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オンラインで演劇を観た⑤(劇団かもめんたる/シソンヌ)


7.10~ 劇団かもめんたる第11回公演「ソルティーなんとかメモリー」(8/1まで)

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2013年キングオブコント王者かもめんたるが率いる劇団の作品。犬山イヌコが客演すると聞き、絶対観たいと思っていたので今回の配信は嬉しい限り。彼らの作品を観るのは前回公演に続いて2回目。現在はホームレスの老婆・マーリン(犬山イヌコ)がかつて火星婦(火星の売春婦)をやっていたというエピソードに端を発し、過去と現在を切り替えながら進行していくストレートに舞台作品らしい構成。宇宙に出稼ぎに行く、というSFっぽい設定だけども、語られる内容や“野蛮な者の存在”はさほど現実離れしていない。こういった示唆の富み方は、人間の心象におけるグロテスクな断面を見せ続けるかもめんたる本体のコントから地続きであり、鋭い目線で常識の裏を暴いていく。

前作がどこまでもヤな気分を笑いにのせて浴びせていたのに対し、今作はどこかセンチメンタルなムードが通奏していて。なおかつ他者に対する“可哀想”という同情が孕む暴力性を様々な面から炙り出しており、ブラックな笑いという範疇を飛び越えた視点を提示していたように思う。つまり、非常に演劇的。もうコント人がその拡大版として演劇をやっているということでなく、演劇として書きたい物語を演劇という装置を使って表現しているという趣。当代きってのコメディ女優であり、年齢も飛び越えて多彩なアプローチを行う犬山イヌコを主演に据えたのにも必然性しかない。どこかほろ苦くも、なぜかグッときてしまうオチも見事に決まっている。全国公演、希望。



7.7 シソンヌライブ「dix」

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10回目の単独公演。今回もものすごい公演数で、これだけの量を常にぬかりなく演じ続ける力量にびびってしまう。お笑い芸人、本当に凄いと思う。今回は前回にも増して分かりやすくキャッチーなネタが多かったように思う。1本目の葬儀屋のネタは、ああいう何か+違和感のある何かで見せてくタイプのコント自体、久々に観たんで嬉しくなってしまった。突出してたのは、居酒屋のネタかなぁ。同じイライラを観客も共有したうえで、最終的に強烈な開放感を生んでいくというかなり危険な味わいのネタだった。ステージ上にガラス戸があることで、あんな画を作るのが可能になるなんて、と驚いた。じろう演じる、ギリいそうなラインの面倒な奴、というのが堪らなかった。

そこはかとなく、現行の社会へのペーソスを感じる場面もあった。それはたとえば2本目の、工事現場のおっさんと高1の少年が"なくなった居場所"を巡りゴタゴタするコントに織り込まれた「これがスポーツの力かよ~~!」であったり、初めて会社役員に選ばれた女性の極端な思い込み(として描かれる)スピーチが男性優位社会をぶっ刺していたり、意外とこういう手法のネタやボケもやるんだなぁ、と。まぁどうしてもキャラクター先行なところがあるのでそれに引っ張られてるのだろうけど。特に最後のネタはかなり突飛な出だしとキャラ像に持っていかれてゲラゲラ笑っちゃうのだけど、その過剰なまでの笑いの中に確かな悲哀があって。それは、大きな存在に翻弄され続ける者として今この時代を生きる自分たちを重ねてしまうのかもしれない。


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