未来展望委員会は「禍」の意味を知る
わたしたち20歳代女子社員4名と社会文化研究家池永先生の第2回摂津倉庫未来展望委員会は、「禍」という漢字から議論がはじまりました。禍が、これからの社会を読み解く本質につながる漢字だったことを知りました
1 コロナ禍の禍とは、なんですか?
「先生、最初に質問していいですか?コロナ禍の 『禍』 は、どういう意味ですか?」と物怖じせずに質問する若手の女子社員が手をあげました
極めて本質的な質問です。このコロナ禍の『禍』という漢字には、現在社会を理解する、未来社会を展望する本質が含まれています
コロナ禍の禍は「か」と読みますが、「わざわい」とも読みますよね。同じ「わざわい」と読む「災」は壊れたモノは直せる、無くなったモノはつくり直せるという意味です。1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で倒壊した17基の阪神高速道路の橋脚は、元に戻せた。2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う津波で流された港や駅舎やビルや家や公園がつくり直せたように、災害で壊れたモノは直せる
一方、コロナ「禍」 という漢字には、無くなったモノは元に戻らないという意味があります。つまり
コロナ禍が収束しても
元に戻らないことがあるということ
「コロナ禍でおこった事柄で、コロナに戻ることと、戻らないことがあるということですね。前回の混沌という漢字と同じように、禍という漢字もとても深いですね。漢字には、意味が込められているのですね」
2 未来を展望するための第一歩「構造化」
では前回の復習をしましょう
摂津倉庫未来展望委員会が、未来を展望する、2030年社会を展望するうえで重要な方法は「構造化」によるアプローチです。大切な考え方なので、もう一度、説明します
「先生、構造化とは、どのようにするのですか?」
前回の未来展望委員会で、現在に埋め込まれている事柄を、以下の3つの視点に分けました
① コロナ禍前から、おこっていること
② コロナ禍を契機に、おこっていること
③ コロナ後に、おころうとしていること
この3つの視点で、現在おこっている物事・事柄をこの図でまとめました。構造化とは一枚で、全体像を見える化をして、それぞれの関係が分かるようにすることです。よく摂津倉庫の社長は「鳥の目で見なさい」と言われていますよね。その鳥の目です。鳥瞰(ちょうかん)力、高い所から見おろし眺めること、全体を大きく眺め渡すことが大事です
「構造化とは、鳥の目で見ることなのですね」
この図に盛り込んだ内容の詳細は、この未来展望委員会で順次議論していきますが、まず最初にすべきことは構造化して全体をつかむことです
「まず構造化ですね。分かりましたが、難しそうですね」
訓練です。何度も何度も、未来展望委員会で構造化していきましょう。それを繰り返していくうえで、身についていきます
この図をじっと見ていただくと、気がつくことがあります
現在のわたしたちは、過去を生きているのではないということ。未来にまだ生きているのではないこと。現在を生きていること。
だから現在に息づく「過去と現在と未来の流れ」を発見して、3つの時間軸をつなぐことができる人、企業が、未来を切り拓く一歩をつかめるのです
「先生、哲学のようで、難しいです」
具体的に、考えていきましょう
3 時代は先に進んだ。2030年が一気に来た
『時代は先に進んだ。2030年が一気に来た』
コロナ禍のなかで開かれた会議でのこの言葉が、いまでも強く印象に残っています。コロナ禍に突入した2020年に、関西経済連合会が緊急に「関西ビジョン2030」検討会を発足しました。池永先生も企業委員(当時大阪ガスエネルギー文化研究所顧問)として参加されていたのですが、2030年を見据えたビジネス展開を考える検討会の方向性を決定づける発言が、ある企業委員から飛び出ました
その企業委員は、こうつけ加えました
『2030年に、こうなるだろうと考えていたことを、10年前倒しで、現在、わたしたちは【社会実験】をしている』
「その社会実験とは、なんですか?」
1991年のバブル崩壊から、日本は世界の流れから遅れてしまいました。とりわけITなどの技術開発を、日本はビジネスへの展開、生活への展開、社会への展開に消極的だった。あるのに導入しなかった。できるのにやらなかった。世界はそれら技術をとりこみ成長させたが、日本はとりこまなかった。ずっと先のばしつづけた
その先のばしてきたオンライン技術などを活用したテレワークやオンラインビジネスが、コロナ禍を契機に動き出した。それらはこれまでやらなかったことでした
4 社会変化の構造を読み解くメカニズム
世の中は連続しているようで、不連続です
「どういう意味ですか?」
前回の未来展望委員会で、現在は混沌とした時代だといいましたが、現在の構造を読み解くと、世の中がどうなっているのか、どうなろうとしているのかが見えてきます
混沌しているのかどうかは、現在を生きている人には分かりません。現在が混沌した時代になっていたとしても、現在起こっていることが現実です。現在を生きている人にとって、現在が「混沌」かどうかは関係ありません。現在を直視して、精一杯に生きることが大切です
「現在を生きる人にとって、大事なのは現在なんですね」
明治の人たちは昭和を知りませんよね。昭和の人たちは令和を知りませんよね。コンピューターの出現が分からなければ、インターネットの出現は見えません。スマホひとつあれば生活できる時代になるなんて、想像できませんでした。つまりこう言えます
「歩いているうちに道がなくなったり、同じ道ではなくなることがあるということですか?」
そうなのです。2030年の社会は見かけ上、現在とよく似ているかもしれません。しかしその未来社会の家や会社で生きている人の考え方やスタイルは、がらっと変わっているかもしれません。未来は過去からの延長線上にあるかもしれないし、延長線上にはないかもしれない。大切なのは、現在に過去があり、未来が埋めこまれていることです
「だから現在進行形の出来事や事柄を構造化して読み解くことが大切なのですね」
これからどうなるだろうか?と気になる。しかしそれぞれ、必ずこうなるという解像度の高い未来像は見えないが、未来社会を展望する社会の構造変化をつかむことはできます。次の図は、コロナ禍がはじまった2020年に池永が考えた社会の構造変化を捉えるメカニズムです。これも構造化です
社会変化を構造的に捉えない人や企業は多い。だから先行きが見えない。この社会の構造変化をつかむメカニズムの考え方は、次回に説明します
「本日も、ありがとうございました」
次回「note摂津倉庫未来展望委員会」は、来週火曜日に配信させていただきます
【ご連絡】
池永先生にご指導いただき、摂津倉庫グループ若手社員中心に作成した「コロナ禍後社会を考えるー未来展望・2030年社会はどうなる?」冊子をご希望の方は当社にご連絡ください
【摂津倉庫 広報室 (kouhou@settsu-soko.co.jp)まで】