2022年8月に観た映画(なまず/コンビニエンス・ストーリー/オカルトの森へようこそ THE MOVIE/グレイマン)
なまず
「ベイビー・ブローカー」での飄々とした刑事役が印象的だったイ・ジュヨン、めちゃファンになってしまったタイミングで2018年制作の映画が公開されたので鑑賞。韓国のインディーズ映画は初めて観たのだけど、血生臭いサスペンスか社会派のイメージしかなかった韓国映画像を大きく覆すオフビートなノリのコメディでかなり驚いた。とぼけたやり取りと話のゆるい転がり方など、全てが新鮮に映った。イ・ジュヨンのローテンションな可愛げと、それを凌駕してしまうク・ギョファンの変人ムーブがキュートだった。
昔の三木聡映画とかJam Filmsのテイストを思い出すスタイリッシュなシュールさがあり、全体的な画もミュージックビデオみたくキマっていて。そういうゆるい映画だと思って観ていたが、パンフレットで監督のインタビューを読んで実はかなりしっかりとしたメッセージが貫かれている作品だと知り驚いた。そういった要素を周辺に散らばらせる技量と、思い返せば確かにその意志を感じられるかなり高度な作りの作品だろう。CGもロケの規模もインディーズとは思えないくらいで、韓国映画界の豊かな振れ幅を思い知った。
コンビニエンス・ストーリー
「大怪獣のあとしまつ」に続く今年2本目の三木聡監督作。これがめちゃくちゃ怖かった。2010年のドラマ「熱海の捜査官」以降、少しずつ三木聡ワールドに表出してきた“異世界との無意識下での接触”というテーマを全面に押し出しサイケデリックで終始居心地の悪さが胸を詰まらせるホラーサスペンスに仕上がっていた。もちろん随所に笑いはあるけど、それよりも本筋が恐ろしくって気が気がではない。結果としてここにたどり着いた、と思うと「俺俺」や「変身インタビュアーの憂鬱」といった作品群にも合点がいく。
完全なる向こう側でなく僅かにこちら側との繋がりがある状態というのがむしろ恐い。ちょうど良い異世界のバランス感。それに三木聡作品で今までは笑える箇所だったはずの話の通じない人物や奇異な行動の数々が全て恐怖描写に変換される。やっぱ突然そういう変なことが起こるって状況によっては怖いもんなんだよな、、急に真顔になっちゃった。そういう意味ではこれまでの三木聡作品を全て前フリにするようなインパクトがある。終盤の展開もいつから何でどこからそうなのか、全部飲み込んでしまう。背筋が凍るシュール。
オカルトの森へようこそ THE MOVIE
主観撮影によるフェイクドキュメンタリー作品を得意とする白石晃士監督による最新作。これまで低予算の制作ながらそのアイデア力や魅力的なキャラクター陣によって一部から熱狂的に支持されている監督。今作はこれまで白石監督が紡ぎ、一部で世界観や登場人物を共有してきたその名も“白石シネマティックユニバース”の1つの到達点。マーベルよりも先にマルチバースの概念を導入していたゆえ、あの世界やこの世界の並行世界とも言える要素が満載。つまり、あれもこれも全部乗せ。白石ワールドの入り口としてぴったり。
これまでやや受動的だったカメラ=監督自身にしっかりキャラと行動理由がついたので物語としてエンタメを真っ当にやってくれてる。愛で人はしっかり道を踏み外せるんだ!という、シネマティックな熱さがちゃんとある。予算がついたら和製ストレンジャーシングスになるのかなと思ってた白石ユニバースだけど、あちら側からの刺客の出自も登場理由も捻ってて超楽しい。ただのボランティアなわけない動きをする宇野祥平とか刃物を握る堀田真由とか色々良かったけど、最高なのは“タイヤのみを正確に狙う化け物”だった。
グレイマン
Netflixにて鑑賞。「アベンジャーズ/エンドゲーム」のルッソ兄弟が手がけたドデカ娯楽作。これまで映画館では喋り中心の邦画ばっかり観てたこともあって、”アクションが凄い“という評価軸にピンとこない人間だったのでややナナメに構えて観始めたけど、、、最高だ!!!これか!”アクションが凄い“て!序盤も序盤から観たことないロケーションでバチバチに戦うし、火薬の量も敵の数も恐怖通り越してワクワクするくらいに景気が良すぎる映画だった。童心をくすぐるドンパチとランチャー連発、良すぎ。脳汁しか出ない。
ストーリーとしては洋画に疎い僕でも何となく引用先が理解できるようないわゆるスパイアクションのど真ん中。ライアン・ゴズリングの飄々としてるようで可愛らしく、しかし陰がありタフであるという魅了がたっぷりだった。彼が出てくれば絶対に安心だ!と思わせる説得力。ヒーロー映画でもあった。その一方、キャプテン・アメリカを10年勤めてきたクリス・エヴァンス演じるヴィランの不快感ったらなかった。キャップが透けて見える動きのキレがあるからこそ、余計にヤダみが増していく。ピチピチのシャツもとかく気持ち悪かった。次は映画館で絶対観たい1作だった。
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