“間違ったターン”再び!!サバイバルゲームの参加者たちを襲うマウンテンマンの恐怖!グロ描写がエグいのなんのって!「クライモリ デッド・エンド」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(775日目)
「クライモリ デッド・エンド」(2007)
ジョー・リンチ監督
◆あらすじ
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5日間のサバイバルゲームで生き残れば賞金10万ドルがもらえるというリアリティ番組を撮影するため、6人の参加者とスタッフたちが「アポカリプス」と呼ばれる森を訪れた。車で撮影現場へ向かっていた参加者キンバリーは、その途中で何者かに襲われ、オノで身体を真っ二つに割られてしまう。実はこの森には、残忍な人喰い一家が暮らしていたのだ。何も知らずに森の奥へと足を踏み入れてしまった参加者たちは、1人また1人と惨殺されていく。(映画.comより引用)
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『山でサバイバルを行うリアリティ番組のために集まったスタッフと出演者。そんな彼らが一人また一人と何者かによって惨殺されていく。この山には一体何が潜んでいるのか!?』
という王道のスプラッターホラーです。
私も個人的にかなりお気に入りのシリーズ「クライモリ」の2作目になりますが、内容的にもおそらくは前作との直接的な繋がりがないため、この2作目から見ていただいてもまったく問題ないです。
前作と比べるとややB級ホラーによってしまった感がありましたが、それをもろともしない程の破壊力を誇るスプラッター描写の数々がまぁ出色の出来です。しかもそれが冒頭のなんてこと無いシーンでいきなり起こるのでべらぼうに衝撃を受けます。
ちなみに冒頭の人間縦割りシーンはかなり有名だそうで、おそらく違法ですがYouTubeなどにはそのシーンを切り取った映像がアップされています。
尺的にもエンディング込みで97分とちょうど良く、アクションとスプラッターのバランスも申し分なく、心ゆくまでエログロを楽しめる作品ではありますが、強いて気になるところを挙げるとしたら
•作中で出演者たちが参加することになるサバイバル番組「アポカリプス」の演出やルールが安っぽすぎる
というところでしょうか。
説明するのが少々難しいんですけど、いわゆる劇中劇とも言える「アポカリプス」のオープニング映像の演出やテロップみたいなものに尽くセンスが感じられません。
もちろんそういう安っぽいローカル番組なので敢えてダサいものにしているのは分かるんですけども、まだ視聴者がこの映画が面白いかどうかを見定めている序盤でそのシーンが流れるため、ここで一回興味を失ってしまう方もいるかもしれません。
また作中では躊躇なく命を狙ってくる山人たちを相手に獅子奮迅の活躍を見せる「アポカリプス」の鬼軍曹兼MCのマーフィーがこの番組のルール説明をするんですけども、それが長いうえに分かりづらく、またその後そのルールが作中において活かされることがほぼないため、聞き流してもまったく問題ありません。なもんでこのシーンもちょっとしんどかったです。
ですが、それ以降はテンポが良く、コンスタントにグロ描写や戦闘シーンを入れてくれるので最後までしっかり楽しめます。
登場人物も鬼軍曹のマーフィーはもちろんのこと、主人公かと思いきや秒殺されるマーラ、正義感が強いスポーツマンのジェイク、実質ヒロインのニーナ、元軍人のアンバー等などほぼほぼ全員がしっかり機能しておりとても良かったです。
また、彼らに襲いかかる謎の存在•マウンテンマン(山人)は前作よりもその数が増え、各々のアイデンティティというか自我みたいなものがより強調された演出になっており、これもまた中々に面白かったでしは。
ちなみに前作の「クライモリ」(’03)は余計なことはせず、シンプルに脚本と演出の面白さだけで勝負する硬派な作品に仕上がっており、非常に見応えがあってどハマりしました。
“ホラーの帝王”スティーヴン・キング氏は米book誌のインタビューにて「クライモリ」をその年のベストワン映画に挙げておりますし、私ももし「オススメのホラー映画は?」と聞かれたら、割と早い段階で今作を挙げると思います。
現在までに続編は6作作られており、さらにはリブート版、また、全然関係の無いB級ホラー映画に邦題で“クライモリ”を付け足した類似作が3作確認されています。
シリーズを重ねるごとに評価は下がっておりますが、2作目となる今作もかなりの良作です!
そして!
今作は“間違ったターン”としても知られる作品です。
上記の画像を見ればお分かりの通り、2021年頃から配信が始まったAmazonプライムでは原題の「Wrong Turn」を思いっきり直訳した「間違ったターン」と表されたまま配信されています。そのため“クライモリ”で検索してもヒットしませんので“Wrong Turn”または“間違ったターン”で検索してください。
また2021年に公開されたリブート版もかなりの完成度を誇っており、こちらも相当面白いです。
王道のホラー映画が見たいならオリジナル版、エンタメとしても楽しみたいならリブート版といった感じでしょうか。両作ともにAmazonプライムで配信中ですのでご興味がある方は是非!どちらもオススメです!
そして今作で監督を務めたジョー・リンチ氏は主にマニアックなB級ホラー映画を手掛けておりますが、2017年にはウォーキング・デッドシリーズのグレン役でお馴染みのスティーヴン・ユァン氏を主演に迎えたバイオレンスホラー映画「Z inc. ゼット•インク」等、近年では商業向けの映画も手掛けております。
最新作となる「Suitable Flesh」(’23)(日本未公開)はラヴクラフトの「戸口にあらわれたもの」を題材にしたホラーのようで、こちらも非常に興味深いです。
ちなみにそのお名前から、先日亡くなられた“カルトの帝王”デイヴィッド・リンチ氏と血縁関係にあるかと思いましたが特に関係はないようです。ちなみにデイヴィッド・リンチ氏の実娘であるジェニファー氏は父と同じく映画監督の道に進んでおり、最近ではテレビドラマ等でも活躍していらっしゃいます。
そして今作は現在配信等はないようですが、Amazonプライム、DMMTV、楽天TVでレンタル(440円〜)が可能です。
◇5日に渡るサバイバルゲームで最後まで生き残れば賞金10万ドルを獲得できるリアリティ番組「アポカリプス」の撮影のため、とある山中に集まったスタッフと出演者たち。しかし出演予定だった女優•キンバリーがいつまで経っても来ない。仕方なくプロデューサーのマーラが代わりに参加し、鬼軍曹兼MCのマーフィーに仕切られながら二人一組のペアを作った出演者たちは賞金や売名など各々の目的のために奮闘する。しかしそんな彼らを物陰から覗く怪しい男たち。そして一人また一人と出演者やスタッフが惨殺されていく。果たしてこの山には一体何が潜んでいるのか!?
というのが今作の細かめのあらすじです。
という、この冒頭のシーンで私は一気に心を掴まれました。
なんですけども、その後すぐに先述したチープなテレビ番組の演出が入ってしまうため、個人的にはここで一回気持ちが切れてしまいました。このあたりは好みが別れるかもしれないですし、その日の気分とかにもよるかもです。
その後は鬼軍曹マーフィー仕切りの下、なんか分かるようでよく分からんこのサバイバルゲームのルールが説明され、6人の参加者は二人一組のペアを作り、別行動を取ります。
•スポーツマンのジェイクとエロ担当のエレーナ
•元軍人のアンバーととにかく下ネタを言うお調子者のジョンジー
•あまり心を開かないニーナとキンバリーの代わりに参加することになったプロデューサーのマーラ
各ペアは山の中で食料をゲットしたり、カードをゲットしたりと順調に課題をこなすも、番組側の仕込みであるエレーナは指示通りジェイクに色仕掛けをするも袖にされ、仕方なく番組のディレクターでマーラの恋人であるマイケルと好意に及びます。
そしてそれを物陰から見ている怪しい男は一人になったエレーナが川辺で日光浴をしている姿を見ながら欲情し、自慰行為に耽る。そんな男の姿を目撃した妻は憤慨し、怒りそのままにエレーナを惨殺してしまいます。
時を同じくしてマーフィーも何者かの襲撃を受け、マーラも背後から斧の直撃によって死亡。
なんと!
この山にはマウンテンマン(山人)が住み着いており、人肉を主食とする彼らは此処ぞとばかりにマーフィーたちを襲っていたのです。
前作のマウンテンマンは近親婚やそれに伴う遺伝子変異などで特異的な容姿となり、暴力的な性格、独自の言語、異常なまでのタフさと筋力の発達などが特徴的です。
そして今作のマウンテンマンは元々山で暮らしていた一族が近くの製紙工事から流れ出した化学薬品のせいで容姿に変化が現れ、その子供同士の近親婚によってさらに特異的になっていったというものです。
この経緯でなぜカニバリズムや車に撥ねられてもピンピンしている強靭な肉体を手に入れたのかはよくわかりませんがそういう設定です。なもんで前作とは微妙に異なるため、おそらくはストーリー的な繋がりはないのかもしれません。
この激ヤバなマウンテンマンの一族によって、出演者やスタッフは次から次へとは凄惨な死を迎え、いよいよ生き残っているニーナとジェイクも彼らのアジトに拉致されてしまいます。
物語の後半ではマーフィーがナイフや銃を駆使し、マウンテンマンを次々と返り討ちにして、ニーナたちを助けに向かう熱い戦闘シーンが続くため相当面白いです。また拘束されているニーナが有刺鉄線でぐるぐる巻きにされている両腕を無理やり引き抜くシーンなんかは痛すぎて思わず声が漏れてしまいます。あんな生々しくて痛々しいシーンを作るなんてどうかしてますよ。
助け出した二人をかばいマーフィーは命を落とすも、ニーナとジェイクはマウンテンマンの生き残りを巨大挽肉マシーンに突き飛ばして、なんとか無事生還。しかし廃工事から流れ出す化学薬品の混ざった汚水を哺乳瓶に入れた山人の女性は抱いている赤ん坊にそれを飲ませようとする。その赤ん坊はおしゃぶりの代わりに人間の指をくわえていたのだった。
という、マウンテンマンがまだいることを示唆して物語は幕を閉じます。
これはもう本当に好みの問題なんですけど、作中にマウンテンマンたち同士がやり取りをするシーンが多く、前作よりも人間っぽさが強調されているように感じました。個人的には前作のような『正体不明の不死身の化け物、でも元は人間だった』くらいのほうが好きでした。
水着美女に興奮して自慰に耽る夫にキレる妻って流石におふざけがすぎるというか、作品のテイスト的にマウンテンマンの生態はそんなに見せなくてもいいのかなと思いました。
ホラーというよりかはサバイバルアクション映画という感じかもですが面白かったです。オススメです!近々3作目の「クライモリ デッド・リターン」(’09)も見たいと思います。
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