さらなる成長を誓ってどん欲に作品に立ち向かおうとする役者の業がぶつかり合う迫力を感じさせる芝居…★劇評★【舞台=雨(2021)】
偽物を偽物でなくするためには、徹底的に本物を追究しなければならない。井上ひさしの舞台「雨」の場合、そのカギは言葉に隠されていた。失踪した紅花問屋の主人と顔が酷似しているという強力な「武器」があるとはいえ、江戸で生まれ育った鉄くず拾いの男がまんまとなりすますためには平畠という東北の一地方の方言の中に自分を溶け込ませないといけない。人生の大逆転を賭けた大勝負、それは、妻やこの問屋の雇われ人たちとの闘いでもあった。見抜くか見抜かれるか、だますかだまされるか。息詰まる展開に輪をかけるように秘密の沼から次から次へと現れる邪魔者たち。よこしまさも極めればまるで自分が浄化されるとでも思いこんでいるかのように底なし沼にはまっていく男の悲哀を醸し出す山西惇と、たおやかな花の中心でありながら毒々しくもある妻の本性を鮮やかに描き出す倉科カナの充実ぶりは特上のもの。舞台や映像作品で既に盤石の実績を積み上げている2人の俳優が、これからのさらなる成長を誓ってどん欲に作品に立ち向かおうとする役者の業がぶつかり合う迫力を感じさせる芝居だった。(画像は舞台「雨」とは関係ありません。イメージです)
舞台「雨」は9月18~26日に東京・三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで、10月2日に横浜市の関内ホール大ホールで、10月8日に所沢市民文化センター ミューズ マーキーホールで、10月13日に静岡市の静岡市民文化会館 中ホールで上演される。
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★舞台「雨」公演情報
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