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コンプラ完全無視の超ド級のぶっ飛び具合が素晴らしい!荒々しい熱量でお送りするエログロ満載B級カルトホラー「処刑軍団ザップ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(693日目)

「処刑軍団ザップ」(1970)
デヴィッド•ダーストン監督

◆あらすじ
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ニューヨーク州バレービル。人口40人程の小さな町に“サタンの息子たち"を名乗るヒッピー集団がやって来る。町中で暴れまわる彼らに報復するため、少年ピートはミートパイに 狂犬の血を入れるが、それを食べたヒッピーたちは狂人と化し、仲間内で殺し合い、更には町の住人を襲い始める――。(Amazon.co.jpより引用)
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今まで見た映画の中で一番ぶっ飛んでるかもしれません!これは本当に凄いですね!

一見ただのコンプラ完全無視のエログロカルトホラー映画なんですけども、その荒々しい熱量に終始圧倒されました。初めて「悪魔のいけにえ」(’74)を見たときと同じ感覚かもしれません。

『カルト宗教に傾倒するヒッピー集団の乱暴狼藉っぷりに憤慨した幼い少年。彼が狂犬病の犬の血を混入させたパイをヒッピー達に食べさせた結果、狂人と化したヒッピー達は次々と町の人々を襲い始める』

という、とんでもないイカれ具合なんですけどもすごいちゃんとしてるんですよ。

このジャケ写からしてイカれ具合が半端じゃないです。
ちなみに真ん中の生首持ってるおじさんはめちゃくちゃ脇役です。(Amazon.co.jpより引用)

おそらくは予算も相当限られている中、ダーストン監督の顔なじみの俳優や無名の俳優を中心にキャスティングし、スタントを雇うお金も無いため各々が自らスタントも務め、衣装や小道具も自分たちで持ち寄ったりと、撮影環境は決して恵まれたものではなかったかもしれません。

しかし、そんな環境で全員が団結して同じ方向に突き進んだからこそ今作は今でもマニアから愛される一作となっているのかもしれません。

詳しくは後述しますが、DVDに収録されているコメンタリーでは出演者が撮影時の環境の悪さや監督に殴られた等の不満を暴露し、非常にばつが悪そうなダーストン監督が話を濁す一幕もありました。そのため決して皆が皆、「良い作品にするぞ!頑張るぞ」という感じではなかったのかもしれません。

日本では1978年に公開され、その後2018年にデジタルリマスター版が新宿シネマカリテにて期間限定で上映されました。(natalie.muより引用)

今作が製作された経緯としては

当時数々のエクスプロイテーション映画を生み出していたCinemation Industriesのプロデューサーであるジェリー•グロス氏から今まで見たことがないようなホラー映画を低予算で作って欲しいとダーストン監督のもとに依頼が来ました。

※エクスプロイテーション映画とは

1950年代以降に量産されたアメリカ映画のジャンルの一つで、興行成績をあげるため、センセーショナルな時事問題やタブーとされる題材(暴力や露骨な性描写)をあえて取り上げている低俗な作品群を指す。チケットの売れ行きを伸ばす狙いで、テーマの話題性を「利用・搾取する(exploit)」ため、この呼び名がある。

エクスプロイテーション映画Wikipediaより抜粋

同監督は狼男やらドラキュラのようなベタなものは駄目だと言われた手前、さてどうするものかと考えていたところ、『イラクの山奥の村で狂犬病の狼が子供たちを襲った』という記事を新聞で偶然見つけました。何か惹かれるものがあったのか、実際に治療に携わった医師に現場の様子を収めた映像を見せてもらったところ、狂犬病に罹った子供たちが口から泡を吹いて檻に入れられている様子に衝撃を受けたそうです。

ダーストン監督曰く

「それは私の後頭部の毛を逆立たせた。私は、人生でこれほど恐ろしいものを見たことは無かった」

処刑軍団ザップWikipediaより引用

とのことで、ここから着想を得て製作に取り掛かりました。この狂犬病や恐水症の恐怖というものをベースにし、そこへチャールズ・マンソンの事件等に見られるカルト要素を足すことでよりストーリーに厚みを増して完成にこぎつけたそうです。

内容が過激かつ不謹慎なこともあり、現在配信などはないようです。私は五反田のTSUTAYAを利用させていただきました。

Filmarksより引用

ストーリー自体は冒頭に記載したあらすじの通りというか、伏線みたいなものは特にありません。

『横暴なヒッピーたちが町で悪さを繰り返し、それに憤慨した少年が狂犬病の犬の血を混入したパイをヒッピーたちに食べさせたところ、全員狂人と化してしまい、敵味方関係なく殺し合いを繰り広げる』

というシンプルなお話ですが、その設定は不謹慎かつぶっ飛んでいますし、最終的には狂人と化したヒッピーの女性と行為に及んだダム工事の作業員たちも全員同じように狂人となって殺戮を行うというとんでもないクライマックスに突入します。

口から泡を吹きながらナタを振り回す屈強な男たちが大挙して家屋を破壊したり、車をひっくり返すシーンは見応え抜群です。またヒッピー集団も、そんな彼らに被害を被る側の町の人々もしっかりとキャラがあるため作品に厚みが増しています。

こんなことになっちゃいます。(natalie.muより引用)

いわゆる悪い奴らが狂犬病に罹って狂人と化して暴れまくるというだけだと話が弱いと思ったのか、ここにカルト宗教の要素を足してテコ入れを図っております。

個人的にはこの要素が些か中途半端に感じました。冒頭のサタン崇拝の儀式以外であまりこのカルト宗教が物語に絡んで来ることがなく、一応それっぽいことを言ったりやったりはしているものの、無くても成立するため、「ならいっそのこと最初からその設定は取っ払っても良かったのでは?」と思ってしまいました。

なんですけども、この冒頭の儀式のシーンは全員全裸だったり、生きた鶏を殺して生き血を啜ったりととにかくめちゃくちゃで、掴みとしては満点かもしれません。強烈に惹きつけられました。

ちなみに特に誰とは言及されなかったものの、本作の出演者の中にガチの悪魔崇拝者がいたらしく、この儀式のシーンで主にホーレス(ヒッピーのリーダー格)が発するセリフや儀式の作法(全員全裸や鶏の生き血を啜る)などは実際の儀式とほぼ同じものだったそうです。

また、ホーレス役のバスカール氏曰く、撮影日はとても寒くて全裸になるのが非常に嫌で、さらには陰部を晒すのも嫌だとゴネた結果、地面に突き刺した刀剣の後ろに立つことでカメラに股間が映らないようにしてもらったと証言していました。

ここからはこの作品にまつわるエピソードをいくつか紹介していきますので、もし御興味ありましたらば最後までお付き合いください。
※主にDVDに収録されているコメンタリーから抜粋させていただきました。

原題は「I DRINK YOUR BLOOD」(オマエの血を飲んでやる)で、邦題は「処刑軍団ザップ」です。しかし作中に血を飲むシーンは一度も無く、なんならヒッピーたちが狂犬病の犬の血を飲まされています。さらに“処刑軍団”という軍団も“ザップ”という人物も一切登場しません。完全に雰囲気で付けたタイトルです。今作のWikipediaにも「邦題・原題共に内容とは特に関係ない」と明記されております。

元々ダーストン監督は「Phobia」(恐怖症)または「Hydro-Phobia」(水恐怖症)というタイトルを付けようとしておりましたが、映画の製作を持ちかけたプロデューサーのジェリー•グロス氏による独断で、ダーストン氏に相談もなく勝手に変更してしまったそうです。おそらくは暴力描写の規制等で色々と揉めたことで、「I DRINK YOUR BLOOD」の方が上映しやすいと考えたのではないでしょうか。

ちなみに口の泡はシェービングクリームを使用したそうです。(Amazon.co.jpより引用)

撮影場所にはゴーストタウンと化した町シャロンスプリングスを利用し、ヒッピー達が根城にする廃ホテルは数ヶ月後には取り壊しが決まっていたこともあり、300ドルを町側に支払ったことで撮影中に壁をぶち壊そうが何をしようが好き勝手できたそうです。町の住人たちとはあまり関係性が良好ではなかったようで、ダーストン監督の熱い演技指導が暴力や虐めだと思われて警察を呼ばれたりもしたそうです。

なお、冒頭のサタン崇拝の儀式のシーンにおける生きた鶏を締めて生き血を啜るシーンでは、本物の生きた鶏の首をナイフで掻っ切っており、鶏は首を切られた後もまだ少し息があることが伺えます。その他にも作中に登場する動物に関しては基本的には本物を使用しており、ヤギやネズミの死骸も本物です。廃ホテルでヒッピーたちがネズミを追い回すシーンでは訓練を受けた賢いネズミを用いて、それとは別の死骸用に近所にあった研究所の動物実験用の白ネズミの死骸を貰い、それを普通のネズミのように着色したそうです。

ちなみに中盤で狂人と化したホーレスが檻に入っている大きなヘビを首に巻くシーンがありますが、このヘビは撮影時の照明が暑すぎたせいでその後死んでしまったそうです。

ホーレスと後に死ぬ可哀想なヘビ(Amazon.co.jpより引用)

ヒッピーの中ではまだ良心的な青年アンディが終盤で狂人と化した作業員たちに首を刎ねられるシーンは作中屈指のインパクトを誇ります。そのアンディの生首は今見ると少々作り物っぽさもありますが、しっかりと本人の石膏を取り、髪型も本人にかなり寄せたそうです。

石膏を取る際、専門的な知識のあるスタッフがおらず、見様見真似でやったため、アンディ役のタイド•キーニー氏の眉毛も石膏で固められてしまい取れなくなったと御本人が証言していました。

ちなみに監督に殴られたと証言したのもキーニー氏です。本人は笑い話として話していましたが、それを聞いていた監督の表情は曇っていました。(Amazon.co.jpより引用)

ちなみにこの生首の製作費は2300ドルだったとダーストン監督が発言しており、これを現在の価値に換算するとおよそ83万円となります。(1970年のドル•円相場は1ドル=360円程)

耳の不自由なヒッピー役のリン•ローリー氏はセリフが一つも無いにも関わらず、その可憐な容姿や電動包丁で女性の手首を切断するなどの強烈なシーンでべらぼうにインパクトを残しており、後にジョージ・A・ロメロ監督の「ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖」(’73)にも出演を果たすなど売れっ子俳優の仲間入りを果たしました。

切断した手首をしげしげと見つめるリン•ローリー氏
ちなみにこのシーンで使用した電動包丁はホーレス役のバスカール氏の私物だそうです。(moviewalker.jpより引用)

ダーストン監督曰く、全キャストがもうすでに決まった段階でローリー氏から出演させて欲しいと直談判されたそうで、その美しさや存在感を無碍にするわけにはいかないと、新たに追加した役で出演が決まりました。ちなみにエンディングのクレジットに彼女の名前はありませんが、これは彼女が当時メロドラマに出演していたため、そのイメージとあまりにもかけ離れてしまうから名前を出さないでくれと頼まれて外したそうです。

これは相当インパクトがありますし、カルトホラー映画としてかなり面白いと思います。配信が無いため、中々見る機会はないかもしれませんが個人的にはオススメです!

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