tapioca

夏が嫌い。 最近好きな作家はジョセフコンラッド。

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hurry up

遅くはないとか いつでもいいとか 人は耳障りのいいことを 言うけれど 今言わなければ 永久に口を噤むしかない そんな言葉がいつも 私の周りを取り囲んでいる 今言うしかないのに 飲み込んでしまった言葉が 蝕んだ細胞をかき集めたら この部屋は埋まってしまうだろう どうして言えなかったのって 後悔したくなくて どうして言わなかったのかって 後悔したくなくて 愛を 愛を 愛のことばを 溢れる気持ちの総てを誰も 言葉に換えることはできないけど 愛を 愛を 愛のことばを あ

    • 午前二時

      眠りだけが安らぎだとしても 落ちるのが怖い午前零時 うんざりしたパターンと 同じ顔した人たちの群れ ペシミスト気取ったって 苦しくなれば息を吸う ヒロイズムに浸ったって 渇けば水を求め叫ぶ 君を心底軽蔑していたというのに 「興覚めた一変が、窒息するくらいにおそろしく」 僕は笑い 僕は喋った 全ては覆い隠すためのもの 僕は正直者のふりをしながら 真実を使い分けているだけ 湧き出る憎悪の奥でうごめく 自我の痛みから目を逸らすため ここにいるのは孤独だったから しかし君の前

      • drip

        ドリップしてね上手に丁寧に テキテキと落ちる雫に重力を見出す 心臓より上に手を上げれば 出血は少なくて済むらしい 眠っている間に 全ては済んでしまうのさ 大切なことは全て 見逃してしまうのさ 何もわからないと言えば わかったようなことばかり言われる 何かわかったと思えば すぐに後ろから殴られてばかり 普通というのは 一番よりも難しいね 私の体の中に溜まる何か あなたの体の中を食い荒らす何か 私の中に生まれた何か あなたの中で殖える何か 流れてゆくのを止められない 痛

        • 自由律俳句:さいきん

          1.ヤク中とからかってくれる人募集中(両腕から採血されたさん) 2.あの人が選んだ赤セルもう終わり(ALOOKの回し者さん) 3.一気見が苦行であるよ配信バブル(ターガリエン推しさん) 4.学習性やる気満々ぼくイチロー(籠の中のインコさん) 5.取返しつかねーことほどやっちゃうぜ(太宰治大ファンさん) 6.結婚は何度やってもいいもんだ(新米アメリカ人さん) 7.初めてが楽しい日々は帰らない(米寿の婦人さん) 8.最初から「プチ」だけどまた小さくなって…(スイーツ

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        記事

          夏の叫び

          恋とは断末魔の叫びではないか 奇をてらった文言をひねり出そうとして ふとそんな並びが浮かんでくる 時間を引き延ばしてみると 当てはまるものはたくさんある 死まであと一秒なのか一年なのか一光年なのか 明日死ぬなら今日の私の言葉は全て 断末魔のそれであり 必死のセミの叫びもそれであり マンションの廊下に転がる彼の 突然の咆哮もやはりそれであり 言葉は全て 死を前にした命の 断末魔の叫びと言えようぞ ナンセンスだ と私は繰り返す 例えば裏切りから不信へ落ちる様子は ナンセンスだ

          夏の叫び

          埋葬

          世界の縁に触れたと思った手で 僕らは時の砂に埋もれてゆく 突然砂浜に空いた穴に落ちたみたいに 一瞬で生き埋めになって そうして二度と這い上がれなくなる 世界の淵に触れたら 溢れ出して全てがこぼれ始める 入れすぎた珈琲みたいに 飲みすぎたアルコールみたいに 僕らを汚してゆく 恋はいつも僕らを 世界の果てまで連れて行ってくれるけど その後僕らは 世界にどんどん吸い込まれ 引き寄せられ 埋もれて 溺れてゆく 逃れる術は一つもない 予め決められていたように 答えが後ろから降って

          バーにて🍷

          「恋にさあ、命なんか懸けちゃダメだよ」 「ふむ?」 「だってさあ、絶対失恋するもん」 「実る恋だってあるんじゃない?」 「ないね!得恋と失恋は同じことって、坂口安吾が言ってた!」 「あのおっさんは神かなんかなの?」 「神じゃなくても真実を言ってもいいじゃないの」 「ふうむ…。まあ、命懸けの恋と言っても、命の懸け方にも色々あるもんね」 「そーね。心中すりゃいいってもんでもないわよ」 「何回もしちゃうと有難みもなくなってくるしねぇ…」 「しかしさ。『一緒に死にましょう』なんて会話

          バーにて🍷

          それを思い出すと僕は 身を焼かれるほどの 痛苦で狂ってしまう でもたぶん狂った人は 自分をそうと言わないだろうから 僕はそれなりに まともという証明になっているだろうか それを思い出すと僕はかつて 自分の身を切り裂きたい衝動を感じた 最近はその想像だけでなんだか痛いので 何がしかで気を紛らわせるばかりだ いい加減にもう二度と 思い出さないようにしてほしいものだが 記憶というのはまあ皮肉なもので 忘れたいと思うと刻まれてしまうし 覚えておこうとすると 乾いた砂のごとく脳裡の

          死に夢を見る

          死にまつわることをつらつらとエッセイ風に。 葬式って平和だなーと思う。 犬神家みたいな葬式現場もあるかも知れないけど…w その人はもう苦しんでおらず、ただ静かに横たわっているだけで。 別れを惜しむ人たち。 もう、何も出来ることはなくて。 全員がただ、冥福を祈り、天国だかあの世だか三途の川の向こうだか、 地獄だか煉獄だかどこかしらへ、魂を見送る。 もはやそれしか出来ない。 偲ぶ。 思い出話をする。 精いっぱい美化した弔辞が読み上げられる。 ありがたいお経や祈りの言葉が捧げられ

          死に夢を見る

          ツワブキ

          知らない、野菜を手に取って でもそれは、知ってるものと 似ている 何にも似ていないものは 段々と私の世界から減ってきた そのことを苦く 寂しく思っているだろうか わからない 父の書棚から こっそりでなくヘッセ詩集を抜き取り 誰にも言わない旅に連れていく 私の日常は肉感を失っている 繋がりへの希求は煩わしくなり バランスを欠いているのは 世界ではなく私であるか ゆるやかに死にゆく誰かを 見送る時間を引き伸ばしたような日々 どんなものもそばに置けば腐ってゆく そんな僕の住処は

          ツワブキ

          待ち合わせ

          まだミモザが咲いているか 確かめに行った僕は 十日前、人だかりの中心にあった木々が 今日は素通りされていくのを目撃した 僕は君を探すように まだ黄色いミモザを探して歩き回った そして端っこの方に すみっこの方に 楽し気に揺れている黄色の塊を見つけた 君だ 君が僕を待っていてくれた 君が僕にとっておいてくれた 僕は愛しく眺め そっと触れた 君の愛らしさに敵うものなどこの世には無い それでも僕は この世の全ての黄色いものに これから君を重ね合わせて生きていくだろう 君のい

          待ち合わせ

          一同は広島へ

          その気配に怯えながら愛した 血の呪いからも 輪廻の鎖からも 本能の質量からも ついに逃れることが出来なくても それがわかっていても 君の手を取ったのは どんなに汚くてもそれを 愛と名付けるしかなかった どんなに痛くてもそこへ 向かうしかなかった あの頃の僕を

          一同は広島へ

          ミモザとヘッセ

          ミモザ、ミモザ、ミモザよ 君の骸を囲ったミモザよ 君と共に炎に包まれたミモザよ 僕は君を探して あの部屋から春に引きずり出された ヘッセの絶望に触れながら 隣の女の会話が耳に入ってくる 生きる者は興味深い とうに死んだ詩人より 初七日だの四十九日だの 生者はとかくうるさくする 君は何の悪事も働かなかった 勲章に相応しくても 裁きを受ける謂れはない だから君よ早く生まれ変わって 僕の手の中に戻っておいで 何度でも僕の人生を君に捧げよう 恐れも痛みも喜びも全て 君への愛の内

          ミモザとヘッセ

          錯覚

          君が生きていることを 左手で確かめながら 過ぎてゆく時間 死へ向かってゆるやかに 強まる絆に縋りついた 離れてゆくのに 近づいてゆく 別れは僕たちを 分かちがたく結びつける 共にすごした日々も 出会う前の僕も ひとりになった後のことも すべて同じことだ 君の気配で満たされている 死を恐れ怯えながら 君と世界の片隅で生きてきた 世界中のどんな不幸も 君に振りかからぬように願った 愛に迷いがなくなったのは 身を裂かれる痛みを知ったから せめて僕は全てを懸けたと そう思い込

          手段

          何かと関わる手段を 何かに倣うことをやめてみたい どうやってそれと関わるか それは自然と現れてくるもの 浮かび上がってくるもの 媒介者を限定しなくていい ある手段をもって 関わることが困難であっても 確かに何かと常に関係して 生きているのだから 僕はどう世界と関わる? 僕はどう君と関わる? それを規定した途端 全てをつまらなくしてしまう 想いの望む姿を 探り出して掘り当てていく 感情の行く先は 感情に決めてもらおうか 漂流の最中でさえ 何かと繋がり続けている 君は僕と

          きみ

          君はあの雨の昼下がり 僕の手の中で永遠になった もう君を捕まえるものは何も無い 大空へ羽ばたき 太陽に触れても焼けることが無い 出会いの日からずっと 後悔することが怖くて 毎日愛の言葉を囁き続けた それが自分自身のためだと恥じていたが 君を失って気付く 君が好きだと言ってくれたのは 僕を好きでいてくれたからなのだと 後悔を先に立てようとすると 別の後悔が生まれる仕組みらしい とにかくそれはやってきて 中には何かが詰まっているらしい だって完璧な愛なんて 人間の手では作れ