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日々の舞台のたびごとに生き、逝き、果てしない命の再生の連環の中でピアフの生が繰り返されていく…★劇評★【舞台=ピアフ(2018)】

 優れた歌手の声や身体には、歌によって悲しみを癒し、穢れを浄化する作用があるとされるが、フランスの不世出のシャンソン歌手、エディット・ピアフはまさにその代表格である。絶望をかすかな希望に変え、過ぎ去った過去を未来への懸け橋にする、そんな歌をたくさん歌って来たピアフ。究極的な悲哀を歌っていても、私たちがそれを聴くときもう一度立ち上がるための活力が心の一番底から湧き上がってくるのはそのためだ。しかしその悲しみの浄化をしているアーティスト本人は心も体もずたずたになる。彼女自身、悲劇的な人生を送って来たのだから、なおさらだ。彼女の歌や声の作用によって、多くの人が救われていく一方で、ピアフの心は蝕まれていく。そんな魂の「宿命」をめぐる構図が、日本初演から4回目の公演を迎えた大竹しのぶの舞台「ピアフ」を観ているとよく分かる。喧騒に包まれた生まれ育ちからくるはすっぱな性格と、一方で人の感性に敏感過ぎる繊細な精神とがない交ぜになったピアフは、幸せが長続きしない危険なタイトロープのような人生の中でもがき続けて、その結果もたらされる「整えられた悲鳴」としての歌を遺し続けていったのだ。4回目を迎えて大竹が自らが演じるピアフという身体の中に宿す「核」のようなものは、ますます色濃くなっている。そして大げさな意味や使い古された言葉としてではなく、本当の意味で、日々の舞台のたびごとに生き、逝き、生まれ変わり、そして生き、また逝く…。果てしない命の再生の連環の中でピアフの生が繰り返されていく。私たち観客はそれをまさしく「目撃」しているのだ。演出は栗山民也。
 舞台「ピアフ」は11月4日~12月1日に東京・日比谷のシアタークリエで、12月4日に広島市のJMSアステールプラザ大ホールで、12月11~12日に香川県高松市のレクザムホール小ホールで、12月15~17日に大阪市の森ノ宮ピロティホールで上演される。

★舞台「ピアフ」公式サイト

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