未来展望委員会は、コロナ禍の構造変化の「ど真ん中」を見つけた
コロナ禍は、ある面で日本にとって、不幸中の幸い、神風だったかもしれません、不謹慎な言い方になるかもしれないけど。
社会文化研究家の池永先生がそう語りだされて、第3回未来展望委員会がはじまりました。未来展望委員会の20歳代の女子社員4名は首を傾げながら、「神風?」とノートにメモを書きました
前回の未来展望委員会で、関西経済連合会の2030年ビジョン検討会の冒頭で
「時代は先に進んだ。2030年が一気に来た」との企業委員の発言が検討会の方向を決めたと言いましたが、私も10年後20年後30年後の未来から過去を振り返ったら、こういう評価になっているのではないかと考えています
「コロナ禍を契機とした変化が、時代を変えた」
という歴史的評価に
戦後日本が日本を成長させるために導入してきた政治・経済・産業・社会システムが、30年40年50年経ち、現在日本と機能不全をおこしてしまっています。企業の優れた成功体験が、その結果として次の成功を阻むといわれる成功の復讐に見舞われました
「成功の復讐が、日本が、企業が自らを変えることができなかった理由なんですね?いつからそうなったのですか?」と未来展望委員会のいちばん若い女子社員が質問しました
1991年のバブル崩壊以降、日本は「失われた30年」と呼ばれる低成長時代に入りますが、その要因のひとつとして1995年に発売されたWindows95をはじめとする世界の情報革命、インターネットによる社会・生活の変化・可能性を日本が読み違えたことが大きかったと考えています
「Windows95が発売された1995年は、わたしたち4名はまだ生まれていません」
インターネットの動きに遅れたが、その後も日本は変革するためのチャンスがあったのに、それを先延ばしをした、変えてこなかった。そのなか2020年にコロナ禍となりました。そのコロナ禍で大きな変化がおこりました
「テレワーク、オンラインですね?」
と未来展望委員会のメンバー全員が答えました
そのとおりです。だから日本にとっては、最後のチャンスだと考えています。委員会の冒頭で、不幸中の幸い、神風だといいました
コロナ禍を契機に動き出したテレワーク・オンライン化などが構造的、多層的な変化をおこして、これまでの当たり前・既成事実をリセットしはじめています。この変化の本質をしっかりとつかんでおかないと、成長のチャンスをまたも逸してしまいます。コロナ禍で、コロナ禍前から変わった事柄はなにかをみていきましょう
「先生、『コロナ禍が収束しても、元には戻らないことがある』でしたよね?」
そうです。まずそのひとつ
たとえば接待のカタチが、かわりつつあります
企業接待が大きく減り、法人需要から個人需要に、大事な人と食をじっくりと楽しむスタイルが増えています
「摂津倉庫グループで経営している日本料理店でも、そのような変化があります」
飲食店の売上構成が変りつつあります
大手飲食店経営者から「都心店よりも郊外店の業績が良い。夜よりもランチが増えている。明らかに変わった」と経営戦略を再構築されています
郊外・地方に行く人が増えつつあります
テレワークが増え、都心の会社に毎日のようには行かなくなりました。週のうち2~3日を郊外の家で、仕事をしながら生活する人、近場の地方で過ごす人、2拠点で生活をしつつ仕事をする人、地方に移住しようとする人たちと、いろいろな暮らし方がはじまっています。「私」は大阪市内の自宅と滋賀県の高島の別荘の2拠点生活をしています
「滋賀県に別荘があるんですか?いいなあ」と、みんなが即座に反応しました
新幹線での移動中も勤務扱いにするJR東海
JR東海さんが東京と大阪通勤が可能となり、また新幹線での通勤時間に仕事した場合も勤務扱いとするとの報道もありました。テレワークが普通になり、会社は時々行くところになったということ。会社にとっての通勤の位置づけを変え、自宅と会社の関係を変えようとしている。その前提である人々の価値観が大きく変わりつつあります
100年以上前の労働環境にもとづく法律が改定されようとしています
現行の法律は、100年以上も前の大正時代の労働環境を前提に作られた工場法がベースにつくられた戦後1947年の労働基準法が、ついに見直されようとしています
それくらい大きな変化を
テレワークがおこしているということです
「100年前の法律が変わろうとしているのですか?本当にコロナ禍ってすごいですね」
このように新聞やテレビやSNSからの情報のみならず、お客さまと対話をしたり市場・現場を観察することで、社会と生活者の動向をつかみ、現在での社会変化を多面的・構造的に整理することが、未来展望の第一歩です
「先生のいう構造化が少しずつ見えてきました。それにしても、コロナ禍がいかに大きな変化のスタートだということがよくわかりました」
そこで、前回の「社会の構造をつかむメカニズム」です。コロナ禍に入って考えたメカニズムですが、これまで日本は「都市をどうする?産業をどうする?経済をどうする?」と右から左に考えて答えを導こうとしてきました。そのような検討会のいくつかに参加しましたが、不毛な議論を経験しました。当然検討するだけで、真の答えを見つけることができませんでした。本来は、戦争・政変・災害・惨禍の状況から捉えないといけない
左から右に考えないといけない
また「技術の位置づけ」を考えました。私たちはともすれば、「技術が社会、生活を変える」と技術を主語にして考えがちです。技術を起点に議論が進めていきがちですが、むしろ主語を「人」として考えるのが正しく
「人が技術を使って社会・生活を変える」
ことが本質と考えました
コロナ禍で考えたメカニズムは下図で、変化は「左から右」に進んでいく
「コロナ禍になった→価値観・意識を変える→生活・行動様式を変える→時間・場・機会構造を転換する→都市・地域、産業、経済を変える。そして、その社会構造の基盤が「技術と知的基盤(歴史・文化)」
と位置づけた「社会の構図変化をつかむメカニズム」です
この社会の構造変化をつかむメカニズムは、これからの未来展望と戦略づくりで何度も登場しますので、頭にいれておいてください
「はい!」と未来展望委員会4人、返事しました
さて、この「社会変化をつかむメカニズム」を踏まえ、現在おこっている、「コロナ禍から進む構造変化の本質はなにか」というと、ずばりこう捉えています
場と時間の構造変化
これが、人・社会においてなにを意味するのか、人・社会にどういう変化をおこしているのか、おこしていくのかは、次回の未来展望委員会以降で、順次考えていきます。この「場と時間の構造変化」こそ、これからの社会・未来を展望する重要な論点だと思っているので、ぜひ頭のなかに入れてください
「場と時間の構造変化が、未来展望につながる論点のど真ん中にたどり着いてるのですね。頭の真ん中に入れておきます。本日も、ありがとうございました」
【ご連絡】
池永先生にご指導いただき、摂津倉庫グループ若手社員中心に作成した「コロナ禍後社会を考えるー未来展望・2030年社会はどうなる?」冊子をご希望の方は当社にご連絡ください
【摂津倉庫広報室 (kouhou@settsu-soko.co.jp)まで】