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'テトリス Tetris' dil. Jon S. Baird

……ビジネスは戦争だ。

ビジネスを成功させるには、結局のところは、周囲との信頼関係とそれを実現する努力に尽きると思う。

監督: ジョン・S・ベアード Jon S. Baird
出演: タロン・エガートン Taron Egerton
ニキータ・エフレーモフ Nikita Efremov

テトリスは世界中でプレイされ、無数のアレンジバージョンを生み出した。シンプルにして、プレイヤーの動体視力や瞬時に図形を把握する能力、何より集中力が問われる優れたゲームだと思う。私はこのゲームが旧ソ連で生まれたということしか知らなかったが、テトリスが世界中の人々にプレイされるようになるまでに、恐ろしいほどの権謀術数を潜り抜けねばならなかったことはあまり知られていなかったのでは。

1984年に開発されたテトリスを見出し、混乱していた旧ソ連に単身乗り込み、国を巻き込んだ騙し騙されの版権争いを制したセールスマン、ヘンク・ロジャースの驚くべき物語だ。ヘンクはアメリカのビデオゲーム会社に属していたが、日本に住み日本女性と結婚して家庭を築いていた。1988年の見本市でテトリスに出会い、テトリスの考案者アレクセイ・パジトノフに会うために旧ソ連に飛んでからは、世界を股にかけたかの有名な英国のスパイも真っ青の、スリリングな駆け引きを演じる。ちなみに我が国の任天堂も、勿論ストーリーに大いに関係するので、興味のある方はぜひ映画をご覧になってほしい。

テトリスのゲーム画面の様なドット絵イメージが随所に登場したり、"Level 1"から始まるストーリーが、レベルが上がっていくにつれ、交渉が難航したり、新たなライバルが登場したりして、ヘンクが困難な状況下で戦うことを余儀なくされるようになっていく。なかなか興味深く面白い作品だった。監督は、ジェームズ・マカヴォイ主演の'フィルス Filth'を手掛けたスコットランド出身のジョン・S・ベアード Jon S. Baird。'フィルス'か!あれも良かったなあ。どうしようもないクズ刑事が、絶望の果てに一瞬だけ希望を見る(それはすぐに本当の意味での絶望に変わる)ラストシーンは切なかったが。

今回の主人公ヘンクは壮絶な戦いに勝利する。それも、ゲーム開発者をはじめ、ビジネスに関わる人々との信頼関係を守るという信念を固持して。おまけに、家族の愛情と信頼も取り戻す。日本が舞台のシーンでも、奇妙奇天烈な勘違い演出は出てこない(やったね!)。映画のエンドロールまで、ゲーム業界への愛というかリスペクトがいっぱいだ。もっと早く観とけばよかったな。

Apple TV+で鑑賞。

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