2024年ベスト映画 トップ10
今年は邦画がかなり豊作だったように思います。ずっと邦画が好きでいたけどここ数年はやや物足りなさがあったところに、こんな年が来るなんて。何かが突き抜け、新たな面白さを追求する作品が世に出るになったように思います。濱口竜介以降の潮流なのでしょうか。理由は分かりませんが、まだまだこれから不可思議な映画体験が増えていくのではとワクワクします!
10位 ボーはおそれている
守られすぎた子供は現実の侵襲性にやられ続ける。支配的な母子密着はその破綻がそのまま世界秩序の崩壊へ結びつく。”おそれ“だらけの現実に放り出される恐怖を一切途切れることなく描いていた。悪夢じゃなく、ただ現実。
9位 SUPER HAPPY FOREVER
突飛なことはしていないのに、物凄く跳んだように感じられる特別な余韻。喪失を受容する様を描くのではなく、喪失された側の記憶を辿ることで浮かび上がる温かな夢。過ぎ去った時間の中に閉じ込められたのか。解き放たれたのか。誰も知り得ぬ物語であり、生々しくコロナ禍の輪郭を捉えた映画でもあると思った。2018年と2023年という舞台設定が、とっくに変わり果てたもの、それでも変わらなかったものを否応なしに突きつけていく。ただの1秒も巻き戻せない現実への祈りのようなシーンばかりだったと思う。
8位 ミッシング
決着がつかず悲しみきることもできない“あいまいな喪失”にどう向き合うか。画面上の悪意、遮音される叫び、埋まらない温度差といった隔たりを描いた先に受容はあるのか。画一的な救いなど蹴散らしていくタフな祈り。
7位 まる
荻上直子監督、堂本剛主演でおくるオフビート系サイコスリラー。禅、現代アート批評、陰謀論や“成功”信者の強迫性を混ぜ込みながらどこにも着地しない。元も子も自分も宇宙もなく、でもやっぱ全部あるのだろう。
6位 異人たち
親でもあり子でもある、という状態が折り重なっている今、両親にもアダムにも感情が入り込みすぎてしまい交流のシーンは全て泣き腫らしてしまった。どんな風に親として子を思っていけるか、どんな風に子として親を眼差すのか。映画を通して擬似的に幼児退行しながら、ひとりの自分を想った。
5位 ラストマイル
『アンナチュラル』『MIU404』と世界を共有する今年の一大エンタメ作品であり、誰もが現実の関係者であるという恐怖を身近に伝える恐怖の映画。機械仕掛けの大倉庫、ひしめき合う荷物に沢山の人々、とにかく息が詰まる圧迫感がずっとある。流れ続ける世界を誰が、何のために、どう止めるのか。
4位 どうすればよかったか?
これを“映画作品”として受け止めるにはまだ時間が掛かるだろう。登場する人たちの言動や振る舞いは職業柄よく知るものだが、それをカメラが捉え、編集が為されたものを観るとかなり動揺してしまう。言葉でなく映像が紡ぐナラティブが複雑な家族の姿を浮かび上がらせる。本来カメラは向くはずがない世界を監督の信念が映し出したという前提が、一方的に外野が示す講釈を跳ね除ける強度に繋がってるように思う。なぜそんな??と思うシーンも多いのだけど、こんな想いは届かない。記録物の不可逆性と容赦なさが胸に迫る。
3位 Cloud
転売とか投資とか匿名掲示板とか想像しやすいヤな感じを題材にしてるのに、どうしてこんな全く違う手触りの不気味さに変わってしまうのか。これぞ黒沢清の世界。後半は笑うしかないくだりが続くが、人が一線を踏み越える瞬間を追体験する恐怖もちゃんとある。物騒だけど興奮せざるを得ない。
2位 ナミビアの砂漠
2024年の顔・河合優実と次世代の俊英・山中瑶子の奇跡の交差。“メンヘラ”という呼称で様々な作品で掻き回し役として消費されてきた人物を眼差し、分かりはできずとも共に在ろうと試みること。"MBTIブーム"の延長上にある空洞への諦観。まだ描かれてこなかった普遍のテーマを射抜く傑作。
1位 ルート29
孤独な2人が魂を通わせて旅に出る、という枠組みでは到底語り切れないマジカルでストレンジな怪作だった。国道沿いという舞台設定が素晴らしい。退屈でどこにでも転がってそうな景色の中に、奇妙で歪な異界が広がってゆく体験。世界はいつだって自由に見えていいはず、と伝えてくれる。
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