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太平洋戦争開戦日の消印が入ったDMのはがきは、品不足が明らかな内容ーこれで新しい戦争を始めたのですから…
1941(昭和16)年12月8日、大日本帝国はマレー半島のコタバルを奇襲、そして真珠湾空襲を行い、その後に米英蘭に宣戦布告して太平洋戦争が始まりました。こちらは、開戦を報じる同日印刷の夕刊で、華々しい紙面作りをしています。
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さて、長野県上田市にある自転車やオートバイ修繕の店から、近くの小県郡田中町(現・東御市)あてのDMには、この開戦日が消印として押されていました。前日の12月7日がゴム印で押されているので同日発送したのでしょうが、消印が偶然、開戦日を踏むことになりました。
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さて、ではどんなDMだったかと見てみますと…
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多用途に使える電池式ランプ購入を奨めているほか、自転車の防寒手袋や年末水仕事用たわしなどとありますが、肝心のランプの下の注意書きが驚きの内容。
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「電池と電球専門販売」と銘打ちながら、「電池は只今品不足」であるから1人1個までの販売で、しかも12月10日だけと。民需が軍需に押されていかにひっ迫しているかが明らかです。
そりゃ、太平洋戦争前の1937(昭和12)年から日中戦争続けてきて、中国に最大100万人(満州をいれればもっと多い)の軍隊を送り込んで維持していたのですから、1941年にもなれば国内のストックも枯渇してきています。
中国との戦争を継続するため、蘭印(オランダ領インドシナ)の石油を筆頭とする南方の物資を入手する足がかりに、仏印(フランス領インドシナ=現在のベトナム、ラオス、カンボジア)へ二度にわたって進駐したことから、逆に米国に頼っていた屑鉄や石油の禁輸をくらいます。オランダも同調したことから、ついでに英国も入れて「ABCD包囲陣」(Cは日本が戦争していた中国)と国内向けには宣伝し、世界が日本をいじめているという被害者の立場を取ったプロパガンダを行います。現代も戦争の大義名分になったと信じている人がいるくらいですから、当時の人たちの被害者意識の高まりも大きかったでしょう。
石油が禁輸となったことで、海軍が積極的になって「太平洋戦争」を提案し、陸軍がソ連との戦闘も考慮して「大東亜戦争」と名付けようと意見して名称が固まり、準備が整って陸海軍による奇襲が行われたのです。物資不足の中、物資を手に入れるというのは合理的かもしれませんが、新たにもっと強大な国を敵に回すことは、完全に非合理ですね。戦争とは、時に合理非合理を超えたとんでもない選択で起きることもあるという見本です。
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話をはがきに戻します。とにかく入手できるものは何でも売らないと回らなくなっていたのでしょう。水で習字の練習ができる「新式水書習字練習万年帳」が実は主役ではないかという宣伝ぶり。「国策遂行」「紙の節約」というのは、既に書いた記事で日中戦争初期から課題となっていたものです。それを解消するアイデア商品をどうぞ、というわけです。書初め用にもと消費者心理をくすぐります。
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というわけで、少し後のものでしょうが同種の品を入手!
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この種の練習帳、1941(昭和16)年3月の長野県の地方紙、信濃毎日新聞に、別の会社ですが同様の製品の広告がありました。「不良品にご注意」とあり、さまざまな会社が同様の商品を発売したとみられます。このDMの品は、果たしてどうだったのでしょうか。
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もっとも、戦争末期には学校の授業停止、全員勤労奉仕、となってしまうのですが。そして最近、行きつけの文房具店で同様の品を発見! 時を超えて、物不足克服の精神が受け継がれていました。
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