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長い人生の途上にある行き場のない孤独感というベースの上に、それでもなお、人はいくつもの決断をしていかなければいけない生き物だと分からせてくれる深みのある作品…★劇評★【舞台=八月の鯨(2025)】
地球の天候がめちゃくちゃになって、風物詩が風物詩でなくなりつつあるのがなんともさびしいが、いつもある季節になると見えていたものが見えなくなるということが、単なる季節感の変動だけが原因ではないと感じた時、ちょっとドキッとする。もしかしたら自分自身の変化が原因かもしれないからだ。感性の変化もしれないし、衰え、いや感動するエネルギーの弱まりかもしれないからだ。幸いなことに私自身はまだそんなことでドキッとして悩むのはかなり先になりそうだが、そう感じてしまう人は世の中にたくさんいるはずだ。それに孤独やあきらめが合わさってしまうと、ことは深刻になる。朗読劇や映画でよく知られている「八月の鯨」はそんな老境のひとつの側面をテーマにしながらも、ほんのりとしたユーモアやペーソス、そしてあえて声を張って言うまでもない「希望」と呼べるかもしれないものまでも含んだ人生の哀歓にあふれた傑作だ。12年前、劇団民藝が奈良岡朋子、日色ともゑで実現したこの舞台「八月の鯨」が樫山文枝、日色のコンビで今年2025年再演された。長い人生の途上にある行き場のない孤独感というベースの上に、それでもなお、人は思い出の中でだけでは生きられず、いくつもの決断をしていかなければいけない生き物なのだということを分からせてくれる深みのある作品に仕上がっていて秀逸だった。演出は丹野郁弓。(画像は舞台「八月の鯨」とは一切関係ありません。単なるイメージです。noteに集うクリエイターの皆さんのご好意で画像を使わせていただいています)
舞台「八月の鯨」は2025年2月8~17日に東京・新宿駅新南口の紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA(タカシマヤタイムズスクエア南館7階、紀伊國屋書店新宿本店4階にある紀伊國屋ホールとは別の劇場です。ご注意ください)で上演された。公演はすべて終了しています。
★序文はエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも無料でお読みいただけます。舞台写真はブログにのみ掲載します
★無料のブログでの劇評は序文のみ掲載し、それ以降の続きを含めた劇評の全体像は通常はクリエイターのための作品発表型SNS「阪 清和note」で有料(300円)公開しています。なお劇評の続きには作品の魅力や前提となる設定の説明。日色ともゑさん、樫山文枝さん、小杉勇二さん、細川ひさよさん、篠田三郎さんといった俳優陣の演技や身体表現に対する評価、丹野郁弓さんの演出や舞台表現に対する評価などが掲載されています。場合によっては、特定のスタッフワークについて言及することもあります
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★舞台「八月の鯨」公演情報=劇団民藝公式サイト
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