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マッチョでサイコな変態鎧おじさん、あんたはいったい何者なのさ!?シーンごとにジャンルが変わるトンデモぶっ飛びスプラッター!「ツイてない男」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(757日目)

「ツイてない男」(2007)
キット•ライアン監督

◆あらすじ
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盗みのプロのリッチーはオークション会場でダイヤモンドの強奪を図るも、交通事故に遭ってあえなく失敗。雇い主にラストチャンスとして与えられた次の仕事はモスクワのマフィアから黄金の十字架を奪ってくること。現地の仲間2人と組んで仕事に取り掛かるも、仲間の一人が殺人を犯してしまう。警察の罠によって、未使用のフロアに閉じこめられたリッチーたちとエレベーターに乗りあわせた民間人。だがそのフロアには、さらにやっかいな人物が潜んでいて…。(Amazon.co.jpより引用)
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『とある大企業のビルに強盗に入った主人公たちと人質にされた民間人が、改修工事中のフロアで謎の鎧男に襲われる』というブラックコメディ満載のスプラッターホラーなんですけども、これはちょっとヤバいですね。ちなみに原題の「BOTCHED」は“失敗した”とか“やらかした”みたいな意味です。

基本的には『改修工事中のフロアから主人公たちが脱出する』というのがメインのお話なんですけども、そこに突然ヒゲ面のムキムキマッチョマンの変態鎧騎士が襲いかかってくるし、人質の一人だった自称殺し屋は役立たずだし、気弱なメガネくんは覚醒するし、カルト宗教に傾倒してるおばちゃんは容赦なく殺人を犯すし、主人公の仲間はその宗教にハマっちゃうしで、中盤以降はずっとカオス状態です。

主人公のリッチー(https://youtu.be/R5Fkz6E4BuQ?si=qDE3CSQR1nrcLW1Uより引用)

シーンごとにサスペンス、スプラッター、ホラー、ミステリー、コメディとジャンルがころころ変わり、無音のシーンが続くと思ったらいきなりパリピな明るい音楽が爆音で流れる中で鎧おじさんが踊りながら陽気に人を殺したりするので脳がバグります笑

なんですけども、これだけ無茶苦茶なのにストーリーが破綻していないのが見事というか、破綻しそうでしないギリギリの状態でゴールテープを切ったことに感動すら覚えました。こんな映画初めてみました!圧巻の一言です!めちゃくちゃ面白かったです!

問題の鎧おじさん(https://youtu.be/R5Fkz6E4BuQ?si=qDE3CSQR1nrcLW1Uより引用)

脱出不可能となった入り組んだフロアにおいて、主人公たち(主人公、ヒロイン、自称殺し屋、メガネくん)と宗教おばちゃんの一派(リーダーとその子分2人、引き入れられてしまった主人公の仲間)の間で対立構造が生まれ、殺し合いに発展するだけでも十分面白いです。

そこへまた異分子にも程がある謎の鎧おじさんが投入されるわけですから、最初は「どういうこと?意味わからん!」となります。ですが、このおじさんがただの舞台装置や飛び道具ではなく、最後の最後までストーリーに関わってくるのが本当にトチ狂ってるんですけどなぜか物語は成立しています。

その他のキャラクターも一切の無駄がなく、全員が全員しっかりと機能しています。さらにはこんなぶっ飛んだストーリーのくせに意外にも伏線を張り巡らせており、中盤以降のここぞのタイミングで回収していくのが非常に心地よかったです。

このドブネズミすらも伏線です。(https://youtu.be/R5Fkz6E4BuQ?si=qDE3CSQR1nrcLW1Uより引用)

今作のジャケ写にもデカデカと書いてあるんですけども、この作品はスティーヴン・ドーフ氏が主演であることもかなりの売りにしています。

同氏は幼少期から子役としていくつかのCMに出演し、80年代から本格的に俳優としてのキャリアをスタート。当初は脇役ばかりでしたが、1998年にはマーベル・コミック原作の「ブレイド」にてメインヴィランのヴァンパイア役を演じたり、2006年にはノンフィクション映画「ワールド・トレード・センター」でメインキャストに選ばれるなど、今でも第一線でご活躍中です。

スティーヴン・ドーフWikipediaより引用

余談ですが、ドーフ氏は誰もが知る名作映画「タイタニック」(’97)の主演オファーを受けていたそうです。しかし役のイメージがいつまでもついて回りそうだということで断ってしまったとのことです。

ちなみに今作は日本では劇場公開スルーされてしまいましたが、ニューヨーク•ホラー•フィルム•フェスティバルにおいて作品賞と主演男優賞を獲得するなどそれなりに評価を受けているようです。

なお今作の監督を務めたキット•ライアン氏に関してはこの作品以外の情報が一切ありません。脚本家もレイモンド&イーモンのフリール兄弟とデレク•ボイル氏がクレジットされていますが、ボイル氏とレイモンド氏が「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ等でお馴染みのオーランド・ブルーム氏の初主演映画「チャンピオン 明日へのタイトマッチ」(’04)で共同脚本を務めた以外の情報は出てきませんでした。

こちらの作品に関しては『毎日牛乳を飲んでいたおかげで実は体がめちゃくちゃ頑丈になっていた牛乳配達員の気弱な青年が、ひょんなことから世界チャンピオンと対戦することになる』というスポーツコメディだそうです。こちらも日本では劇場公開スルーされたそうですが面白そうですね。現在はU-NEXTでのみ配信中のようです。

個人的にはめちゃくちゃオススメな今作なんですけども、惜しむらくは現在どこのサブスク等でも配信してないことです。私は西荻窪のTSUTAYAを利用させてもらいましたが、またアマゾンプライム等で配信やレンタルが始まりましたらアナウンスさせていただきます!

ジャケ写に写っている唯一の人物が主人公ではなく、終盤に覚醒する気弱なメガネくんだというところもエッジが効いていて良いですね!(Amazon.co.jpより引用)

◇かつて世話になったマフィアのボスの頼みでオークション会場から宝石を盗み出したリッチーは逃走中の事故により、計画は失敗に終わる。そんな彼にボスは最後のチャンスとばかりに今度はモスクワの大企業が所有している初代ロシア皇帝イワン4世の十字架を盗んでくるよう命じる。現地で仲間と合流したリッチーは順調にお目当ての超高層ビルに潜入するも、気の短い仲間の一人が無関係の市民を射殺してしまったことで事態は一変。作業員を装って乗っていたエレベーターは停止してしまい、彼らは偶然乗り合わせていた市民数名を人質に取り、改修工事中のフロアへと降りる羽目になる。どうにかして逃走する方法を模索する中、突如として鎧を着た大男が襲いかかり、彼らは散り散りになってしまう。様々な思惑が交差する中でリッチーは無事にビルから脱出することが出来るのか。

というのが今作の細かめのあらすじです。

停止したエレベーター内(https://youtu.be/R5Fkz6E4BuQ?si=qDE3CSQR1nrcLW1Uより引用)

『マフィアからの命令で仲間らとともに高層ビルに潜入する』という導入だけを見るとどう考えてもホラーには思えません。その後、逃走に失敗したリッチーたちは人質を取って途中の階に降りるんですけども、「ここから先何をどうしたらホラーになるんだ?」と少し心配にすらなってきます。

ですが!

その後、警察を名乗る男から無線で人質の解放を求められたリッチーたちはとりあえず時間を稼ぐために一人だけ解放しようとエレベーターまで連れていくんですけども、人質の青年は突然開いたエレベーターから飛び出してきた高枝鋏で首を撥ねられてしまいます。

ここまででホラー要素やバイオレンス要素が皆無だったため、このシーンはまったく予想がつかずインパクト大でした。

この直後に首ちょんぱされる青年。作中のグロ描写はどれも秀逸です。(https://youtu.be/R5Fkz6E4BuQ?si=qDE3CSQR1nrcLW1Uより引用)

その後は一気にデスゲームのようなサイコスリラーのようなカオスな展開へと突入するんですけども、先述したように主人公たちと宗教おばちゃん一派の対立構造が生まれ、なぜか大量のトラップが仕掛けられてるフロアで逃げたり追われたり、そして鎧おじさんの登場とノンストップで突っ走ります。

キャラクターが非常に魅力的というか、爆裂に濃い目の味付けなのがかなり好みでした。

主人公リッチーの仲間であるピーターとユーリの兄弟は兄のピーターは粗暴で気が短いトラブルメーカーで、ユーリは非常に気が弱くてピーターに怒られてばかり。途中からは宗教おばちゃんの言いなりになってしまいます。

兄のピーターは「ホームアローン」シリーズのハリー(泥棒)っぽさもありました。(https://youtu.be/R5Fkz6E4BuQ?si=qDE3CSQR1nrcLW1Uより引用)
宗教おばちゃんのソニア。画像左がユーリです。(https://youtu.be/R5Fkz6E4BuQ?si=qDE3CSQR1nrcLW1Uより引用)

そこへ王道ヒロインのキャリアウーマン•アンナ、気弱なメガネくん•ドミトリ、特殊部隊出身で現在は自称殺し屋のボリス、ソニアを筆頭とした宗教おばちゃん三人組、そして謎の鎧おじさんと濃いメンツが勢揃いしています。

アンナと鎧おじさん(https://m.imdb.com/title/tt0790590/?ref_=tt_mv_closeより引用)
作中で一番危険な目に遭う気弱なメガネくん•ドミトリ(https://youtu.be/R5Fkz6E4BuQ?si=qDE3CSQR1nrcLW1Uより引用)
自分で仕掛けた罠で片手を失うポンコツ殺し屋•ボリス(https://youtu.be/R5Fkz6E4BuQ?si=qDE3CSQR1nrcLW1Uより引用)

これだけ周りが濃ければ主人公のリッチーは本来であれば霞んでしまいそうなものですが、これが不思議とちゃんと主人公としてしっかり機能していますし、影の薄さなど微塵もありません。めちゃくちゃかっこいいです。

騒動を経てイイ感じの雰囲気になるリッチーとアンナ(https://m.imdb.com/title/tt0790590/?ref_=tt_mv_closeより引用)

あと、そんなに重要ではないんですけども、ネタバレ的なところで言うと、謎の鎧男と宗教おばちゃん(ソニア)は双子の姉弟で、初代ロシア皇帝であるイワン4世の末裔であることが中盤で明らかになります。

彼らは雷帝復活のために生贄を捧げており、ビルの改修工事のフロアにある隠し部屋にて殺人を繰り返していたと思われます。(もし違ったらすいません…)

作中で一番ヤバいやつだったソニア
(https://m.imdb.com/title/tt0790590/?ref_=tt_mv_closeより引用)

そこへ聖遺物でもある大切な十字架がリッチーたちによって盗まれたわけですから、当然姉弟は怒り心頭。ソニアは人質のフリをして潜り込み、鎧おじさん(弟)は改修工事フロアに待機して秘密のモニター部屋から彼らの動向を監視しつつ、トラップを発動したり、自ら襲いかかったりと凶行に及んでいました。

この辺りの生贄を捧げる理由や殺害した人の顔面の皮を剥いで貼り付けたり、臓器を保管したり、死体を吊るす意味がいまいち分かりませんでした。

パワープレイのコメディスタイルなので勢いそのままに最後まで突っ走るため個人的にはそこまで気になりませんし、そこが分かったところであんまり物語の理解度には関係ないかもしれませんが、ちょっとだけごちゃごちゃっとしていました。

そのあたりはもしかしたら脚本家が3人いたのが関係しているかもしれません。各々のやりたいことを全部詰め込んじゃった可能性も無きにしもあらずです。

例の十字架やマフィアのボスも最後まで物語に大きく関わってきます。(https://youtu.be/R5Fkz6E4BuQ?si=qDE3CSQR1nrcLW1Uより引用)

少々粗が目立ちますし、パワーで乗り切っている感も否めないんですけど、個人的には勢いがあってかなり面白かったです。型破りすぎて一切先が読めない作品はやっぱりテンションが上がります。大分マイナーな作品かもですが思わぬ掘り出し物に出会えました。この作品は今後も推していきたいです!

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