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ロロ いつ高シリーズvol.8『心置きなく屋上で』

ロロいつ高シリーズ最新作のアーカイブ配信を観た。昨日、前作までの感想を書いて気分を高めていたので、鑑賞に向けての準備は整いまくりだった。

さて幕開けから驚いたのだけど、ロロ主宰・三浦直之さんによる高校演劇大会のフォーマット(上演時間60分、セッティング10分)の解説から、そのまま役者陣による舞台美術の設置が繰り広げられていた。こうやって声出ししながら作っていくんだなぁとか、タイムキーパー大事だよなぁとか。作品の外枠から"高校”のムードを仕上げて、物語へ。とても好きな没入感の作り方!


今回の舞台は屋上。高校の屋上は出入り禁止だった身としては、「青い春」はおろか「リンダ リンダ リンダ」的なくだりもなかったのでシチュエーションに自分を重ねづらかったけど、そこはこれまでのポップカルチャー作品の蓄積で何とか補完できるので問題なし。屋上はいつも何かが起きる。空に最も近く、どこか自由で、だけど危なくて、そして地上を見渡せる。"俯瞰"についての言及も劇中でなされるし、何もかもを手にした気分になれる象徴。

そして本作で起こるのはシリーズ屈指にファンタジーな出来事。その"超越的なできごと"が、シリーズ通してなんだかやきもきしてる元カップルの物語に大きく関わっていく。「いつ高」シリーズはいつもまず散文的に登場人物を出しつつ、終盤はぐっと密なやり取りへと寄っていく。俯瞰からのフォーカス。どれだけ見えたつもりでもそこにいなければ分かり得ない言葉や想い。

だけども人は想像するし、分かりたいと思う。想えば想うほど、マジカルなことはきっと起こる。小沢健二「愛し愛されて生きるのさ」にもある通り、<僕らを悩める時にも未来の世界へ連れてく>のは誰かを思う心だろう。ずれたり、届かなかったり、別の人に届いたり。ずっこけながら突っ走っていく、あのわけわかんない衝動とか瑞々しいと形容するしかない切なさとか。魔法的なことが起こる屋上で起こった、どこまでも現実の味がする感傷。


どうやら本作を持って、いつ高はファイナルシリーズに突入するとのこと。そうです、永遠のように見えたって終わるのが青春であり、終わることを描かないのは不自然なのです。瑠璃色(森本華)と茉莉(多賀麻美)のやりとりに滲む将来の不安、自分は今どこに立っているのかという意識。終わりゆく青春の面影を引き延ばそうとするような、ずっと先の約束だって早めに取り付けたくなるような、終盤のくだりに胸を締め付けられる。あぁ、早く続きが観たい。あぁでも終わって欲しくない。あぁでも終わらなきゃ青春じゃない!

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