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2021年4月に観た映画(ゾッキ/JUNK HEAD/明日への地図を探して/隔たる世界の2人)

ゾッキ

「音楽」の大橋裕之による原作マンガを、竹中直人、山田孝之、齊藤工の3監督で映画化。地方都市を舞台に、何となく閉塞していて、どうしたって生きるのがちょっと難しそうな人々の群像劇である。3人がそれぞれ撮ったおよそ6作品をゆるやかに繋いで2時間の作品にまとめており、話を一括で届ける強さはないのだけど、まったりとしたさざ波を眺めるようなオフビートなリズムが気持ち良かった。2000年代のゆるいコメディ邦画にあったようなムードというか、元々こういう雰囲気の映画が好きだったよなぁ、ということを思い出させてくれる。ハードな題材、社会へのメッセージ、それも良いのだけど、意義や意味を含まない、けどなんか楽しいものを観るのも大事ですね。

南沙良の右フック、松井玲奈マネキンの造形と動きの恐ろしさなど、良かった点はいくつもあるが、ブチ抜けていたのが齊藤工監督による、森優作と九条ジョー(コウテイ)による灰色青春物語。2人がいちゃつく様子のバックでドミコが流れ続けてるシーン、永遠にも似た美しさがあった。しかし九条ジョーは新スター誕生の予感じゃないか、まだ手付かずの狂気でスクリーンを埋め尽くしていた。そして森優作のブレイク予兆、半端ない。高校生にもおじさんにも見える汎用性の高さもさることながら、1つ1つの何でもない台詞を作品に合わせてチューニングしてるのが凄いと思う。今回も、リアクションの演技が面白くって素晴らしかった。あの「ヨッシャー!」は忘れない。



JUNK HEAD

映画監督未経験の内装業者・堀貴秀氏が熱意と執念で仕上げたコマ撮りアニメ映画。噂にはかねがね、だったけど途中までこれを1人で作っていたということを思うとかなり戦慄が走る。7年という歳月をしっかり感じる微細で精緻な作り込みにまず驚くがそれ以外にもあらゆる所に興奮ポイントが用意されている。「PUIPUIモルカー」の大バズの流れで観るストップモーションアニメにしてはあまりにも荒々しく肉々しいビジュアル。滑稽かつグロテスクなキャラ造形。「BLAME!」や「メイドインアビス」に通ずる、地下へ向かうスリルを伴ったディストピアSFイズム。要素の複合によって圧倒的オリジナリティを伴う、モノづくりの理想形のようなデザインが行き届いている。

話としては、「俺たちの冒険はこれからだ!」的なところで終わっちゃうのだけどこれは三部作構想があるとのこと。また7年待つのか、と思うけれどもこれだけのものができればスタッフの数も今後は増えていくんではないだろうか。というか、それを願ってパンフレットも買ったし、なんならパンフレットを買わなかったら分からない情報も多すぎてマジかとなった。ドニーダーコくらい説明がないってことはないけどだいぶ端折ってる部分はあるので、補完のためにも必要な参考書だと思った。コメディ寄りの売り出し方だけど、中身は割とちゃんと血生臭いので万人に薦められるものではないけれど、久々に新しい質感を持った、突然変異的な作品に出会えたなぁと思う。



明日への地図を探して The Map of Tiny Perfect Thing

「名探偵ピカチュウ」のキャスリン・ニュートンと、数年前のペプシコーラのCMに小栗旬演じる桃太郎が連れていた犬として出演していたカイル・アレンが主演を務めるAmazon Primeにて配信中の青春SF映画。簡単に言えばタイムループもので、同じ1日を何度も繰り返す少年マークが自分と同様にそのループに気付いている少女マーガレットと出会い、同じように自由な時間を謳歌していくうちに次第に惹かれ合う、という設定。もう最初から随分とこなれた1日の過ごし方で始まるので、主人公の動きの軽やかさはすごくスマートでそこに乗っかる小粋な音楽にもウキウキできるし、ちょっとしたミュージカルのようなテンション。演出面だけでもだいぶ満足度の高い映画だった。

ループの謎を解き明かす、、みたいな方向に行かなくもないのだけど、それよりも何よりも同じ秘密を共有することで芽生える嬉しさとか、どこか抑圧された気分を共に打ち破ろうとする喜びとか、それがまやかしだったとしても覚えた感情に嘘はないんだぞ、と微笑みかけるような瑞々しい青春描写の数々が何よりも眩しく映った。ループの真実もどちらかというと切実な願いみたいなものであって、感情で動かしていくタイプの話なのもすごく良かった。一生ここから進まなくてもいい日々があったとして、それは確かに夢のようだと思うと同時に、ここから進みたいと思う気持ちだって素敵なことで、それ自体が生きる意味になったりもする。温かくて良い余韻が残った。



隔たる世界の2人 Two Distant Strangers

Netflix配信。ループものの流れで観ることにしたけれど、これは強い意志に満ちた作品だと最初数分でよく分かった。ループものの仕組みを用いながら、終わることのない差別の凶悪さと、どこまでも逃げられないことの恐怖を描いてある。こういう評価が正しいのかは分からないけど、実際に起きている問題をただ羅列するのではなく、こうやって発想力を使って心の奥深くに訴えかけるような作品だったことに強く揺さぶられた。諦めないことを主人公に託すほかない作劇は何もかもを綺麗事してたまるかという怒りとその気高さが胸に迫ってくる。自分のいる世界から出来ることは何だろう、とも考える。自分の目と耳と口と頭とで見つめなければいけないと強く思った。



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