🟡娘に贈る回顧録　50/7300　ありがとう　

子育ての記録を残そうと思いました。

あなたが生まれた日から今日まで無我夢中の
毎日でした。
日記も空白がいっぱいだし、ビデオや写真も
中途半端に箱に入れたままになっています。

見返した育児日記は成長の記録と言うよりも、
病院の検査結果や日々の状態をただ
書き残してあるだけ。
薬の名前や、治療法ばかりが書かれています。
もちろん、楽しい思い出や嬉しい思い出も
あるけれど、毎日色々なことを吸収して、
大きくなっていくあなたを見ていたはずなのに、
弾ける笑顔よりも辛さに歪んだ顔や、泣き顔が
目に浮かぶのです。

けれども｢あの時は大変だった｣
あなたのこれまでをそのひと言で片付けられる
ものにはしたくない。
そこで、今までのひとつ1つを思い出し、
改めて文字にして記録することにしたのです。

初めてかけた言葉は、
｢よく頑張ったね｣でした。
産声をあげるあなたを胸に抱いた時に、
あまりに小さく、軽く、暖かくて。
こんなにはかない存在が、一生懸命に声をあげて
息をして生きている。
生まれるとは、とても大変だったのだろうと
思ったのです。
｢よく頑張ったね、ありがとう｣

あの日から今日まで6900日あまりが過ぎました。
その数だけ思い出はあるはずです。

たくさんの言葉をかけてきました。
不安を消すように、笑顔になれるように。
たくさんの言葉をもらいました。
愛おしく、幸せになれました。
そのいくつかでも、あなたの記憶に
残っているのでしょうか。

あなたは身体も心もつらい日々を
過ごしてきました。
だからこそ、弱い人の立場になって
考える事が出来ます。
だからこそ、自分の考えを持って
生きて行けます。

辛いことは長くは続かないし、
損をしたと思えば、得もしているものです。
ついている時もあれば、そうでない時もあります。
不幸だと思えば、幸せを感じるときもあります。
心ひとつで良くも悪くも見えるものです。
よく見て、感じて下さい。

人生の時間を、一瞬の輝きを、どうか大切に。
心に従って自由に自分らしく、悔いの無いように。
力を抜いて、深呼吸をして、顔をあげて。

二十歳までの日数は7300日。
ほとんどが過去になってしまったけれども、
思い出の欠片を集めながら、そしてこれから先の
あなたを見つめながら、過ごしていきたいと
思います。

あなたの未来は明るい光に満ちています。
どうか幸せに。
いつもあなたを想っています。
生まれてきてくれてありがとう。

そこにいてくれて、ありがとう。