「では次、山田桃香さん。」 「はい!私が御社を志望する理由は……」 ーーーーーー 「はぁ〜、まじふざけンな。どれだけ対策してきたと思ってんだ!それを立った3つの質問で落としやがって。」 「なんだよ桃香、また落ちたのか?」 「うっせぇ、健二はいいよなぁ~?あの角藍商事に受かったんだから。」 「いやいや、俺だって大変だったんだぜ?適性試験とか面接とか対策してさぁ。」 「あぁ、もういい。とりあえず飲も!もう今日は就活とか諸々考えたくない。」 「社会人っぽいセリフだな
僕はいつもうつむいていた。 周囲の顔色や反応をうかがっていた。 僕は話ができない訳ではない。 ポト、ポトと。 口下手なりにポト、ポトと。 話すことはできるのだ。 みんなは優しいから、僕に近づいてきてくれる。 改めて、人間に生まれてよかったと感じた。 弱肉強食の野生の世界では、真っ先に見捨てられるタイプだろうから。 『祭り』 「なあ、君!」 僕は急に呼びかけられ、少し驚き、警戒しつつ、「なんですか?」と聞き直した。 僕は今、イベント会場にいる。 まだ世
「今、好きな人いるの?」 僕がそのような言葉を口にしない限り、恐らくこの関係はこの先ずっと変わらない。もしくは……。 『飛び級』 僕は彼女の顔をあまり見たことがない。 同じ教室内、30ほど並べられた机 ランダムに決まる席順 僕は一番左の一番後ろの席になった。 彼女の席は僕の席から右方向に桂馬を2回動かした位置にある。 だから僕たちは普段話さない。 これは言い訳じゃない、と思う。 僕らの中学は、白と灰の集合住宅が並ぶ、住宅街の中に位置している。 田舎住みの人に
僕が口下手になったのは、あの頃のいじめが原因だと思う。 でも、人が怖いから人と関わらない訳ではないんだ。 先生は僕を治せますか? ねえ、先生? 『患者からの挑戦状』 「僕は昨日、他人と話せなくなった原因らしきものを見つけました。でもこれを先生には話したくない。」 「なんで?って、まあ、あれです。ゲームですよ。もし先生が導き出した答えと僕の考えが一致すれば、それが人と話さない真の原因って言えそうですし。」 「最初に言っておきますが、確かに私は5年前の中学3年生の時
「タンッ!」 みんな、僕と彼女を見てかたまっている。 まるで、教室にいるみんなが、彼女に叩かれたようだった。 『よそ者』 彼女は休み時間中、いつも教室の角で本を読んでいる。 丸い黒縁眼鏡に長い黒髪、背丈は平均くらい。顔立ちは良い方だと思う。容姿は漫画によく出てくる文学少女そのものだった。 「おい、アイツまた一人だぜ。」 「そりゃそうだろ。転校してきてまだ1週間弱さ。溶け込めないのも無理はないよ。」 僕は、ニヤけながら人を見下すトシキに対し、冷静な言葉を投げる。