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記事一覧

hurry up

遅くはないとか
いつでもいいとか
人は耳障りのいいことを
言うけれど

今言わなければ
永久に口を噤むしかない
そんな言葉がいつも
私の周りを取り囲んでいる

今言うしかないのに
飲み込んでしまった言葉が
蝕んだ細胞をかき集めたら
この部屋は埋まってしまうだろう

どうして言えなかったのって
後悔したくなくて
どうして言わなかったのかって
後悔したくなくて

愛を
愛を
愛のことばを

溢れる気持

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午前二時

眠りだけが安らぎだとしても
落ちるのが怖い午前零時
うんざりしたパターンと
同じ顔した人たちの群れ

ペシミスト気取ったって
苦しくなれば息を吸う
ヒロイズムに浸ったって
渇けば水を求め叫ぶ

君を心底軽蔑していたというのに
「興覚めた一変が、窒息するくらいにおそろしく」
僕は笑い
僕は喋った

全ては覆い隠すためのもの
僕は正直者のふりをしながら
真実を使い分けているだけ
湧き出る憎悪の奥でうご

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夏の叫び

恋とは断末魔の叫びではないか
奇をてらった文言をひねり出そうとして
ふとそんな並びが浮かんでくる

時間を引き延ばしてみると
当てはまるものはたくさんある
死まであと一秒なのか一年なのか一光年なのか
明日死ぬなら今日の私の言葉は全て
断末魔のそれであり
必死のセミの叫びもそれであり
マンションの廊下に転がる彼の
突然の咆哮もやはりそれであり
言葉は全て
死を前にした命の
断末魔の叫びと言えようぞ

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埋葬

世界の縁に触れたと思った手で
僕らは時の砂に埋もれてゆく
突然砂浜に空いた穴に落ちたみたいに
一瞬で生き埋めになって
そうして二度と這い上がれなくなる

世界の淵に触れたら
溢れ出して全てがこぼれ始める
入れすぎた珈琲みたいに
飲みすぎたアルコールみたいに
僕らを汚してゆく

恋はいつも僕らを
世界の果てまで連れて行ってくれるけど
その後僕らは
世界にどんどん吸い込まれ
引き寄せられ
埋もれて

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それを思い出すと僕は
身を焼かれるほどの
痛苦で狂ってしまう
でもたぶん狂った人は
自分をそうと言わないだろうから
僕はそれなりに
まともという証明になっているだろうか

それを思い出すと僕はかつて
自分の身を切り裂きたい衝動を感じた
最近はその想像だけでなんだか痛いので
何がしかで気を紛らわせるばかりだ

いい加減にもう二度と
思い出さないようにしてほしいものだが
記憶というのはまあ皮肉なもので

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ツワブキ

知らない、野菜を手に取って
でもそれは、知ってるものと
似ている
何にも似ていないものは
段々と私の世界から減ってきた
そのことを苦く
寂しく思っているだろうか
わからない

父の書棚から
こっそりでなくヘッセ詩集を抜き取り
誰にも言わない旅に連れていく
私の日常は肉感を失っている
繋がりへの希求は煩わしくなり
バランスを欠いているのは
世界ではなく私であるか

ゆるやかに死にゆく誰かを
見送る時

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一同は広島へ

その気配に怯えながら愛した
血の呪いからも
輪廻の鎖からも
本能の質量からも
ついに逃れることが出来なくても
それがわかっていても
君の手を取ったのは

どんなに汚くてもそれを
愛と名付けるしかなかった
どんなに痛くてもそこへ
向かうしかなかった
あの頃の僕を

手段

何かと関わる手段を
何かに倣うことをやめてみたい
どうやってそれと関わるか
それは自然と現れてくるもの
浮かび上がってくるもの

媒介者を限定しなくていい
ある手段をもって
関わることが困難であっても
確かに何かと常に関係して
生きているのだから

僕はどう世界と関わる?
僕はどう君と関わる?
それを規定した途端
全てをつまらなくしてしまう

想いの望む姿を
探り出して掘り当てていく
感情の行く先

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空間

答え を
探している
出そうとしている
いつも
正解に〇をもらいたくて
考えていた

あなたの気持ちは
ぼくが考えてもわからないし
ぼくの気持ちは
あなたが考えてもわからないし
ぼくもあなたも
自分の気持ちがわからない

でもなぜか
ぼくは証拠を掻き集めて
人の気持ちを決めようとしている
愛の証明
悪意の証明

いくら記憶を旅しても
道の駅は見つからない
暗い道は地獄を巡って
終わらない苦痛のため

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無感動ショコラ

僕を支配していた
あなたがいなくなった
僕の心に巣食い
僕の体を蝕み
僕を作りながら
破壊し続けたあなたが
いなくなった

取り残されても
あなたは消えなくて
僕はあなたの形にくりぬかれたまま
床に転がって天井を見上げている

手に入って求めるのをやめたら
嫌悪と憎悪が暴れ出す
悲しみと痛みは
存在を認められやしない

手に入れるどころかその手で作り出したのだから
好きに壊して遊んでいたんだろうね

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心中

君が死んだら僕も死ぬ
それって心中って呼ぶかしら
いやいや後追いと言うのだよ

君を殺して僕も死ぬ
それなら心中と呼ぶのかな
いやそれは無理心中というやつだ

無理じゃなければいいのかい
そうそうお互い望んで死ぬのが
無標の心中の指すところ

一家心中はどうなのさ
子供は同意していないでしょう
そうだね三人以上は複雑だね

夫婦心中って言葉はないね
そうだね夫婦はたぶん
別れるか殺し合うんじゃない

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魂とはいつも
どこかへ出て行きたがる
そして出た先で園を作り
その外へとまた出たがる
繰り返し繰り返しそうやって
浸かっては上がりを重ねて
創っては壊しを重ねて
拾っては捨てを重ねて
入っては出てを重ねて

魂とはいつも
ひとところに留まりたがらない
だのに人はいつもそれを
どこかへ縛り付けようとしている
己を誰かに
誰かを己に
心を思想に
身体を現世に

どこにも依らない魂は
いつも宙を舞ってい

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羅列

言葉の羅列
お行儀よく
それはあるべき場所に
大人しく座っているべきで
飛び出した言葉は
消しゴムで綺麗にされてゆく

美しさは模様
均等に配置された目鼻なら
どんな軌道を辿ろうとも輝く
善は悪の対極にあるべきであり
混ざっていては胸が悪くなる

水平線に重なりたいのに
嵐は駒のようにぶつかり弾け続ける
止まって転がることもなく
きっとここには重力がない

風にさらわれたいのに
錨は絆より頑丈な鎖

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pray

僕のバスローブがベランダで空に祈ってる
袖が速く乾きますようにって

僕の小鳥が籠で喋ってる
僕の名前 好き 好き 大好き

靴ひとつなきゃ
傷だらけになる脚の裏で
大地踏みしめて小石に悲鳴を上げる
僕等にんげん 人間 ニンゲンさ

闇の奥で正気でいられるか?
全てと切り離された時
君に残るものは何だ

誰も連れてはいけない門をくぐり
どんな言葉で祈りを捧げる
知っていたか気付いていたか
本当はす

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