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オンラインで演劇を観た④(「小林賢太郎演劇作品」と「カジャラジオ」/劇団かもめんたる)

「小林賢太郎演劇作品」と「カジャラジオ」

小林賢太郎の話がしたい。12月1日に届いた突然の芸能界引退。体力の限界、という事情がある以上、仕方がないことだが、それでもあの演者としての凄さをこれから新しく知ることができないのが実に悔しい。ラーメンズ時代から、小林賢太郎は何よりそのマイムと顔、発声によって自身の笑いを体現し、その脅威の表現力で我々を圧倒してきた。サブカルの権化だのなんだの(こういう風に嘲笑してる人、ほんとに彼の作品観たことあるんですかね?笑)言われてもどこ吹く風、笑いと心中するような孤高の芸人だし、パフォーミングアーティストだったと思う。

「うるう」が最後の舞台だと公式コメントに書かれていたが実際に、演者として参加した作品はコロナ禍に発表され続けた「カジャラジオ」だろう。コロナで開催中止となったコントライブ・カジャラの公演の代替として行われた試みだが、割と序盤から明らかに小林賢太郎がノッてきたようで、予定よりも多くの音声コントが放出された。自信が率いるコント集団・カジャラのメンバー、その個性を存分に生かす設定と演出力。そして自身もまたプレイヤーとして腕を振るい、模索しながらも常に驚きと笑いを音とテキストのみで届けてくれた。こんな簡単な要素でも、作り手次第で無限の可能性があるのだ。

新たなおもちゃを手にした子供のような無邪気な心持ちと、歴代のアイデアや構成力、くだらなさと言葉遊びを組み合わせて作られた音声コントは、小林賢太郎という稀代の作家の可能性を更に押し広げたように思う。12月末で公開は終了されてしまうようだが、勿体ないのでまだ何本か未聴のコントは残している程に、演者・小林賢太郎との別れに踏み切れないでいる。

YouTubeに3本の演劇作品がアップされた。以前観たことがある作品だが、改めて観てこの3本と「うるう」が彼の物語作家としてレベル違いの才気を味わうことができると思ったのでラーメンズ=サブカルくらいの認識の方も是非。

ロールシャッハ

自分のその行動が何に影響をもたらし、何を動かし、何を動かしていくのか。ひとつの形から導かれる沢山の意味。これを観て、小林賢太郎は完全にニューステージに上がったと思った。メッセージ性の点でも、今見るべき作品。


振り子とチーズケーキ

竹井亮介との2人芝居。小林賢太郎の作品はファンタジックなものも多いが、これは日常描写に満ちた温かな作品。物事を見る角度とが「ロールシャッハ」とも通ずるがそれをこんなに優しい物語に仕上げるなんて。人柄が出てる。


ノケモノノケモノ

「うるう」もそうだが、はみ出し者への眼差しというのが彼の作品には常にある。それは自身に対する思いなのかは定かではないが、舞台上に立ち続けることで己の肩書を証明し続けた誇りのようなものも滲む。切なくも力強い傑作。


肉体の限界、というのならば、声だけで演じる音声コントだけは続けてくれないかな、、、などと情けないことも言ってしまいそう。いやしかしまだまだずっと作家としての活動が続くのは救いだ。だってパラリンピック開会式の演出も残ってるし!ある意味、第2章の幕開けですよ。末永く楽しませて欲しい。


12.05 劇団かもめんたる第十回公演「HOT」

2013年キングオブコント王者かもめんたるが率いる劇団の作品。ずっと気になってはいたけどこの度、配信がなされることに!ありがたい。元より、かもめんたるの単独ライブDVDは拝見しており、ネタ制作を担当する岩崎う大の一貫性したシニカルさと秀逸な作劇が大好きだったのできっと長尺の作品もいいはず、という見込みもあったのだが想像以上に最高だった。

「奇祭」がテーマの作品。う大演じる祭の再建人が、舞台となる村のぬるい祭りをボコボコにけなしていく内に村に伝わるとある奇祭の存在に辿り着く、、という粗筋。う大の冷酷さはかもめんたるのコントに共通するがその矛先が相方の槙尾のみならず、大勢に向くというのが劇団かもめんたるの特徴。ラサール石井演じる神主がう大にネチネチと言われ続けるシーン、ものすごく静かなトーンなのに笑えて仕方がなかった。低温火傷みたいな笑い。

かもめんたるのコントも、かなり後味が悪かったり、なぜこれをコントのフォーマットでやろうと思ったのか、、と戦慄するほど恐ろしい作品も多いのだが、これは演劇なのでその辺りの毒も容赦なく降り注いでくる。終盤の展開、どんな顔していいか分からなすぎて結局笑うしかなかった。業とか、逃れられない各々の自意識とかを抉り出すのがうますぎます。これどんどん規模が大きくなったらマジで松尾スズキとかに匹敵するレベルの喜悲劇作家になりそう。また大好きな劇団が増えちゃったなぁ。地方巡業を待っている!

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