったもんじゃないレムキはこうしてビリーの呪いを解きます。この呪いの解き方がまたスティーヴン・キングらしくて
「呪いを解きたいならまずこのパイに呪いを移せ」
「そしてこのパイを誰かに食わせろ」
と持参したイチゴのパイにビリーの血を垂らして、“これを食ったヤツはたちまち死ぬ”ということを教えます。
ここでレムキがビリーの方を真っ直ぐ見つめながら「だが良心があるなら自分で食ったらどうだ」と呟くシーンは痺れました。
でもビリーはすでに引き返せないところまで来てしまっているためレムキの発言に聞く耳を持たず、不気味に胎動するイチゴのパイを持ち帰ります。
この後はだいたい想像通りのオチなんですけど後味が悪く、胸糞を心ゆくまで堪能できます。
あまり知名度のある作品ではないですが個人的にはかなり面白かったです。
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